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いざ、探索の森へ!

 稽古総見を終えて、鬼将軍の総評をいただく。その内容は「見違える成長ぶりに胸打ち震える思いであった。評価は『抜群』である!

本番であるイベントの日まで、気を抜くことなくよく励みよく鍛え、最高の力を当日は発揮してもらいたい!」というものであった。

 さてそれでは、私たちトヨム小隊はその日までどのように鍛えるべきか?



「それなら旦那、探索の森が中途半端になってただろ? あそこで個人の実力、二人一組のコンビネーション。色々できると思うぞ?」

「やるべきことは山盛りだな。みんなはどうだい?」

「そうですね、やっぱり基本基礎は大切。最弱モンスター相手でも、学ぶべきことはたくさんあると思います」



 カエデさんの返答は四角四面。



「私はリュウ先生やセキトリさんとのコンビを組むことが少ないから、そこを練習してみたいですね♪」



 前向きな意見はシャルローネさん。



「私もぉ、壁役として複数相手の技を磨きたいですねー」



 マミさんも意欲的。



「ワシもシャルローネさんやカエデさんとはあまり組んだことが無いのう。みなさん、ちょっとコンビ組んでもらえるかのう?」




 考えてみれば、セキトリの相方はマミさんばかり。これはなかなかフレッシュな意見と言える。



「そういえば、私もシャルローネさんやマミさんとは組んでいないな……。面白いタッグになりそうだな」



 ということで、探索の森。先鋒は誰が務めるか? トヨムに決めさせる。



「まずは景気づけだね、旦那とシャルローネで行ってみる?」

「オッケー、小隊長♪ リュウ先生、おねがいしまーす♪」

「よーし、私の仕事はゴブリンたちの手足を叩き折ることだな。いくらでも出て来い! みんなぶっ飛ばしてやっからな!」


「旦那……美人相手には張り切るのかい?」

「そうじゃないぞ、トヨム。私だって士郎先生との一戦以来燃えるところはあるんだ」

「っていうかリュウ先生、張り切る姿が似合わないですよ?」



 カエデさんは厳しいねぇ。

 まあ、あれこれの事情はあるが、それでもゴブリン討伐だ。それもシャルローネさんにキルを取らせる、という目的がある。いざ、ファーストステージへ。







 まず先頭は野生の勘を誇るトヨムと、状況を見るカエデさん。私とシャルローネさんは中堅として控えている。そのトヨムが「いる……」と呟いた。



「正面ですね、トヨムさん……数は……」

「三……とニ……合計五、かな?」



 シャルローネさんに目配せして、前へ出る。そしてガサガサと藪が鳴る。出た、まずはゴブリン一匹。私は滑り込むようにして片膝を着き、抜き付けの一撃をゴブリンのスネに! ゴブリンは甲冑を着けていない。一撃でスネを欠損させた。ギャッと叫んで倒れるゴブリン、そこにシャルローネさんのメイスが突き込まれる。


 シャルローネさんのメイスもセキトリ同様、先端にスパイクがついている。ゴブリンは消滅した。

 仲間の悲鳴を聞いて、残りのゴブリンが一斉に出てきた。が、ここは慌てない。あくまで私はシャルローネさんの楯なのだ。


 かかってくるゴブリンは攻撃するが、自分から突っかかってシャルローネさんから離れるような真似はしない。ゴブリン先生方は私たちを評価してくれたか、一点突破隊形を取った。一気に四匹でかかってくるつもりだ。




 手に手に棍棒、あるいは折れた剣。そんな装備でよく好戦的な態度が取れたものだ。しかし、そこがゴブリン。ドッとなだれ込んできた。先頭の二匹は右へ左へ、木刀を凪いで頭部を打ち砕く。後続の二匹はシャルローネさんと共闘。


 まずは小手を打って仕込んでおき、怯んだところをシャルローネさんの一撃。もう一匹は鍔迫り合いのふりをして足払い。コケたところへシャルローネさんのメイスが降ってきた。



「おけ、どうだいシャルローネ。旦那とのコンビネーションは?」



 トヨムの言葉にシャルローネさんは「ん〜〜」と思案。



「もちろんこれで完成ってことは無いケド、それ言い出したらキリが無いよね〜〜」

「だな、じゃあ旦那。セキトリと交代、セキトリはシャルローネさんとタッグね?」



 長得物同士のタッグ。セキトリとシャルローネさんチーム結成。まずは連携の確認。



「まずはワシがゴブリンを止めて、シャルローネさんがトドメかのう?」

「いやいやセキトリさん、それじゃリュウ先生と変わらないから、私とセキトリならではの戦闘をしましょう」

「ほう? そりゃどんな?」

「そうですねぇ、ワシがトドメを刺すんじゃなくって、ゴブリンを追い払うとか突き放すとか?」


「それでえぇんか? ちと食い足らんきがするぞい」

「そうですね、でもキルは取れれば取る、くらいの気分でいきましょう♪」






 方針は決まった。ヒットマンであるシャルローネさんがキルを取らないのは意外だが、しかしこれは無理を絶対にしないという方針であると私は評価した。

 前進。もちろん先頭はトヨムとカエデさん。アンテナ役の二人が、六匹のゴブリンを探知した。


 私も戦闘態勢を取る。後列に回されたからといって、戦闘と無縁ではない。ゴブリン六匹はもちろんシャルローネさんとセキトリにまかせる。しかしそれ以外が現れた場合に備えるのだ。トヨムとマミさんはシャルローネさんたちが危機に陥った場合に備えている。カエデさんは私と同じく周囲の警戒。新手に備えている。



 そして六匹のゴブリンが現れた。前、セキトリ。後、シャルローネさん。まずはセキトリの小技、これでゴブリンの突進を止める。シャルローネさんもさらに小技。セキトリの攻撃の隙間を埋めた。これがシャルローネさんの考えだ。もしかしたら、ゴブリンからキルを取るときは取る。


 というのはセキトリにまかせているのかもしれない。二人で石突を使い、チクチクと敵を突いて回った。

 ゴブリンたちはカスダメを蓄積して、しかも思うようにならなくて、かなり苛立っているようだった。これが運営の演出だというのなら、グッジョブである。ゴブリンは地団駄を踏んで悔しがっていた。


 それに対してシャルローネさん、胸をそびやかして「フッフーン」とドヤ顔を見せている。セキトリはセキトリで、「ふむ、これもまた壁の仕事かのう」と感心している。事実、ゴブリンたちの防壁突破は許していない。




 ゴブリンたちは一斉に得物を構えた。どうやら全員突撃を行うらしい。私とカエデさんは得物を構え直す。前線の長得物二人は、小技こそ心得ているものの、さすがに回転数は低い。その隙を突かれたくない。

 しかしそこはセキトリ。スパイクのついたメイスを、横殴りにブンまわした。


 まともにくらったゴブリンが二匹、なぎ倒された者が二匹。コケたのが二匹。つまり、足を失ったゴブリンがニ、ダメージを負った者がニ。キルもニである。フォローのシャルローネさんは、動けないゴブリンなど相手にせず、まずは体力ゲージを大きく削られた者へアタック。



 セキトリも同じく、ともにキルを取ったところで、動けないゴブリンは後からゆっくりと料理した。

 まずはこんなところで、シャルローネさんも後衛へ。代わりにカエデさんがセキトリとタッグ。


「ここは定番の道化師役がダメージ入れて、ブルファイターが仕留めるって形ですかね?」

「ん〜〜ワシが敵を引き付けて、カエデさんがダメージを入れる、という展開もあるぞい?」



「じゃあ千変万化ってことでいいかしら?」

「よろしく頼むぞい」



 するとここで、プルプルが現れた。いわゆるスライムのことだが、これが足元で邪魔をしてくれる。そこへゴブリン五匹が現れたのだ。



「ほいじゃあ」



 と言ってセキトリがメイスを振り回す。ゴブリンは近づけない。その間にカエデさんがプルプルを刺殺して足場を確保。前へ出られないゴブリンたちに、カエデさんは横から攻撃。五匹いるゴブリンだが、カエデさん視点では一対一が五連続なだけ。


 先の話ではないが、セキトリがゴブリンを引き付けて、カエデさんが動けないゴブリンを攻めてゆくという展開になってしまった。結局プルプルもゴブリンも、キルはカエデさんが独り占め。



「なんだか欲張りみたいでお恥ずかしい話です……」


 恐縮するカエデさんを、セキトリは笑い飛ばす。


「まあこんなこともあるわいな!」



 さて今度は私とマミさんのタッグである。マミさんはセキトリとのコンビが多いせいか、あまり他のメンバーとタッグを組むことは無い。では、ブリーフィングだ。



「ここは無理せずー、リュウ先生の道化師役で私が仕留めるのはいかがでしょうかー?」

「うん、なれていないコンビで無理しても意味が無いからね、それで行こう」



 マミさんの提案は正解だった。私たちの前向きに現れたのは、デカくてタフな憎い奴。野生の相撲取りだったからだ。三体の相撲取り、まるで壁である。そのさに、ジロリと見下された。「お前らで相手になるのかよ?」とばかりに。


 だからその内の一体にスネ打ち。頭を下げたところで首筋へ一撃。もちろんクリティカルヒットで、相撲取りは消えていった。野生の相撲取りたちは驚いたように眼を見張る。そして私に向き直った。股を割って姿勢を低く、立ち合いの態勢だ。私も木刀を構える。手を着こうとする相撲取りたち。その後頭部へマミさんの一撃!

やはり右利きのせいか、双棍でのトドメは右の打撃が多い。




 そして最後の一体。これは私がスネを打ち、小手を打ってからマミさんが仕留めた。



「ようやく三体目で当初の目的をクリアできたね」

「バッチリ呼吸が合いましたー♪」



 これにてマミさんは後列へ。そして私は意外と組んでいないパートナーをむかえる。トヨムである。私は普段セキトリの後ろに控えていることが多い。そのせいで距離があったりはするが遠因でセキトリに協力することが多い。しかしトヨムはあちこち移動して回る。


 どこで誰とタッグを組む、という概念が薄いのだ。それに単独でもキルを重ねることができる。

 ということで、私とトヨムがタッグということならば、トヨムが闘っている最中、ちょっかいを出す者がいないよう護衛するのが私の仕事だ。



「それでいいかな、トヨム?」

「オッケー、それがバランス取れてるよね♪」



 ということで、トヨム先鋒。私が次鋒。そこへタフなハンサムガイ、野生の相撲取りが五体も現れた。しかもプルプルが一個小隊というオマケつき。まずは足元のプルプルを私が片付けて……と思ったらトヨムの姿が消えた。もう相撲取りにボディーブローを入れている。下がった頭にアッパーカット!

なんとも元気なことだ。




 仕方ないので、私はまず足元のプルプルを突いて回る。おぉ、相撲取りが私を睨んでいるわい。しかし心配は無いだろう。そのうちトヨムがやって来る。私は相撲取りを無視して、プルプルを突きまくった。しかしどうしても、相撲取りが粘っこい視線を向けてくる。


 仕方ない、少し相手をしてやるか。伸ばしてきた右手を割ってやる。相撲取りは怯んだ。その足の甲を突く。太ももを打ち、上腕を打つ。さらに四肢を打ち据え、抵抗できないようにした。

 トヨムを探す。向こう側で相撲取りをシバいて回っていた。



「トヨム! こちらの方が足場がいい! 場所を交換だ!」

「あいよ、旦那!」



 ということで、寄ってくる相撲取りを軽くいなしてトヨムと場所を入れ替える。トヨムはプルプルの少ない場所へ入る。おかげで私はまたプルプル退治から始めることになる。しかし場はすでに暖まっていた。プルプル退治に専念しようと思っていたら、野生の相撲取りが前に出てきたのだ。


 足場が悪い、プルプルはまだ大量に群れをなしていた。相撲取りの当たりを真正面から受けねばならない。蹲踞から両手を着いて、相撲取りが立った。立ち合いの速度よりも早く、私の一刀。これが大銀杏の頭を割る。一撃死、相撲取りは消滅。


 足場が良ければトヨムも不覚を取ることは無い。次々と相撲取りに深手を負わせ、トドメを刺していった。あとはプルプル掃除である。これは私が引き受け、トヨムが護衛を引き受けてくれた。




あとはメンバーを入れ替えてコンビネーションの練習。ファーストステージを終了する。


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