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試し斬り

リュウです、試合場です。鬼神館柔道の面々が試し斬りと称して、六人制試合に出場するということで、観戦ならびに私たちトヨム小隊も出場してみようということに相成りました。


もちろん士郎さんたち鬼組も出場を予定、というかフジオカ先生の試合の次に予約を入れている次第。まずは鬼神館柔道の試合を私の解説で。豪傑格試合六人制、不正ツールを入れていないチームを相手に、まずはナンブ・リュウゾウたち五人の若いところが突撃。


日本刀のように斬れる技で、バッタバッタと対戦相手を死人部屋送りにしてしまう。特に舌を巻いたのは一本背負いなどで相手を真っ逆さまにしておいて、地面に激突する瞬間片足で相手の首を曲げているところ。


この変化で技の殺傷能力を上げていたのだ。恐るべし鬼神館柔道、正しく鬼の申し子たち。そんな形で相手チームは死人部屋をニ往復。


会場も暖まったところで、いよいよ御大、フジオカ先生の登場である。鬼神館柔道の若いところは、まず相手を誘い、相手の攻撃を躱すのが1、掴んで投げ終わるで2,5。


しかしフジオカ先生さすが達人、躱して掴んで投げ終わるまででほぼ1で作業を終えている。しかも足で首を曲げるなどせず、相手の脳天が地面に触れるや軽く引いて無駄なく首を折っていたのだ。



鋭い。日本刀の中でもさらに斬れる、妖刀村正の切れ味だ。


相手チームの死人部屋巡礼が三周を終えた時点で、鬼神館柔道サイドはキル稼ぎを止めた。相手の突き、打ちにタイミングを合わせたステップイン、あるいは誘いの工夫を繰り返している。


舐めプではない。実戦で経験を積み上げるには、いちいち死人部屋を往復してもらっては時間の無駄でしかないからだ。その辺りを相手に理解していただいた上での、打ち込み稽古なのである。


別な表現をするならば、『わからせる』という奴であろうか。しかしこの一戦、参加者はすべて男性プレイヤーのみ。男同士で『わからせる』も『わからせられる』も御免だと思う私は、悪くないはずだ。


そして試合終了、スコアは十八:〇の圧勝である。切れ味としては満点である。しかし戦術としては、相手を足止めするためのコカし技など、幅広さや柔軟性があっても良かったのではないかと思う。


よもやフジオカ先生、『何者かに追われるがごとく、斬り急いだ』のではあるまいな?疑念をはらみながらも、鬼神館柔道は鬼組と入れ替わる。重々しい殺気をまとって、草薙士郎……大登場。



士郎さんは英雄格、ということで鬼組メンバーも自動的に英雄格と闘うことになる。しかしこの階級がクセモノで、プレイヤーの大半が不正者なのだ。


それもこれまで見たことのない無敵甲冑という不正ツール。私たちトヨム小隊も英雄格なので、その処理方法には注目である。無敵甲冑の相手チームは、長得物と刀剣の割合が半々とバランス重視のチームである。さて士郎さん、どうするかな……?


まずは鬼神館柔道と同じく、士郎さんを除いた若手五人が前に出る。相手は三ー三の布陣、前衛は長得物。


そこで開幕の銅鑼、両軍接近。さらにファーストコンタクト、長得物三つは、メイスのダイスケ薙刀のフィー、日本刀のキョウちゃん♡が受け止めた。


その瞬間に両脇へ回ったユキさんと忍者、長得物の二人へ関節蹴り。ふむ、まずはキルやクリティカルより、動けないようにする、か。なにしろ無敵甲冑と呼ばれる代物、いかに威力抜群の関節蹴りでも折ることはできなかった。


ならばコケて立ち上がるまでのロスタイムに、どれだけ打ち込めるか?それが焦点となる。その流れか、真ん中の長得物はダイスケくんが強い当たりでひっくり返している。



コケた長得物二人、それは士郎さんが担当していた。まずは木刀で殴る殴る殴る。同じ箇所を、つまり敵の兜に一点集中だ。


そして最後の一発は少し鈍く、敵がひっくり返るように打ち込む。その頃には立ち上がっている、もう一人の長得物。今度はそちらにあたる士郎さん、もちろん頭部集中の一点突破。また最後にはひっくり返す。そうすると立ち上がっている、最初の長得物を相手にしにゆくという具合だ。


大ダメージは与える、しかしキルはまだ取らない。仕込みを十分にしてからキルを取りにかかるという、私たちトヨム小隊と同じ作戦のようだ。その証拠にユキさんと忍者、それにダイスケくんは敵をコカす専門。残るキョウちゃん♡にフィー先生で立ち上がれない敵をボコボコにしている。


それもキル寸前で攻撃の手を止める、言わば寸止め。次々と新手が現れぬように、という対策なのだ。



「フィー先生だよな、ダンナ?」

「あぁ、この作戦はな」

「カエデちゃんなら何点つける出来かにゃ?」



シャルローネさんが訊く。



「九十九点」

「キビシーですね〜〜カエデさん」



マミさんの寸評だ。



「ん、もちろん満点なんだけど、満点を出したら私自身が甘くなりそうだから」



若くしてその姿勢かい、カエデさん?

もう少し楽に生きてみないかい?そうこうしているうちに、敵の寸止めがすべて完了した。



「せ〜〜のっ!!」



フィー先生の号令で、最後の一撃を同時に加える。私たち英雄格の研究で、無敵甲冑は三〇発目に破壊できることが知れていたのだ。相手チーム、全員撤退。死人部屋へと仲良く旅立ってゆく。


そして振り出しに戻る戦闘、鬼組メンバーも一度自陣に後退していた。あまり敵陣に近づき過ぎると、復活から再コンタクトの時間が短くなってしまうからだ。


今度のコカし役はダイスケくんにキョウちゃん♡とフィー先生。ダメージ担当は士郎さんを筆頭に、ユキさんと忍者。回転数を重視しているのだとすぐにわかる。結局のところ十八:〇のトリプルスコアで、鬼組の圧勝。鬼神館柔道と同じスコアを記録して試合を終了した。



「さあ、私たちの出番だな」



フジオカ先生、士郎さんと上々の仕上がりを見せつけられた。ここで私がヘクサイ真似をする訳にはいかない。



配置シフトは先程お知らせした通りです。小隊長、出陣前に一言お願いします!」

「よし、慌てず急いで丁寧に! 抜かりなく行こうぜ!!」

「「「応っ!!!」」」



私も若者たちに混ざって声を出した。小隊長のトヨムを先頭に、隊列を組んでいざ、出陣だ! 前列、セキトリを中央にレフトはシャルローネさん、ライトはマミさん。コカし役三羽烏である。



回転数重視の後列は、私をセンターにレフトがトヨム、ライトがカエデさん。シャルローネさんの得物はコカしに役立つ『死神の鎌』。マミさんのトンファーは回転数が高いが、柔道経験者という点を買われてのコカし役抜擢。



「どうしましょう、小隊長? こちらはあまり前に出ず、敵に攻めさせては?」

「お、そりゃイイね! 引きつけられるだけ敵を引きつけような、カエデ!」


「ではみなさん、そのように!」

「ヨシ来た!」


というところで開幕の銅鑼。動かざること山の如し、私たちは敵を迎え撃つ形を取った。鬼組と似たような戦法だ。


ファーストコンタクト、ドンと強く当たったところで、素早くシャルローネさんとマミさんがサイドに展開。敵陣を横から崩しにかかる。


シャルローネさんは鎌で足をすくい、マミさんは足掛けで転倒を誘う。もちろんセキトリの当たりは抜群であった。敵がコケたなら私たち、ダメージ屋の出番。


まずはトヨム、マミさんと同じく柔道経験者ではあるが掴むより速く拳が飛び出すファイターだ。まずはヒザを着いた相手にワンツーパンチから返しの左フック。



そしてカエデさん。片手剣でまずは突く。フルプレートアーマーの兜を突いたら手首を返して、素早く兜打ち。


その戦法は私もとらせてもらう。木刀でのひと突きから、速やかに兜打ちを入れて胸を蹴る。立ち上がらせないことが目的の蹴りだ。敵が仰向けに倒れたなら、そのそばに片ヒザを着き、さらに面面面と打ち据える。



「寸止め完了!」



二十九発一番乗りは、回転の早いトヨムであった。二番手は私、お互いに担当していた敵の足を払い手を挫いて、立ち上がりを妨害する。


カエデさんもノルマ達成、敵を転がし始めた。



「それでは敵の前衛三人、死人部屋に送っちゃいましょう!」



ここが鬼組などと少し違うところ。まずはダメージ屋が三人からキルを取る。手が空いたところで、残りの敵三人を一気にキルまで追い込む。


これが私たちの戦法でオリジナルの部分だった。それぞれが役割分担、自分の仕事をキッチリとこなす。そういう意味ではいつもの陸奥屋まほろば連合の戦い方と言っても差し支えないだろう。


結果はニクいと言われるかもしれないが、十八ー〇といういつもの結果。そこに留めておくことにした。そして『災害』先生、私も含めて三人とも技に曇りは見受けられない。いま現在としては満足のいく出来映えと言える。


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