奮戦、プロチーム!
「出て来ましたね、ライ小隊長」
「そりゃそうだろ、アマチュアチームからすれば状況有利なんだから」
プロチーム司令塔、さくらさんとライの会話だ。
もちろん私視点で状況を進行すると小説として成立が難しいので、このような形の進行をお許しいただきたい。
そしてアマチュアチームは今まさに、接触せんばかり。
プロチームに迫っていた。
先頭は御門芙蓉とキョウちゃん♡ペア。
少し遅れて比良坂瑠璃と白銀輝夜のペア。
「しかも敵は主砲をぶっ込んで来やがってる」
「アマチュアチーム選抜に、ぬるいメンバーなんているんですか?」
「イヤなこと言うね、さくら」
「これが現実ですよ、小隊長。お金を稼ぐのは、タダじゃありません」
「学生のお前に言われたかないね。で、どうする?」
「私たちも二手に分かれて、モヒカンチームとモンゴリアンチームを援護しましょう」
「なるほど、随所で数的有利を作るんだな?」
「機に臨んで変に応じる」
「それを参謀が言って良いのかよ」
そう言いながらも、ライは駆け出していた。
さくらさんも分かれて走り出す。
前衛は二人一組プラス・ワン、が二組。
手槍のさくらさんがキョウちゃん♡の太刀を止める。
ヨーコさんは御門芙蓉の相手。
そしてモヒカンが動きの止まったキョウちゃんに小手打、さらに足払い。
倒れたキョウちゃん♡にはさくらさんから、追撃の突きがひとつ。
そこでさくらさんはパッと離れる。
そしてモヒカンは、素早くヨーコさんの元へ駆け寄っていた。
打ち合いやや優勢だった御門芙蓉だったが、モヒカンに気を取られて技が乱れる。
今、というその瞬間だ。
「させませ〜〜ん♪」
フィー先生の一撃がモヒカンの小手を奪った。
モヒカン後退。
フィー先生はモヒカンを追うことなく、ヨーコさんに向かった。
「そんなことされたら、困っちゃうなぁ♪」
フィー先生の思惑を、さくらさんが阻止。
しかしその背後にキョウちゃん♡が迫った。
「どすこい!!」
もちろん隻手のモヒカンが、体を張ってキョウちゃん♡に体当たり。
キョウちゃんは再びポイントを奪われた。
一方、ヒカルさんとモンゴリアンに加勢したライ。すでに片腕は回復させてある。
対戦するは比良坂瑠璃と白銀輝夜のペア。
どちらも手練というのに、ケンカ十段のライは頭から突っ込んでゆく。
「なんの!」
迎え撃つ白銀輝夜だが、一歩後退を余儀なくされる。
ライの斬馬刀は、白銀輝夜の打刀を間合いではるかに上回っているのだ。
ライの横なぎのひと太刀は空を切る。
そして遮二無二な二之太刀を浴びせようとしたが。
おっと、と後退。比良坂瑠璃が襲ってきたのだ。
白刃一閃。
互いに後退合戦、しかし腰抜け自慢ではない。
かすかなポイントを求めて、少しのポイントも与えない技術戦といえる。
その技術戦の礎となっているのが。
「白銀輝夜は私が! ポイントはそちらでお願いします!」
ヒカルさんが白銀輝夜の足止めに入った。なに、防御に徹していれば。おかしな欲さえかかなければ。
ほんの短い時間と限定すれば、ヒカルさんにもそれはできる。
はずだった……。
「じゃじゃ〜〜ん♪ そんなヒカルに地獄の底から、美少女死神が見参〜〜♪」
アマチュアチーム最後のひとり、ユキさんの登場だ。
「輝夜さん、ここでポイントを大きくいただきましょうか?」
「なんなら死人部屋送りまでありそうだな」
ヒカルさん大ピンチ。
敵はふたり、どちらも熟練。
「おのれ!」
モンゴリアンが救助へ。
「……だめ」
しかし比良坂瑠璃の刃がそれを阻む。
「だったら私がっ!!」
「……それも、許さない」
ライの手も届かない。
「ふ〜〜ん、お二人ともそれで私を仕留めたつもりなんですか?」
肩に担いだ日本刀をひねくり回して、ヒカルさんは一丁前な態度。
そしてチン……と刀を納める。
「どうしたヒカル、私とユキどの相手に降参か?」
「輝夜sん、気をつけて。ヒカルには未熟でも居合がありますよ」
「居合にしては、殺気が無い。そこまでの熟練とは思えぬが」
剣を執っては猛者ふたり。
ユキさんと輝夜さんがヒカルさんを頂点に九十度に配置する。
「本当にそれで、後悔しないんですね?」
ヒカルさんは眼光するどく二人に対し、グッと腰を落とした。
ピリピリとした殺気を放つ。まるで抜き付け、即斬の態勢だ。
思わず固唾をのんで見守ってしまう場面だったが、いや、何かがおかしい。
「いざ!!」
ヒカルさんが出た。
反転して。
脱兎のごとく逃げ出したのだ。
「……………………なに?」
「輝夜さん、呆けてないで追いますよ!!」
準備無しのおっとり刀、猛者二人は慌てて駆け出した。
痛い。アマチュアチームにとって、これは痛い。
アマチュアチームはどのペアを取っても主砲揃い。
中でも安定した実力者である、白銀輝夜とユキさんのペアが遊ばされるのは、大変に痛い。
「……とまあ、こんな展開で悪いんだが」
モンゴリアンがガラの悪い眼差しを、瑠璃さんに向けた。
「また二対一だな」
ライも『殺しの眼差し』で瑠璃さんを射る。
手槍と薙刀の間合いは同等。
しかし技で瑠璃さんが上だろう。
だが、相棒がライだ。
これはうるさ過ぎる。
「……ピンチ?」
瑠璃さんの頬を汗が伝う。
二人一組は、元々が幕末の剣客集団新選組の必殺戦法だ。
そしてその基本理念は、『猛者を以って猛者を制す』である。
ライとモンゴリアンという猛者二人を投資して、比良坂瑠璃という猛者を討ち取る。
ともすればカエデさんにとって、この展開は胸熱なものかもしれない。
ちらりとその横顔を見る。
「ふふん……み、みなさん分かってきてるじゃないですか……」
ウチの参謀は素直ではなかった。
「おらっ、往生しろやっ!!」
やはり突っかかるのはライ、それを避ける瑠璃さん。
しかし退いた方向には、モンゴリアンがすでに待機。
そして足元へうるさく突き技を。
これを嫌った瑠璃さん、しかし逃げた先には斬馬刀のライがいた。
すくうように足を斬られた。
動きの止まったところへ小手打ち。
もう薙刀は片手操作だ。
「もらった!」
ライの斬馬刀が胴を抜く。
「ワシもじゃ!」
モンゴリアンの手槍が胸を貫いた。
比良坂瑠璃、切り揃えたボブカットを乱しながら、戦死。