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達人先生、三度目の登場

【ジョージ視点】


ビリー将軍は目の前に、そして護衛の取り巻きが三名。

練習の成果を出すのは、ここしか無い! そう、あの一人で複数の敵を相手にするあの練習だ。

複数敵を相手にするとき、まず初手は予想外の動きだ。


俺は攻撃を喰らわぬよう注意を払いながら、三人のうち左側の敵に向かった。

攻撃を喰らわない、ここが重要だ。

今回の目的はビリー将軍を倒すこと。三人の敵を相手に大立ち回りを演じることではない。


だから左側の敵には向かうが相手はしない。

攻撃をひとつ受け止めただけで、サヨウナラ。

さっさとビリー将軍に向う。



「敵は将軍狙いだ!! 止めろーーっ!」



ここで彼らも気づいたようだ。

人を集めて防御陣を……しかし、遅い!!



「必殺っ、〇ャバン・ダイナミック!!」



片ヒザ着いて胴を打ち、防具を破壊してからのもうひと打ち。

ニ発目はビリー将軍が受け止めた。

ならばもう一発!! ビリー将軍が俺への反撃とばかり、剣を振りかぶったその瞬間。

胴がガラ空きになる!



「〇ャバン・ダイナミック、連打っ!!」



手応えあり、ビリー将軍が消滅してゆく……。

そして俺も、本イベントおなじみとなった死人部屋へと旅立ってゆく。

あぁ、敵は大勢いたっけ。

滅多打ちにされたんだな、俺……。




【カエデ視点】


……取られましたね、先制点。

あわよくばと思ってはいましたが、私たちの目標は先制点じゃありません。

ワンポイントです。


これまでアイドルさんたちが配信で、『一回でも鬼将軍を倒せたら、私たちの勝ちだと思ってください。それくらいに戦力差が絶対なんです!』と訴え続けてもらった。

ハードルは下げ切っている。

そして撮れ高とも言える見せ場もひとつ作った。


……ならば。いよいよ待望の御首を挙げるのみ!



「先ほどの戦闘、あと一歩のところでした! 次の攻撃は、いよいよ達人先生の登場です! 気合いっ、入れてっ、行きましょうっ!!」

「達人先生……」

「達人先生」

「ここで、達人先生っ!!」



一番に声を出すのは、やはり元気一番カモメさんだ。



「みんな、自分のリスナーさんにアピールしろ!! ここから瞬き厳禁のクライマックスだぞっ!!」

「「「おーーっ!!!」」」

「ボルテージを上げろーーっ!! 株式会社オーバー……っ、行くぞ!」

「「「おうっ!!」」」

「行くぞっ!!」

「「「おうっ!!」」」

「行くぞっ!!」

「「「おーーっ!!」」」



私は指揮をとる。



「アイドル軍攻撃陣形っ!!」



決戦小隊とぺったんこ小隊を護衛する陣形。

もちろん防壁係は、陸奥屋方向に展開。

いわゆる後方はガラ空きの陣形。

死力を尽くすことを全面に出した陣だ。



【メイドのミナミ視点】


責任重大責任重大、いよいよ得点するときが来たじゃない。

達人先生を投入、それもアタシたちの力だけで敵将に迫ることが証明された直後。

これってなにをどう足掻いても、得点するつもりじゃない。


そして得点王ポイントマンに選ばれてるのは、アタシと後輩のソナタん。

だけど先輩のアタシが、なんとかしなくっちゃ。

できるの? できるつもりでいるの? 本当にできるの?


自分に訊いてみる。カモメちゃんなら言うかな?



「できるのかじゃねぇっ!! やれーーっ!」



みんな無茶だって思う?

無茶だよね?

だけど後輩の前では、頑張る先輩を見せなくっちゃ。


行進マーチの号令がかかる。

真っ白な革長靴のカカトを鳴らして、マーチングバンド制服のアタシたちは行進を始める。

始まっちゃった、どうしよどうしよ。


結果を出さなきゃ出さなきゃ。

脂汗を流す自分と、冷静に状況を見詰める自分がいる。

まずは集中だよ、アタシ。

それでどうする、アタシ?


そうだね、弱虫で意気地なしのアタシは、達人先生の後ろを追いかけようか。

それで食い込むんだ、敵陣に。

そしてソナタんのために、突破口を開いてやるんだ。

アタシはソナタんのために、ソナタんはみんなのために。


みんなで勝利をもぎ取るんだ!!



【トヨム小隊長視点】


あれから三〇分、先制点はこちら。

ということで、アイドルチームはなんとしてでも得点をもぎ取りたいはずだ。

その思いは大矢参謀も同じなんだろね。



「男性陣、前へ」



セキトリを始めとした男衆が前面に配置された。

そう、来るんだ。第三の達人先生が。

どっちかな、どっちだろ? ダンナか士郎先生か。


士郎先生じゃないかな、と思う。

アタイたちの小隊じゃ、やっぱりダンナが絶対だ。

カエデにとってもそうだろう。きっと切り札は、最後まで取っておくはずだ。


アイドルたちが迫ってくる。

足を止めて、キレイに整列したまま全員が切っ先を向けてくる。



「悪いのぅ、カエデさん。ワシらも待ち切れんくての、次なる達人先生はまだなんかい?」

「慌てなくても大丈夫ですよ、セキトリさん。今お呼び出ししますから」



カエデが右手をサッと挙げる。



「次なる達人先生をこれに!」



地面に魔法陣が現れた、その中から生えてきたのは、やっぱり士郎先生だ。

だ、けど。



「父さん、もう抜いてる……」



ユキがもらした。

そう、士郎先生は大人げなく、本身の白刃を抜いてすでに脇構えになっていた。

士郎先生、実体化完了。

と同時に突っ込んできた。

アイドルたちも駆けてくる。



「一斉攻撃です、士郎先生から距離を置いて!」



大矢参謀の声に、アタイは反対した。



「それじゃダメだ、突破される! なんとしても士郎先生を止めるんだ!!」

「そんなときこそ俺たちの出番だぜ!!」



そう、この局面でヒーローは現れた。



「ジャスティス中隊隊長、ジョージ・ワンレッツ!! ここに参上っ! あーーっ!!」



ヒーローは即死した。

だけど一秒、その一秒が貴重になる。



「なんの恐れるな、かかれっ! かかれーーっ!!」



本来なら敵陣へ斬り込む殴り込み中隊が、鬼の士郎先生に次々とかかってゆく。

そしてバサバサと斬られた。



「陸奥屋男子部、ここが死に場所じゃいっ!! 続けーーっ!!」



男たちがゆく、死ぬと分かっていても、負けると知っていても、それでも男たちはゆく。

そしてそんな男たちをも斬り捨てるのが、鬼の剣士だった。



「女子部も行くぞっ! 士郎先生を止めるんだっ!!」



御門芙蓉、比良坂瑠璃、フィー先生の薙刀トリオが斃された。

白銀輝夜、相棒の近衛咲夜もやられる。

ユキとシャルローネが掛かろうとしたところで、ようやく士郎先生の虐殺ショーが終わった。


わずか十秒間、たったそれだけの時間で、ネームドプレイヤーたちは壊滅的なダメージを負ってしまった。

そんな泣きっ面のアタイたちに、アイドル軍という蜂が飛んできたんだ。



「守れっ守れっ!! 絶対にここを通すなっ!」



守るが必死なら、攻めるも必死。アタイも火が出るほど打ちまくった。




【カエデ視点】


「敵の守りが強固です、突破できません!!」



前衛から報告が入った。



「当然です、敵も必死なんですから。でもね、必死に守っているということは?」

「?」

「本隊は敵の右翼を突きます! 突撃せよ! 突撃せよ!」



そう、敵の主力は防衛に必死。全力で守りに入っているはず。

ならばその脇はガラ空き。

行かせてもらいましょう、その脇腹へ!



「……ありゃま、本当に来てしまいましたねー。どうしましょーか?」



マミがのんきに言う。

そう、右翼はマミひとりが守っていた。



「道をあけて、マミ。こちらは私を入れて十三人、そちらは貴女ひとりだけ。勝ち目は無いわ」

「そうは言っても、マミさんも『はい、そうですか』とは行きませんよ?」



日本刀? 初めて見るわね、マミが刀を構えるなんて。



「リュウ先生のお弟子さんは、なにもカエデちゃんや小隊長だけじゃないんですよ? マミさんだって、柳心無双流の端くれなんですからねー……」



中段、様になってるわね。



「なんのっ!! 行きマース!!」



メイスのキキさんが打ち掛かるが、その攻撃を受けることすらせず、太刀三つ。

ふた打ちで防具を破壊、三つ目でキキさんを葬った。



「やるじゃない、マミ」



私も腰の剣を引きつけた。



「必殺、雲龍剣ですね? その技はマミさんも知ってますよ」



マミも、刀を鞘に納めた。


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