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小隊長の奮戦

【金狼ヨミ視点】


ついに掴んだ二度目のビッグチャンス。

ここで同点に追いつくか、アイドルチーム。

迎え撃つ鬼将軍が八相なら、挑むミナミ選手もまた八相。


両者隙をうかがいながらジリジリと間を詰めて、すでにお互いを間合いに捕らえている。

睨み合ってます、見えない火花を散らして、お互いに睨み合っています。

参加したアイドルもチームメイトたちも、一時闘いの手を止めてこの一戦に熱い眼差しを注いでいます。


果たして私のような素人が、この闘いを実況して良いものかどうか。

とにかく世界中の注目の中、切っ先を交える両雄。

もうおかしな駆け引きも無い、なにか細工をするでもない。


ただこれまで流してきた汗がどれだけのものだったか、それだけが試されます。

立っている者だけが強い、立っている者だけが勝者。

残酷な現実が突きつけられる勝負の世界、いよいよここでミナミ選手が出た!!


鬼将軍の切っ先も走るっ! 互いの剣が振り下ろされて、さあどっちだ!!

あぁっ、ミナミ選手の左腕が斬られている!

しかし鬼将軍、鬼将軍はどうかっ!?


……倒れたーーっ!! 鬼将軍死人部屋へ出発、勝利の女神はミナミ選手に微笑んだ! そして同点、スコアをタイに戻してアイドルチームが追いすがってくる!!

アイドルたちの戦いは、まだこれからだっ!!




【トヨム視点】


試合は振り出しに戻った。

そこで出雲鏡花からの指示がくる。



「いよいよ出番ですわよ、トヨム小隊長」



ほう、そんな予定は聞いちゃいなかったけどな。



「嗚呼!!花のトヨム小隊を招集してくださいまし」

「二人抜けてんだ、全員は揃わないぞ?」

「そうですわね、鬼組から忍者さんとユキさん。トヨム小隊に入ってくださいませ」



忍者とユキが入って、これで六人。小隊としての格好はついた。



「で、どじょうヒゲ。この六人で何しようってんだい?」

「そろそろお望みのリュウ先生が出て参りますわ。そこでまずリュウ先生の足止め、そして六人だけで敵将ビリーさまの御首みしるしをあげてくださいな」



簡単に言ってくれるぜ。この六人でもダンナにかかれば瞬殺だろ。



「本当に? 心の底からそう思ってますの?」



嫌なとこ突いてくるねぇ、さすが参謀長だよ。

最近はダンナがあっちに行っちゃってたからさ、直接手ほどきはされてなかったからさ。

この短期間でも、かなり稽古してたんだからさ。

簡単にやられるつもりなんか無いってのが本音さ。



「そうですわよね、それでこそトヨム小隊長ですわ」



両軍陣地に分かれて、さあ戦闘再開だ!

鼓笛隊衣装のアイドルたちを率いて、カエデたちがやって来る。

そしてその後ろには、ビリー将軍の軍勢だ。


自信に満ちあふれた面構えだね。

そりゃそうだ、この場面で同点、この場面でダンナが出てくる。

足取りも力強くなろうってもんだ。



「トヨム小隊、行進!!」



だけど負けてたまるかってんだ。

アタイ先頭、小隊を率いて歩き出す。

アタイのすぐ後ろには小隊メンバー、そしてその後ろには、世界で一番頼もしい仲間たち。


陸奥屋まほろば連合が。

よく見ておきやがれ、どじょうヒゲのデコッパチ。

これが苦楽を共にした仲間ってもんだぜ。


そして両軍は集団戦闘の間合い。

アタイは右手を挙げて軍団の行進を止める。

カエデもビリー軍の歩みを止めた。


いよいよだぞ、デコッパチと同じ人種。

お前は今、絶対的有利にある、とか思ってんだろ? だが、本当にそうなのかな?

そんなことはお前が一番わかってるよな。


なんせアンチカエデ勢力フォースの急先鋒が、アタイなんだからよ。



「先ほどはごちそうさまでした、小隊長」



コイツ、雲龍剣が破られたの、まだ根に持ってやがるな。



「あの程度で満腹されちゃ困るな、フルコースの御馳走責めはまだまだ続くんだぜ」

「さすが小隊長、リュウ先生相手に手があるというのでしたら、是非とも拝見したいところですね♪」



チクショウ、ハッタリは先刻お見通しかよ。

だがな、そのハッタリだって気合いと根性と精神力で、本物に変えることはできるんだぞ。



「ことここに至っての問答など、小隊長にとっては無用の長物でしかありませんよね? 似合いませんよ、長口上なんて」

「そうだな、さっさと勝負しようや。軍師と野蛮人バーバリアンは、所詮水と油さ」

「では失礼して……最後の達人先生、」



今だっ!!今この女を倒せば、ダンナの召喚は遅れるはずだ!



「えっ!? 小隊長っ!?」



やった、召喚の呪文詠唱が滞った。



「助けて、リュウ先……」



左のコークスクリュー・ストレート!!



「……生」



カエデの下アゴを貫いた。

ってかカエデ。今なんと?


地響きと雷鳴の轟き、なかなかに凝った演出だ。

そして、死を予感させるような重苦しい殺気。

いや、アタイにとっては重低音のドルビーサウンド。

世界を壊滅に追いやる大怪獣、ゴジラの登場を思わせる絶望感だった。



「上手いぞトヨム、その手があったとはな」



ゴジラは聞き慣れた懐かしい声で褒めてくれた。



「だがなトヨム、今日の私は木刀ではなく胴田貫を腰に落としてるんだ。……どうする?」

「ダンナ、愚問だよ。アタイの答えはただひとつさ」



ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ、殺される殺される殺される殺される。

強がり言ったって生意気な態度を見せたって、これが本音。

本気のダンナは恐ろしい。


アタイだって、人間を頭からムシャリとやっちゃうくらいの気迫はあるつもりさ。

だけどダンナは違う。

もうすでに何人もムシャリとやったか、そうでなけりゃ人間を主食としてるような、そんな迫力なんだ。


そんなダンナの殺気を一身に浴びて、本当にどうする?

すでにダンナは胴田貫を鞘から抜き始めている。

どうにかしないと、あの切っ先が鯉口から離れた瞬間、アタイの首は間違いなく飛ぶ。


どうするどうすると考えを巡らせていると、稽古のときのダンナの言葉が。

『人間の身体ってのは面白いものでね、リラックスしてる方が速度が上がるのさ』

そう、目の前のダンナはリラックスしている。だから速いんだ。


あの音速の太刀をかわすには、それ以上のリラックスだ。

『死』。

ダンナの技はそれを予感させてくれる。


だけどここはゲーム世界、実際に命を落とす訳じゃない。

そうは分かっていても、怖いのがダンナの太刀。

いや、飲まれるなアタイ。

あの一刀をなんとしてでも見切るんだ。


ダンナの殺気、最大値。

狙いはアタイの両目、きっと横薙ぎ。


……来るっ!


フニャリと力を抜いて自由落下。

後ろへと一歩退く。



「……………………」



ダンナは無言。

ってゆーか、生きてるぞアタイ!

やった、ダンナの初太刀から生還した!


とはいえ、危機的状況はまったく変わってはいない。

抜いたダンナの切っ先は、アタイに狙いをつけている。

そう、ダンナの刀に睨まれてるって状況さ。


ジリ……アタイに狙いをつけたまま、ダンナは間を詰めてくる。

だけどその切っ先がそれて、背後の敵を突くような態勢。

切っ先がそれたからって、飛び込むことはできない。


あれは『飛び込んで来い』っていう罠だ。

何故なら天に向けられた刃は、アタイに狙いをつけているからだ。

殺気ビンビン、黙ってたら本当に動けなくなる。


だからといって、無駄口を叩く暇は無い。

次はいつ来る、どこに来る。

横面か、真っ向唐竹割りか。


ダンナの太刀は頭の横をかすめてのぼり、頭の上で構えられ……来たっ!

脱力、もう一丁。

今度はギリギリ、身体のどこか持っていかれたんじゃないかってくらい、紙一重の見切りだった。


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