表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

500/724

ワンショット・ワンキル

私のことを何だと思っているのか、ぺったんこソナタさんを筆頭に、アイドルさんたちは大騒ぎ。



「先生に稽古をつけてもらえる!」

「エライコッチャえらいこっちゃ!」


「いえ、ですからみなさん。トヨム小隊では通常の稽古ですから……」

「騎士隊長としては、大変に光栄なことと感じ入っておりましゅ!」




隊長さん、噛んでる噛んでる。ついでに言えば、カエデさんの静止の言葉も耳に届いていないようだ。



「ヨシ、全員整列ーーっ!! これからここにいる全員と、我々災害先生も相手してやるから、一度静まれーーっ!!」



フジオカさんの胴間声で、アイドルさんもどうにか静まった。しかし、ざわめきは残っている。



「おい、俺たちも先生に稽古つけてもらえるとよ」

「どんだけ強いんだろうな、達人先生ってよ」

「それではアイドルチーム主力の六名、どうぞ私とリュウ先生の前に」



大艦巨砲主義、おっぱい戦艦の二人を筆頭にカモメさんと偽物ニンジャさん、メイドのミナミさんとぺったんこソナタさん。



「まずは作戦会議、どんな戦法を取るか話し合ってください」



あちらで女の子会議が始まった。ルールは通常の六人制試合と同じ。何度でもよみがえることができる。



「ということでカエデさん、私たちはどうしようか?」

「彼女たちはまずリュウ先生の実力を計りにくるでしょうね。ワンショット・ワンキルをお見舞いしてあげてください」

「容赦なしかい」

「陸奥屋のネームドプレイヤーたちもそうするでしょうから。あの辺りの力量を見せていただければ幸いです」


「難しいこと平気で言うねぇ、カエデさんも」

「軍師ですから♡」

「で、その後は?」

「キチッと三ー三に分かれてくるでしょうから、私は逃げ回ります。リュウ先生は担当の三人をシバいたら、私を救助してください」



と、このような形で戦闘開始だ。

ゴング!

なるほどアイドルさんたち六人は、まず私に向かってきた。


前衛三人、後衛三人という隊形。

一番槍は巨っぱい勢、西の横綱キキさんだ。



「それではリュウ先生、お願いしまー……」



小手の防具を破壊して、面に一刀。

キキさん、挨拶の途中で死人部屋へ旅立つ。



「ありゃ!? キキ先輩、どこへ行きまし……」



偽物ニンジャさん、びっくりしている間に戦死。



「こんな速度で二人も戦死だなんて……」



ソナタさんは慎重だ。逆にカモメさんは無邪気に突っ込んでくる。



「どりゃぁ〜〜っ!! もらったーーっ!」



テレフォンも良いところな無謀さだが、カモメさんの場合それで良いのかもしれない。

突き技ひとつで旅立ってもらおうか。



「カモメ先輩、危ないっ!!」



お? 隊長さんが楯になったか。隊長さんも戦死なのだが。



「あぁっ、隊長〜〜っ!!」

「カモメ先輩の楯になれて、隊長幸せなんよ……」



死人部屋へと旅立つ隊長を、涙で送るカモメさんだ。



「おのれリュウ先生! 隊長の仇!!」



いや、お前が無防備な攻撃するから、隊長さんは戦死したんだが?



「隙あり、リュウ先生!」



背後からミナミさんが打ちかかってくるが、そんな攻撃は先刻承知乃助だ。

ケロリとかわして、振り返りもせず胴突き一本。

馬力まかせにカモメさんも突っ込んでくるが、ここは切っ先を見切ってのカウンター。

五人目の戦死者だ。そして、残るはソナタさんひとり。



「うっわ、責任重大……」

「心配しなくても良い、君も死人部屋へ直行だ」



こっそりと攻撃準備をしているソナタさんを、楽にしてあげた。



「あれ!? みんなどこ行きましたか!?」



死人部屋から復帰してきたキキさんだが、仲間は全員死人部屋。

つまり、それだけ短時間の全滅だった。



「みなさん死人部屋から復帰してくるところですよ。全員揃ってから、態勢を立て直してみては?」

「死人部屋から復帰? Oh、道理でスタート地点にいた訳デース!」

「フィジカルが取り柄なニンジャ復活!! キキ先輩、リュウ先生は危険です! 離れてください!」

「そう言えばソナタんもいません。あの寸足らずも、死人部屋デースか?」

「だからキキ先輩!! リュウ先生に背中向けないで!」



そうこうしている間にも、隊長さんからソナタさんまで復活。六人揃い踏みとなった。



「さて、アイドルさん方。全員揃ったところで、また私に掛かってくるかい? それともカエデさんに標的を変えるかい?」

「私も最弱ではありますが、一応陸奥屋ネームドプレイヤーの一人ですよ?」



緊急作戦会議開催、すぐに方針は決まった。



「ネームドプレイヤーだって言うなら、稽古をつけてもらうぜ!! カエデちゃん、覚悟っ!!」



だからカモメさん、そういうことは無言でやろうや。

そうすれば不意討ちも可能なんだから……。

と、それにしては気配が丸見えだな。



うん、ソナタさんだけがカエデさんに集中していない。

全員でカエデさんを討ち取る振りをして、私に奇襲を仕掛けるつもりだな? よかろう、受けて立とうじゃないか。


私の脳内で、春日八郎の歌う『新選組の旗は行く』のイントロが流れ始める。そう、挑まれて退かないのがサムライの意地なのだ。


意地。


その単語を聞かなくなって久しい。

男の意地というものは、大変に面倒くさく重たいものなのだ。

それに相応しいイントロである。


そして私もサムライである以上、この挑戦からは逃げられないのである。

カエデさんを守りながら、の挑戦受理なのだが。

……木刀を腰に納める。ソナタさんの気配に迷いが生じる。


さあ、かかって来いソナタさん。



「3、2、1、レッツゴー!!」



キキさんの号令で一斉にカエデさんに襲いかかる、ただ一人を除いては。

ソナタさんだけは私に突っ込んで来た。

狂気、コラコラ、若い女の子がそんな目をしちゃいかんぞ。ぬるい脇構えからのソナタさんは先制攻撃。


その小手を取って、軽くひねり上げる。逆を取られて抵抗できないソナタさんを、カエデさん強襲部隊の二番手目掛けて投げつけた。

カエデさん強襲部隊の先頭は隊長さん、二番手はキキさん。


一直線に飛んでいったソナタさん、キキさんとともに仲良く戦死。そして先頭に立っていた隊長さんは……。



「必殺、雲龍剣!」



久しぶりの発動、必殺雲龍剣により隊長さんも死人部屋送り。

残るはカモメさんとミナミさん、それにニンジャさんだ。

その猛攻に対してカエデさんは。



「エビ屈みハイジャンプ!!」



エビかザリガニのように、ピンと後退する。アイドルさんたちの攻撃、エビ屈みジャンプが繰り返される。



「あっ! クッソ、汚いぞ軍師どの!!」

「えぇ、私は軍師ですから♪」

「そんな奇策にはフィジカル勝負! ニンジャ、行くでござる!!」



そんなに張り切るニンジャさんは、私の木刀で露と消える。



「クッソ! 軍師どのを狙えば先生が横から来る!! ミナミ、気をつけろ!」



気をつけろとは言うものの、具体的な策は指示できない。それが実力差というものだ。その流れで、メイドのミナミさんも撤退。



「おのれ、火力の差は如何ともし難いか……」



うむ、カモメさんはそのことに気づいたみたいだ。



「だが、対処の方法はすでに教えているよ」



私のヒントに、カモメさんはすぐに閃く。



「見切り?」



その見切りを、どう活かす?

カモメさん、熟考……そして。



「やってみるか!」



何か思いついたようだ。



「では、今度は必殺技など使わずにお相手します!」



丸楯に片手剣、切っ先でカエデさんは狙いをつけた。

カモメさんはカモメさんで、八相のように剣を肩に担いだ。

シュッと立つ現代剣道のような体幹、カモメさんはカモメさんなりに何かを掴んでいるようだ。



「いざ!」

「おうっ!!」



カエデさんの突き技、カモメさんの心臓へと伸びる。カモメさん、体軸を乱さず後退……後退、後退……。

カエデさんの突きが伸び切った。

そこで担いだ剣を振り降ろす!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ