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それいけ 最終日!

本陣 カエデ視点


ジョージさん、キャプテン、軍曹さん、マミヤさん。四個小隊に責め立てられて、万里さんたちの駐屯集団は壊滅しました。だけど、ちょっとだけ様子がおかしいですね。死に帰りが復帰地点から動きません。

「リュウ先生、なにか見えますか?」

復帰地点近辺には、リュウ先生たち四先生がいらっしゃいます。

「あぁ、どうやらちょっと賢い奴がいるようだね。ようやく死に帰りでまとまることを覚えたようだ」

うん、その賢い奴っていうのは万里さんではないっていうのに一票。

「しかもね、カエデさん。視線の方向からして、本隊が戦闘している東軍英雄格。あそこから乗り込んで行きそうだね」

なるほどなるほど、そこまで知恵を効かせているとなると、もはや万里さんや幸♡兼定さんのアイデアではないこと確定ですね。ですが二日目も間もなくタイムアップ。残り時間もあとわずか。

「ということで鏡花さん、二日目終了後でちょっとした作戦会議などいかがでしょう?」

「そうですわね、万里さんという方に関しては情報がございますが、それ以外の方々の情報が無いのですから。作戦会議は必要ですわね」

という訳で、二日目終了の作戦会議。みんなでまほろばの本殿に集まりました。


まずは鬼将軍、壇上ですごく渋い顔をしています。そのとなりでは天宮緋影さんが上機嫌な表情。まるで「不機嫌な鬼将軍、ざまぁ♪」とでも言いたそう。

で、その鬼将軍。何故に不機嫌なのかというと、理由はひとつ。

「歯ごたえの無い……」

そう、せっかく挑まれた戦いだというのに、万幸軍があまりにも不甲斐ない。そこに憤りを感じているのだ。楽して勝てて美少女のカエデちゃんを守れるんだから、別に良いじゃない。とはいかないのが鬼将軍の面倒臭さ。

「初めのうちこそ大先生おおせんせい方に、死に帰りの防具を剥いでいただいていたが、今やどうだ。ネームドプレイヤーでさえない一般プレイヤーたちだけであしらえてしまっているではないか!」

鏡花さんの目配せ、ヤハラ参謀が動きます。

「総裁、なにぶん万幸軍はボクシングで言うところの『嫌倒れ』。この場合は『嫌逃れ』とでも言いましょうか。我が軍の三倍いた人数が、今や二倍程度。それもようやく死に帰りがまとまって反撃すべきではないか、という知恵を得た程度。つまりこれまでは死に帰りがパラパラ三々五々と現れる程度でしたので、ネームドプレイヤーが不要な状況でした。しかし総裁!」

さてお立ち合い、とばかりヤハラ参謀はヒザをピシャリと打ちました。ノリノリですね♪


「敵にも知恵者はいます! ようやくではありますが、死に帰りが復帰地点近辺で集結を始めたではありませんか!」

「ぬう、ヤル奴もいたものだな!」

「左様、まだまだ油断などできませぬ! 明日の我が軍は危機また危機、激闘また激闘は必至! うかうかと枕を高くしてなどいられません!」

ヤハラ参謀、もしかして本業は営業か販売促進課ですか?

「さらには総裁がお招きした東軍英雄格!」

「それは連合軍の豪傑格だけで対処できているのではないのかね?」

「対処できてはおりますが、余裕はありませぬ! 苦しい状況というのが正直なところです。だというのに! 緑柳師範!」

「おう、泰然流の免許皆伝とかいう連中と遊んでたがよ、ウチのネームドたちが闘ったら面白ぇだろうよ」

あぁ、リュウ先生たちがタイマン勝負を申請しておけって言ってたの、ソレだったんだ。言われた通りに記録レコードもしておいたけど、そんなに面白い人たちだっけ?

鬼将軍さんを見慣れてるせいか、『面白い人間』の基準が、かなり狂っちゃってるんだよなぁ……。

「ねねね、ダンナ。その泰然流とかっての、そんなに面白いの?」

小隊長、さっそく興味を示してるし……。

「うん、そうだな……。ウチのネームドたちがタイマン張って、何人生き残れるかってところかな? ヤルよ、あいつらは……」

「ってことは、ダンナが言うところの『術』があるんだね? 集中しないと、あっという間にヤラれちゃうかな?」

もう闘う気になってるもんなぁ、小隊長……。


「ふむ、悪くない。右も左も敵だらけ、という奴だな」

いや、そういう感性どうにかなりませんか、総裁? 状況必ずしも有利ならず、なんですよ?

「危機、また危機! スリル&サスペンス! 私が求めていたものは、これなのだよコレ!」

だからそういう特殊な感性にみんなを巻き込むの、やめましょうって言ってるんです!

「諸君! 聞いての通りだ! 戦いはまったく余談を許せない状況でしかない! 今一度、ふんどしを締め直してことに当たってもらいたい! 以上!」

全員で座礼。総裁鬼将軍、そしてより高い位の天宮緋影さんが退場。場は座談会のように打ち解けます。

「なぁ、忍者。ダンナが言うには泰然流とか言う連中、かなり使うらしいぞ?」

「あぁ、そうだな。だが私は生き延びる、トヨムは死ぬ。それは気付いてるだろ?」

「あぁ、ダンナもそんな感じを匂わせてた。でもな、アタイが死んでももっと熟練したアキラがいる。アタイの撤退を見たら、アキラも何か掴めるだろうさ」

「え? え!? えぇ〜〜っ!? ボボボ、ボクが決戦するんですか!? ズルいですよ、小隊長!」

他流派対陸奥屋まほろば連合のネームドプレイヤー。傍観の席から無責任に眺める身なれば、この戦いは心踊ってしまいます。そんな期待をはらみながら、私たちは三日目へ踏み出します!



三日目開幕 最前線のトヨム


まずはマップで状況の確認だ。最近のアタイたちは東西陣営どちらが有利か?

ってのにはあまり関与してないけど、どうやらアタイたち西軍が有利みたいだ。陸奥屋まほろば連合が守るA陣地。吸い寄せられるようにして、東軍の英雄格まで押し寄せて来ている。そこを西軍の豪傑格、英雄格が脇腹突く感じで責め立ててるのさ。

陣取り合戦でもB陣地C陣地を落として、D陣地は東軍が取ってるか。今は両陣営、前線の陣地を奪い合っているってところ。

そしてアタイたちは……。まず東軍復活地点の本拠地前、あそこで数をまとめてるのが万幸軍だな。

そして英雄格、豪傑格が入り混じってA陣地へ攻め込む場所、顔が見える近さにいる。

ダンナたちは東軍陣営の奥深くにいる。そのそばにいる赤いマークが、泰然流とか言う連中だな? まだダンナたちと遊んでるみたいだ。

「小隊長、あまり前に出過ぎないでくださいね?」

「わかってるよ、ユキ。アタイの仕事はキルや死に帰りを増やさずに、敵を遠くへぶっ飛ばすこと。護衛のユキから離れたら、たちまち囲まれちゃうからな」

「小隊長はあのように申しているが、ユキどの。苦労が耐えんなぁ」

まほろばの過激派、白銀輝夜にまで言われちゃったよ……。


さあ、最終日! 三日目のゴングだ!

まずは白銀輝夜が前に出て、無敵甲冑のインチキプレイヤーを一人滅多打ちにする。その隙をうかがって一発食らわせてやろうと企んでる、東軍英雄格。ソイツにゃアタイのボディーブロー!

おらっ、飛んでけーーっ!

一発重視のチェーンナックル、威力はデカいが連打が効かない。一発打ったらノーガード、そんなアタイを守ってくれるのがユキだ。

「小隊長、体勢を立て直してください!」

敵の攻撃を弾き飛ばしてくれるユキ、サンキューな。と、ユキの奴も上手いこと相手をコケさせて、戦闘に参加できなくしてる。だったらアタイも柔道の黒帯!

って意気込んでたら、真横をゴム手袋はめたナンブ・リュウゾウが電車道。触れるを幸い、無敵甲冑をバタバタ倒していった。それを追いかける若い衆、こいつらが軽い得物で連打をくれて、キルの数を増やしていた。

お、またまた白銀輝夜を狙っている奴が出てきたな?

まずは眼の前に立ちふさがり、いつものピーカーブースタイルに構えてやる。やりを構えた英雄格、アタイに誘いの突き技を出してくるけど、鎖を巻いた拳でガード。

チョンチョンと小突いてきて、次が本命! その下をかいくぐる、敵は何もできない近接間合い。そこで一気にボディーアッパー! ぶっ飛べコンチキショー!



護衛、ユキ


小隊長のチェーンナックル、あれは正解だよね。あれはいわば、無敵甲冑殺しの新兵器かもしれない。もちろんキルは取りにくいけど、飛ばされた無敵甲冑はほぼすべて無様な着地になる。つまり遠くへ飛ばされて、なおかつ立ち上がり難い。十分に効果は発揮されている。一箇所に集まった無敵甲冑を散らすには、もってこいな武器なんじゃないかな?

そんな武器をナチュラルに選択する小隊長のセンス。真似できないよね。

真似できないなら、私は私の闘い方をするだけ。小隊長に向けられた攻撃を、受ける、弾く! 受ける、弾く! ついでにコケてもらいましょう♪

こんな調子で無敵甲冑も、どうにかクリアできそうなカンジ。

とかイージー・ファイトを思い描いていたら……。なに、この気配っ!?

思わずサッとその場を飛び退いてしまう。見ると小隊長も輝夜さんも、後ろへ飛び退いている。

なんだろ、この不安にさせてくれる気配。眼の前には無敵甲冑の英雄格が並んでるだけなのに……。

「ユキ、輝夜。気をつけろ……。こいつぁダンナが言ってた、泰然流とかいう連中の気配だ!」

会ったことあるのかな、小隊長? その泰然リュウさんって人に。

「名前じゃねーよ、泰然流って剣術の流派だ。しかもな、免許皆伝の腕前らしいぜ」

私、目録。輝夜さん、目録。小隊長、不明。って、これじゃ全然勝てないよ!

「どうする、小隊長?」

輝夜さんが訊いて小隊長が答える。

「いいか、二人とも。トーナメントなんかに出るとな、自分より強い奴が一人や二人いるものさ。だけどどうしても優勝したいときは、そんな奴らも倒さなきゃ勝てないんだ!」

……私はあんまり無理したくないなぁ。特に『小隊長基準』の無理はしたくない。


「やるぞ!」と言う小隊長。

だけどそこに割って入るのが、血肉を分けた兄、キョウちゃんです。

「……何者だ? これまでとは違う気配だが……」

「うん、まだ姿を現してないんだけど、泰然流の免許皆伝らしいって。小隊長が……」

「……強いな」

最終日の主目的は無敵甲冑への対応ってことで、みんな木刀木槍を使ってるんだけど。その木刀を、キョウちゃんが抜き放つ。姿も見えてないのに戦闘準備なんだ。これだけで、相手が只者じゃないって、伝わってくるなぁ……。

そして、来ました。東軍英雄格が道を開けて、姿を現した六人の剣士たち。みんな和服に袴、腰に帯びているのは真剣実刀。

「なるほど、先生方のおっしゃった通りだ。いるもんだなぁ、使える連中ってのは……」

「あぁ、使える。使えるが、若い。若いクセに使える」

私たちを見て、私という剣士の六人。いずれも三十路がらみの堂々としたオジサンたち。まるで時代劇の浪人が、そのまま現れたような風貌。

「どちらさまですかな?」

キョウちゃんが訊くと、人懐っこい笑顔が弾ける。

「これは失礼、昨日お手前方の先生にボコボコにされました。泰然流の者に御座る」

いや、そこまで時代劇しなくても……。

「して、御用の向きは?」

「陸奥屋まほろば連合には諸流派の使い手がゴロゴロしているとうかがった。後学のため、是非一手指南を乞いたい」

「つまりは……立ち合えと……?」

「左様……」

そう言ったときには、すでに小隊長が飛び込んでいた。反応する泰然流剣士、居合だ。私も居合、その小手に打ち込もうとする。だけどハズレ、一歩後退されてしまった。小隊長の拳も空振り。


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