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帰ってきた、武将にチャレンジ♡

さて、ナンチャッテ居合講座は概ねこの辺りで。

できていない者が大半だが、ひと呼吸の斬る動作よりも十分な復習。

これを宿題として持って帰ってもらおう。


そろそろ帯番組の主役、カエデさんに主導権を渡さなければ。

カエデさんはマヨウンジャーの六人を対戦相手として、AチームBチームに当たらせる。

ハンデ無しという条件だと、やはり歴戦のマヨウンジャーが圧倒的戦力であった。


ではそのような敵にどう当たるか?

まずは基本の二人一組ツーマンセルを徹底。

一人が敵の攻撃を受け止めて、相方バディが一撃を入れるスタイルだ。


この一撃は、クリティカルショットで防具を破壊できる一撃が望ましいとしている。

ここでカエデさんは、いかに基本の素振り、正しい打ちが重要であるかを説いた。

一日一分間で良い、できれば毎日素振りをして欲しいと要請。



「一分間だけでいいの?」



カモメさんの質問にカエデさんはうなずく。



「一秒間に一本振ったとして、素振りが六〇回。ひとり稽古で素振りを六〇本振るのは、大変な試練ですから」



地道な素振り稽古、しかも誰も見ていない単独の稽古というものは、全員稽古の半分も続かない。

まして『より情熱的に、集中して』などというのは、一流剣士でなければ困難なはずだ。


一日六〇回の素振り。

これがどれほど困難なことか。

カエデさんはそれを知っている。


そして個人での参加者、こちらにはユキさんと輝夜さんが当たっている。

稽古のメインはもちろん素振り、しかしそれだけではなく、防御技も指導している。

受けから攻め、攻めから受けという連携コンビネーションに繋げるためだ。


ただ、今はまだそこまでは至らぬ。

キチッと攻める。キチッと受けるの基本を繰り返した。

もちろん稽古風景を配信しているアイドルもいる。


そんな方はときに戯言、ときに混ぜっ返しの冗談を言ってたりする。

その度に、真面目の上にクソがつく輝夜さんがフリーズしたが、私が間に入って場を和ませることにした。


そして本日の稽古終了。

最後は武道らしい締めで、全員整列して正座。



「黙想ーーっ!」



可愛らしいが、腹から出すユキさんの声。

こういうときは指導員筆頭(師範代)が号令をかける。



「黙想やめっ! 正面に、礼!! 先生に、礼! お互いに、礼! これで本日の稽古を終わります!」


全員がやれやれといった具合に立ち上がり、やれやれといった感じで落ちていったり配信を閉じていた。

そんな中。



「さてユキさん、輝夜さん。それとマヨウンジャーのみんな、稽古を開始しようか。コラ待てカエデさん、逃げ出すな」



上に立つ者には上に立つ者の責任がある。

そうした者たちは、さらに稽古をするという義務が存在するのだ。




カエデさんの帯番組にアイドルさんへの指導。

さらにはメンバー稽古や定例稽古会。

忙しく稽古の日々を送っていると、またまた私たち『災害先生』四人に招集がかかった。



「どういうことでしょう、翁」



士郎さんが緑柳師範に訊く。



「さてのう、なんぞまた面白いことでもおっ始めるんじゃろ?」



なにしろ鬼将軍の招集命令である。



「俺は悪い予感しかしないんだがな」



士郎さんの言葉が正しいと私も思う。

そして美人秘書、御剣かなめさんの太鼓。



「天宮緋影さま、総裁鬼将軍。御出座ーーっ……」



四人揃っておもてを伏せて迎える。



「良き」



緋影さまのお声で面を上げた。



「先生方にお越しいただいたのは、他でもありません。武将チャレンジというコンテンツを覚えてらっしゃるでしょうか?」



事実上の支配者でありながら年下の鬼将軍は、常に私たちを上に置く。



「確か士郎先生とリュウ先生がパーフェクトのタイムラップを記録した、あのコンテンツですか?」

「いやいやフジオカ先生、それも緑柳師範にレコードを塗り替えられましたよ」

「そうそう、やはり床山一伝流。その冴えはいまだ健在、でしたな」



私たちは可能な限り他人に責任をなすりつけた。

つまり私たちはそれだけ、悪い予感をヒシヒシと感じていたのだ。



「それが先生方、この度株式会社オーバーと『王国の刃』運営が手を組みまして」



天宮緋影が口を開く。



「そのコンテンツのキャラクターに、アイドルさんたちの姿を反映しようと言うのですよ」

「というと?」



翁は目を細める。

しかし、その目はギラリと鋭い。



「むくつけき武将どもがアイドルさんたちの姿で襲ってくるということです」



代わって、鬼将軍が答えた。



「それで、私どもが呼び出されたのは?」

「えぇ、アイドル武将たちはキャラクター性を重視するということで、これまでの武将たちとは動きを変更しているんです。その難易度などを確認するため、先生方にテストパイロットを務めていただきたいと」



なるほど、そういうことならば。



「わかりました、務めさせていただきます」



このような次第で、王国の刃と株式会社オーバーの共同プロジェクト。

『武将にチャレンジ』アイドル版がスタートした。


まず先頭打者は私。

何故か私。

鬼将軍が「さて先生方、誰が一番槍をつけますか?」と訊いてきた途端、三人とも一歩後退したがため、ハメられたかのように私。


まずは1stステージの大草原。

どのような理不尽がしこまれているか分かったものではないので、腰の大小は真剣の本身。

額に鉄を飲んだハチマキとたすき掛け。

足元も厳しく戦さ仕立てで仕上げてある。


カウントダウン、3、2、1、GO。クリアポイント目指して、まずは巡航速度。

周囲の気配に気を配って……来た。

アイドル武将のトップバッターは、ピンク髪のケモ耳さんだ。


洋風の簡易甲冑だが、髪色々に合わせたピンク色が可愛らしい。

そして得物は……無手?

いや、懐から何か取り出した。


火花を散らしている……爆弾じゃないのか、アレ!?

なんてことしやがんだ、バカヤロー!!

叫ぶ暇なし、まずは抜き付けで小手を。


それからズンバラリン、脳天から真っ二つ。

取りこぼした爆弾からも、離れておこう。

案の定、爆弾は大爆発。ケモ耳ピンクさんは爆散した。


『王国の刃』の世界観を無視したコンテンツ、本当にナニ考えてやがんだ。

いや、言ってる場合ではない、ケモピンクさんは右から左から、

続々と押し寄せて来る。



むごたらしいステージ作りやがって!」



怒りにも似た感情が湧いてくる。

しかし、まずは数だ。

斬って斬って斬りまくる。


そのたび主を失った爆発物がドッカンドッカンと爆発して、ケモピンクさんの亡骸が飛散した。

そしてケモピンクさんに混ざって、真っ赤な甲冑を着込んだキャラクターが。

……あれは鷹崎メイさんだな。

得物は……短銃かよっ!!


火縄銃ではあるものの、飛び道具持ち出すんじゃねぇっ!!

接近だ、とにかく接近戦に持ち込まねば。

メイさんが銃を突き出してくるより速く接近。


こちらもバッサバッサと斬り倒した。……危ない、本当にテストパイロットというのは危険な商売だ。

さて、お次は誰が来る?

牙を生やした大きな口の被り物。


うん、自称組織の殺し屋だ。

しかも爆弾魔のケモピンクさんと短銃使いのメイさんも少数ながら混ざっている。

そこに気を取られていると……バクンッ!被り物の巨大な口が開き、牙が剥き出しになった。



「危なっ!!」



巨大な口を真横一文字に斬り裂いて拡張完了。戦闘能力を失わせてから、真っ向唐竹割りの泣き別れ。

単純なCPUだというのに、なかなか統率された動きで私の動きに合わせて退路をふさぎにくる。

なるほど、それならば。


一歩二歩三歩と後退して、前触れもなく突然振り返る。

やはり、私の退路をふさぎに一体が歩いてくる。

そいつを胴斬りで始末して、さらに振り返る。


もともと私を追いかけて来ていた群れから、二体を斬殺。

いわゆる面への切りつけだ。

必要最小限の攻撃で、最大の効果を得る。


ゲーム内でそのようなことは無いが、実戦では得物のダメージを最小限にするという考慮である。

ケモピンクさんに短銃メイさん、さらに被り物さんの群れを退治すると、次なる敵が現れた。

ござるござるのクノイチさんだ。


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