開幕
カエデ視点
カエデです! ただいまビリー軍の配置中です!!
ついに来ました王国の刃スペシャルナイト、Vtuber参加企画。アマチュア最強軍団決定戦!!
まずは大将のビリーさん、ちゃんと一般プレイヤーたちに紛れ込んでますね!?
その代理で玉座に座るお姫さまアイドルちゃんもオーケイ?
それでは先鋒の男山大学剣道部のみなさん、準備はできてますね?
それからアイドルチームのみなさん、囮のぺったんこチームさん、主力チームさん、よろしいですか?
それを護衛する各小隊のアイドルさん、盛り上がってますね!!
それではビリー軍のみなさん、開幕十秒前っ!……五秒前……三、二、一、全軍突撃ーーっ!!
さあまずは左翼右翼の部隊、敵の主力ネームドプレイヤーたちを妨害するため、中央に集まってくださーい!
……おりょ? 変な無線が入って来ますね。敵のネームドプレイヤーたちが見当たらない?
いや、そんなことナイ無いない!
鏡花さんなら絶対に主力をぶつけて来ますって。
「いやそれがね、カエデ参謀」
ヤハラ参謀長の声。
「今回敵のネームドプレイヤーたちは、防御ガン振り。全員で本陣を囲んでるみたいですよ?」
え、ウソっ!?
慌ててウィンドウを開いてマップを確認。
……なんで今回に限って、こんな変手を使ってくるのよっ!!
「あ〜〜それでしたら、敵本陣の面子をご覧ください」
ほいほい、確認してみましょ。
鬼将軍に天宮緋影さん。
参謀長の鏡花さんにかなめさん、執事さんメイドさん。
それと……誰これ。
「本店メンバーのひとり、大矢参謀。鏡花さんと私とカエデさんがメインで作戦に携わる前に、参謀を務めていた方ですね」
……大矢参謀大矢参謀大矢参謀、あぁ!
あの人ですね、思い出しました思い出しました。
「今回の敵軍は鏡花さんではなく、大矢参謀がメインで指揮を執るものと思われます」
なに〜〜っ!?どんな手を使う人だっけ!?
「カエデさん、前線が敵軍と接触、互角の戦いをしています!」
おおっ、すでに戦闘が始まっちゃってますね。
私もポジションを変えましょう。
まずはアイドルさんチームを追いかけて、と。
最前線とも言える新兵格のみなさんが、敵の侵略を防いでくれているのを尻目に。
うん、さすが男山大学剣道部を突入部隊にしただけあるわね、敵の中堅クラスまで防御を食い破ってるわ。
でもここから先が勝負なのよね。
熱血・ジョージ視点
よう、みんな! 最近冷え込んでるけど、風邪なんかひいちゃ駄目だぞ!
熱い正義は男の魂、ジョージ・ワンレッツだ!
もしも風邪をひいたなら、『まず飯を食うっ!!』『寝るっ!!』『……治る』。
この方法でどんどん治してやろうぜ!!
ということで俺たちは、ゆくぞ敵陣殴り込み、攻撃精神だけを抱えて敵将を討ち取る役割を任された!!
「いいですか、ジョージ隊長。極力戦闘を避けて、戦力温存。敵陣が見えてから総攻撃です!」
迷走戦隊マヨウンジャーの知恵袋、ホロホロさんが作戦を立ててくれる。
もちろんそんなことは承知済みだぜ!
「おう、まかせておけ!! サーチ&デストロイの精神だな!」
「や、そじゃなくて……」
何かを言いたげなホロホロさんだったけど、もう遅いぜ!
ゴングは鳴っちまった!!
「陸奥屋まほろば連合攻撃隊っ、突撃ーーっ!!」
「だから正面から突っ込まないでーーっ!!」
畜生、敵も複数で掛かってくる!
「みんなっ、俺に構わず先へ行けーーっ!! ここは俺に任せるんだ!」
「そんなっ、隊長を残して先へは進めませんっ!!」
「ピンチでもなんでもないのに、危機感演出しないの! ほら、先へ行くよ!!」
チッ、これだから女の子って奴は。
男のロマンってものを、少しは理解してもらいたいもんだぜ。
とりあえずマヨウンジャー、チーム・ジャスティス、情熱の嵐という三個小隊で迂回するように前進。
可能な限り戦闘は避けたが、追いすがってくる敵もいる。
そんな敵には俺のダイナミックソードをお見舞いして、シンガリとしての務めを果たさせてもらうぜ。
「さあ、敵がウヨウヨ出てきたわよ。本陣は目の前ね。ジョージ隊長、突撃命令をお願いネ♡」
突撃命令が男子の本懐ということは理解してくれてるんだな、ホロホロさん。
それじゃあお言葉に甘えて……。
「ジャスティス攻撃隊っ、突撃ーーっ!!」
畜生、シンガリで遊んでたから、一番槍を取り損なった!
だがしかし、ジャスティス、情熱の嵐、マヨウンジャーの面々は強い!!
数で勝る敵を、次々なぎ倒してゆく!
「その調子だっ! 立ち止まるなーーっ! 突っ込めーーっ!!」
後方から檄を飛ばし、彼らの背中を守るためなおもシンガリを務めるぜ!
「隊長っ!! 敵はみんな新兵格ですっ!!」
「なにっ!? すると主力はどこにいるっ!?」
ウィンドウを開こうとしたが、その必要は無い!!
そう、軍師カエデさんとヤハラさん。これが二人の策だ!
『攻撃ガン振り、防御は紙』作戦!!
とにかくもう、攻めて攻めて攻め抜いて!
大変に勇敢で男らしい作戦だ!
シビレるぜ、憧れちまうじゃねぇかよ!!
こんな作戦立てられるんだから、本当にウチの軍師さまブラボー、ハラショーだぜ!
「だがな、軍師のお二方よ。その策略には手抜かりがあったってモンよ……」
何故ならば、その紙防御に挑むのが、俺たちジャスティス攻撃隊だからだっ!!
「手を緩めるなっ!! 格下だからといって、容赦するなっ!」
「隊長、むしろこちらが押されてます!!」
「なにっ!?」
「気をつけてっ、敵のコンビネーションはよく仕込まれてるよっ!」
「爆炎が囲まれたっ、ダイン救援に入って!」
「キャーッ、潜り込まれたわ! マミヤ、助けてーーっ!!」
前線がえらく苦戦してるようだ!こんなときこそ、ヒーローの登場だぜっ!!
とりあえず勢いまかせ、横からバシバシ叩きまくって全員を救助完了!!
「待たせたな、みんな!」
「隊長っ!」
「俺が来たからには、もう大丈夫!! さあもう一度突撃だっ!!」
トヨム視点
来たね、来やがったよカエデ軍が。
先頭は男山大学剣道部か、あいつらでここまで突破してきたんだな。
「来ましたな、トヨム小隊長」
白銀輝夜が刀の柄に手をかける。
「あぁ、抜かるんじゃないよ……って、アレ? アイドルさんたち、えらい派手な格好してるぞ?」
「俗に言う鼓笛隊の服装ですな。視聴率稼ぎのためでしょう」
「っつーか、カエデまでおんなじ格好させられてるけど?」
「照れ屋さんなのでしょうな、顔が真っ赤です」
「よし決めた、アタイは絶対にアイドルなんかと関わらないぞ。あんな格好するのはゴメンだからな」
「私も御免被りたい」
そんなこと言ってたら、いよいよ男山大学が目の前まで到着した。
カエデが先頭に出てくる、やっぱり恥ずかしそうだ。
「ここにいましたか、ネームドプレイヤーのみなさん!! いよいよ年貢の納め時です、覚悟してください!」
「凛々しいねぇ、カエデ」
「今後はその服装で通されてはいかがかな、似合ってますぞ」
カエデは辱めを受けたように、歯を食いしばる。
「そんな戯言言えるのも、今のうちだけです! 召喚、達人先生っ!!」
「なんのヒネリも無く、先生頼みですか」
「案外芸がないな、カエデ」