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初陣、白樺女子校生徒会!

みなさんこんばんは、おはようございます。



あるいはこんにちは、白樺女子校生徒の副会長1です。今日は『嗚呼!!花のトヨム小隊』に所属する女子高生プレイヤー、カエデさんが『達人』のひとりであるフジオカ先生からキルを奪う一戦を拝見しました。


同じ高校生、同じ女の子。それでいながら、怪獣か何かのように強いフジオカ先生を仕留めてしまったのですから、私たちも黙ってはいられません。今まで以上に熱心に、今まで以上に情熱をもってカカシへと飛び込んで行きます。



「……ですが、生徒会長」

「なにかしら、イッちゃん?」



副会長1だからイッちゃん、会長は私をそのように呼ぶ。



「このような突撃練習だけで、本当にあの剣豪たちに勝てるのでしょうか?」



すると会長は人差し指を振って、チッチッチッ。



「勝てるかどうかじゃないの、勝つしかないのよ。そして勝つための手段はこれだけ、この突撃しかないって訳。逆に言えば、あれこれやってあの巨人たちに勝てると思う?」



こういうところは、性格の違いなのだろう。私は他に手段は無いのか?

もっと効率の良い方法は無いのかと考えてしまう。そしてそんな私の心の内を見透かすのも、この人なのだ。



「イッちゃんの言いたいことはわかるわ。だけどね、もしも他に手段を講ずるのなら、数よ」



さらに言えば、問題の根幹を狙い撃ちするのもこの人なのである。



「あれから運動部や文化部から続々と人は集まっているけど、それでもまだ百人を越えた程度。下手をすれば、手を挙げてくれたは良いけどイベントまで保たずに結局不参加、なんてこともあり得るわ。人数はまだまだ、いくらいても足りないくらいよ」

「もちろんです、これからも根気よく『王国の刃』参加者を募るつもりです」

「そのためには、インパクトが必要よね?」



ニヤリ、そんな笑みを浮かべる会長。こんなときはロクでもないことを思いついているはずなのですが……。



「六人制試合に出てみない? これまでの成果を試すためにも」

「負けたらみんな、意気消沈しますよ?」



せっかく士気が高まっているのに、それはもったいない気もする。



「でも、実戦は経験しておかなくっちゃね。負けたら負けたで、私たち生徒会が励ましてあげれば良いのよ」



とにかく突撃、そして打つべし突くべし。それだけしか知らない私たちだけど、さてどのような結果になるのか!?



「ゲーム同好会です」



会長の気まぐれまがいで決定した、六人制試合への出場。なのだけど私としては士気を落とさないためにも、なんとか白星を確実にしたい。


という理由で、ゲーム同好会に勝ちの目を探してもらっていた。『王国の刃』というゲームにおいて、どのような選手が出場しているのか?

どのような戦法が取られているのか? その辺りをゲーム同好会に調べてもらっていたのだ。


場所は、白樺女子校生徒会の拠点。



「生徒会長、『王国の刃』においては初心者の新兵格でさえ、不正が横行しているようです」

「具体的に、どんな不正かしら?」

「ブッパツールです」

「ブッパツール?」



会長は素人丸出しの表情。



「えっと、王国の刃プレイヤーは、初心者でもビッグポイントを稼げるように、必殺技を使うことができるのですが、この必殺技は一定条件を満たさないと使えないんです。不正者は、この条件を満たすことなく連続して必殺技を撃ってきます」



いやらしいわねと、会長は眉をひそめる。



「いやらしいです、が、正面に立たなければどうということはありません。それに」

「それに?」

「必殺技の間合いを外れていれば、ダメージは少ないという情報が」


「その辺りをくわしくお願いできる?」

「いま現在、白樺女子校軍が稽古している突撃スタイル。これで相手の懐に飛び込めば、あるいは」

「あるいは、だなんて、ずいぶん不確定ね」

「いえ、会長」



ここで立ち上がったのは、剣道部主将。なんでも生徒会長とは幼なじみだとかなんとか。



「私たちの間合いにできたということは、敵はすでに死んでいます。その間合いは、同時に打ち込み突き込みをしている間合いですから……」



幼なじみの言葉に生徒会長、フフッと勝利を確信したような微笑み。



「じゃあ、なにも問題は無いわね! ビッシビッシと敵をやっつけて、私たち白樺女子の名を轟かせるわよ!」

「「「おーーっ!!」」」



ということで迎えた、私たちのデビュー戦。六人制試合……なのですが、やはり問題は発生するものです。



「えっと……イッちゃん? 私たちの装備はどうかしら?」



試合場、敵は六人こちらも六人。ブリーフィングを終え、お互い陣営に分かれて睨み合っているところ。私は明確に答える。



「はい、革鎧に小手と脚絆。額には鉄を飲んだハチマキです。おっと、得物は手槍ですね」



白樺女子校生徒会チーム、先生方の教えにしたがい、いつもの学校制服に革鎧姿。



「じゃあイッちゃん、敵の装備はどんなカンジかしら?」

完全装甲甲冑フルプレートアーマー、いわゆる『王国の刃』におけるフォーマルです。おっと、得物は手槍を揃えて、新兵格とはいえガチ勢っていうヤツですね」

「勝てないわよこんなの! どうするのよっ!?」

「ご心配なく、生徒会長。こんなこともあろうかと、昨夜のうちに士郎先生からメールで秘策を授かっています」



手早くウィンドウを開き、士郎先生からの動画付きメールを開く。


いつもの稽古場を背景に、士郎先生はアドバイスをくださいました。



「良いか白樺女子校軍。勝つために必要なのは、気合いと根性と精神力だ!」



生徒会長、そして私。副会長2と三人の書紀たち。六人揃って口の端から血を垂らし、瞳から輝きが失せてしまった。



「イッちゃん?」

「……なんでしょう?」



どうにか現実にカムバック。生徒会長は訊いてくる。



「ま?」

「ま」



マジですか? マジですよ。という意味。



「なんの、実はリュウ先生からも秘策を授かっています!」



私、別なメールを開封。すると今度はリュウ先生の動画。「このメールを開封したということは、なにかお困りのようだね。白樺女子の諸君」



そうです、なのでリュウ先生。なにとぞ策を!



「勝利のためにそのイチ! はみ出るくらいの攻撃精神!」



あ、ダメなヤツですわ、コレ。



「そのニ! 燃え盛る闘魂っっ!!」



すみませんリュウ先生、私たちもうお腹いっぱいですので。



「そのサンっっ!! 努力と根性っっっ!!!」



二つ重なっとるやん。



「あの、副会長? このメールはフジオカ先生と緑柳師範の分まであるのかしら?」

「はい会長、実は未開封で……」

「もうお言葉をいただく必要は無いわ」



デスヨネー、どうせ同じ内容だろうし。もしくは輪をかけて酷くなってるかもしれません。



「先生方がおっしゃるのは、たったひとつ! 声出していきましょう、みんな!」

「「「オーーッ!!」」」

そっちですか会長!? 貴女そっち側の人間だったんですか!?



「間もなくゴングよ! 槍を構えて、気合いを入れてっ! 行くぞ!」

「おうっ!」

「行くぞ!」

「おうっ!」

「行くぞ!」

「おうっ!!」



開幕の銅鑼。



「突撃だっ! かかれーーっ!!」

「うおおぉぉーーっ!」



なんと無策で、なんと無謀なことか。しかし私がどうこう文句をたれようと、六人制試合は始まってしまったのだ。そして狂気のような突撃の嵐に、私もまた飲み込まれてしまう……。


なんて言ってる場合じゃない! 敵はもう眼の前だ。しかも槍や薙刀で私たちを狙っている。怖い、怖い、怖い! なのに突撃の足は止まってくれない。



「さあ、危険地帯に飛び込むわよっ! さらに加速っ!!」



なに言ってんですか、会長のバカーーッ! そんな威勢の良いことを言っていた生徒会長、盛大に殉死。しかし敵によるその攻撃は仇となった。すでに二番手が懐深く飛び込んで、胴に槍を突き立てていたのだ。


派手な爆発とともに、鉄胴が消滅。二番手を務めていた書紀3ちゃんはさらにトドメの突きを入れて、スコアをタイに持ち込む。


私も祈るようにして思い切り敵に飛び込んだ。そして突き。嫌な手応え、見上げると敵の小手が吹き飛んでいた。あ、私もダメージを与えられるんだ……。



と、すぐに我に返ってガラ空きの胴へ果敢に突き。今度は胴の防具を破壊。そこへフォローの書紀1ちゃんがトドメを刺す。


体格でも、武装でも上回る敵チーム。おそらく全員男性なのだろう。それでも鋼鉄甲冑で全身覆い隠しているので、どことなく動きが鈍い。



「足を止めないで! とにかく動き回るのよっ!」



背後から、生徒会長の声。そうか、死人部屋から復帰してきたんだ。



「私にもヤラせなさいっ! アチョーーッ!」



会長、かけ声が強くなさそう過ぎます……。


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