探索の森第2ステージ
さて、これまで引っ張っておきながら、ようやく第二ステージである。さっそくではあるが、シャルローネさんにここで出会えるモンスターを紹介してもらおう。そう、チュートリアルのチユちゃんが記したとされる、『ちゆめも』を使って……。
「はいどーもー! モンスター紹介のシャルローネです♪
このステージでは御存知ゴブリンさん、プルプル、野良の相撲取りさん(森林バージョン)が引き続き登場。そして新モンスターとして、ウッディー・ピープルが私たちを襲ってきます!」
森林バージョンだのウッディーだのと、やけに密林感を出してくれる。つまり第ニステージは森林の闘いと見た。トヨムを呼ぶ。
「トヨム、もしかしたらこのステージはトヨム頼みになる。心得てくれ」
「それってアタイがサルってこと?」
「違う、得物の有無だ。森林戦闘となれば、得物が邪魔になる。そうなると持ち味を一番いかせるのはトヨムになる」
「アタイ責任重大だね」
「そういうことで、演説をひとつブッてくれ」
「あいよ」
第二ステージ入口、大森林を前にしてトヨムからの注意事項。
「トヨム小隊、注目! これからアタイたちは第二ステージの大森林へと足を踏み入れる。もしかしたら得物が邪魔になるかもしれない。だけど落ち着いて、絶対にあわてるな。窮地に陥っても、アタイが必ずたすけてやる、以上!」
「あーそーですねー小隊長。ここから先は森林地帯だから、長得物は不利かもしれませんよねー……」
「おう、ワシの昇り龍も出番が無いかのう」
「片手剣は軽いけど、楯は邪魔になるかしら?」
「やってみなければ分からんところも多々ある。しかし心得ておくべきは、狭い場所での戦闘となり得るということだ」
「楽じゃないってことだよな、旦那」
まあ、そういうことだ。それぞれ得物の長さを改め、森へと足を踏み入れる。とりあえず獣道のような通路は存在した。そこをたどってゆくのだが、先頭は私。次がセキトリ。その後からカエデさんシャルローネさん、トヨムにマミさんの順。みな注意深く前進する。大森林は鳥や虫の鳴き声であふれかえっていた。
「みんな、鳥や虫が鳴くのをやめたら、敵がそこにいるぞ」
トヨムが言った。その途端、鳥や虫の声が止んだ。
「いるな……総員、フィールドを確保して戦闘準備……」
「全員、散開」
私は追加号令。それなりの広さはある。しかし、悪いことにまずはプルプルが姿を現した。これでせっかくのフィールドが狭くなる。シャルローネさんとセキトリがメイスを一杯に取る。接近戦用の構えだ。藪がガサガサと鳴るそして現れたゴブリンは、カエデさんの突き技で瞬殺。
そのままカエデさんは足元のプルプルを始末にかかる。セキトリとシャルローネさんが護衛に入る。入ると同時、ゴブリンが三匹現れる。ここもシャルローネさん、セキトリ、そして私が突きで瞬殺。長得物の二人もプルプル刺殺に参加した。とにかく数がいるのだ。そして足場が悪いというのに、野良の相撲取りが五体も現れた。即座に私は突き技で葬る。もう一体はスネを打った。これはセキトリにトドメをまかせることにした。
そしてシャルローネさんが嫌がらせの突きをニ体の相撲取りに。カエデさんがそのうち一体の小手を奪う。マミさんが足元のプルプルを撲殺して、場が開けると同時にトヨムが相撲取りに申し込んだ。
トヨムの拳は相撲取りの手を破壊した。そこから膝を叩いてグラついたところへヤマアラシ! というか髷と手首を掴んでの投げ技なので、反則もはなはだしい。一撃で相撲取りは消滅。
残る一体はカエデさんとセキトリのタッグに翻弄されている。カエデさんの斬り技を嫌えば、反対側からセキトリが攻めてくる。野良の相撲取りは散々にいたぶられて、トドメの突きをカエデさんに決められた。
野良の相撲取りを相手にしていないメンバーは、ひたすらプルプルを潰していた。
おかげでどうにか足場は確保出来そうだ。しかし、またゴブリンと相撲取りが現れる。素早いゴブリンにはトヨムとカエデさんで対応。パワー&タフネスの相撲取りには私とセキトリとシャルローネさんで挑む。マミさんはひたすらプルプル退治だ。こういう敵には両手に得物の戦士が向いている。ただし、トヨムではリーチが無さすぎた。
スピードファイトとトヨムがゴブリンを叩きまくる。カエデさんが追いかけるようにして、トヨムに群がろうとするゴブリンを斬りまくった。私も早いとこと仕事を終わらせなければ。寄り道などせず、一発で相撲取りを片付けてゆく。ただし、足元のプルプルを突き刺しながらだ。
相撲取りを一発撲殺。プルプルを三体ほど刺殺、また相撲取りを倒す、という手順。これがまた機械的に作業を進めるものだから、シャルローネさんが「必殺マシーン」などと変な名前をつけてくれる。とりあえず、この場面をクリア。負傷者を確認したが、全員無事であった。
私たちは前進。先頭をトヨムとカエデさんに譲る。するとまたまたプルプルの群れが藪から出てきた。それと、ウッディー・ピープルが三体。……ウッディー・ピープル……つまり『森の人』……ダイレクトに言うならば、直立歩行するオランウータン。身長が先程の相撲取りほどもある。
「どれだけのパワーとタフネスなんだろうな?」
「当たってみればわかるよ、旦那」
「トヨム、サルは人間の三倍のパワーと言うぞ。気をつけていけ」
様子見のトヨムとカエデさん、そして私。まずもって初顔合わせのモンスターだ。しかもヤラレ役の空気をまとっていない。どう出て来るかな?
と思っていたら、私の木刀が飛んでいた。一撃必殺の面打ちである。トヨムも飛び込んでのボディーの連打。カエデさんは片手剣でひと突き。拍子抜けなほどあっさり、ウッディーたちは消滅した。
「なによ、ただのデッカイお猿さんじゃない……」
カエデさんは落胆をあきらかにしたが、トヨムは愕然と森の奥を指差す。そちらを見ると、暗がりに光る目、目、目。仲間を殺された怒りに燃えているウッディーが、ざっと見ただけで十体。
「これはマズイな」
「よしみんな、ウッディーから目を逸らさずに後退だ。一旦距離を取るぞ」
トヨムの指示で全員後退。ここは一度距離を置き、まずはプルプルの数が尽きるまで全員で突き殺す。足場は整った。あとは巨大なサルをどう料理するかだ。
「やっぱ二人一組が基本だよな」
「確かに、だがトヨム。こんかいの二人一組は人間相手とは違う意識で取り組むといいかもしれんぞ?」
「旦那、そのココロは?」
「サルだけじゃなく、モンスターは防具を着けていない。そして人間ほど頭は良くない。だから防具剥ぎと仕留め役じゃなく、囮と仕留め役と考えたらどうだろう?」
「新しい戦法だね。じゃあ囮ができそうなのは……」
トヨムは私とカエデさんを見る。トヨムも含めて三人か。
「で、仕留め役は……」
セキトリ、シャルローネさん、マミさんになる。
「となればタッグは……」
カエデさんとセキトリ、トヨムとシャルローネさん、私にはマミさんだ。囮とは言っても、キルを取ってもかまわない、とトヨムは言う。つまり二人一組の原則が崩れることも考えに入れていた。
配置はトヨムがセンター。突っ込んで行くつもりだろう。
ライトにカエデさん。片手剣を大きく振らせるつもりだ。レフトは私。右からでも左からでも行けるからだ。
それでは戦闘再開!
案の定トヨムが突っ込む、私はウッディーの脚を打ってマミさんに引き継ぐ。ニ体目は面を打って一撃必殺。三体目はトヨムの退路を断とうとするウッディーの脚を奪った。
カエデさんは小手を奪う。怯んだ敵にセキトリがトドメ。次のサルは二人がかりでいたぶる。トヨムは私のような戦法。キルを取ったり欠損を取ったり。働きぶりでは私よりも上かもしれない。そして数と体格で勝っていたものの、所詮はサル。横に展開することもなく包囲してくる訳でなし。ただただ芸も無く数をへらしていった。
私たちの戦法がハマッたか、パワーもスピードも見せてもらうことなく、ウッディーは全滅した。