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初日、終了。そして二日目へ……

展開 トヨム小隊長

セキトリたち狼牙棒部隊の活躍で、かなりの数の万幸軍を撤退させることができた。上々の戦果と言えるだろうな。ってゆーか、今となっては万幸軍も残りわずか。そろそろ全員撤退一周完了といったところか。

狼牙棒部隊、撤退ゼロ。吶喊隊の撤退者もゼロ。多少革鎧に傷を負った者もいるだろうけど、用心棒部隊としては望んだ通りの戦果なはずだ。

この結果に満足していると、参謀長出雲鏡花から部隊無線が入った。

「トヨム隊長トヨム隊長、間もなく敵軍も完全撃破。死に帰りを迎え撃つ態勢に入ってくださいませ。なお、万幸軍にも花を持たせるため、現在四先生方が敵の英雄格を釣り出してきてますわ。無敵甲冑は難敵ですので、どうぞお気をつけて♪」

「なんだって!? ダンナたちが無敵甲冑を連れてくるって!? オオゴトじゃん、それ!!」

いや、マジで。巨大なオオゴトじゃないか。背中守ってくれてんの新兵たちなんだから、あんな不正者たちの相手はさせられないぞ!

「聞いたかセキトリ、英雄格の不正者集団が死に帰りたちと一緒に、押し寄せて来るってさ!」

「聞いた聞いた、小隊長! 最後の敵将万里も……まずは死人部屋に送ったぞい! 総員迎撃態勢じゃい!」

新兵格、熟練格はとりあえず後列へ。前列はアタイたちネームドプレイヤーで固める。


「いいか! 間もなくダンナたち先生チームが、敵の英雄格を連れてくる! これを迎え撃つのはネームドプレイヤー!

新兵熟練のメンバーたちは、万幸軍を邪魔してくれ!」

周囲を見回す。どうやらこれで配置は完了。

「長得物のみんな、とにかく英雄格の不正者連中は転ばせに転ばしてくれ。あとは剣士と吶喊隊でなんとかする」

アタイが部隊全部に声をかけると、「応っ!!」という良い返事。無敵甲冑も厄介っちゃ厄介だけど、転ばされると起き上がり難いってのが弱点だ。そこがアタイたちのつけ目狙い目だ。

「よしネームドのみんな! 行くぞーーっ!」

と、駆け出したところで初日は終了。陣地にそびえる櫓が消えていき、倒れた兵士たちが消えて、アタイたちの視界もブラックアウトしてゆく……。

吐き出された闘技場ロビー。そこには三密どころじゃない、イベントに参加していたプレイヤーたちが密集、ひしめき合っていた。満足いく戦闘ができた奴。思う通りの戦果を上げられなかった奴。表情を見ればどちらなのかがすぐにわかる。

「おい、まほろばと陸奥屋一党だぞ」

「あれがか? 甲冑も着てないじゃないか」

「だとしたら『災害』のオッサンたちがいるんだろ? 当たらないようにしねぇとよ」


アタイたちを見て、他所のプレイヤーたちが噂をしている。まあ、そのほとんどがダンナたち大先生おおせんせいの話題なんだけどな。だけどその方が良い。アタイたち若手は、ダンナたちの陰に隠れた実力者。それで良いんだ。その方が仕事がしやすい。

「陸奥屋一党ならびにまほろばの同志諸君! まずは凱旋だ! 本殿へ帰るぞ!」

大将、鬼将軍の旦那が軍刀をかざす。先頭はセキトリとダイスケのあんちゃん。「まほろばと陸奥屋の一党が通る! 道を開けませい!

開けませい!」と大声を張り上げる。本当なら出口までロビーはプレイヤーたちでビッシリ。なんだけど、モーゼの十戒みたいに群衆が割れて道ができた。誰かがベキラの淵にと歌いだした。それを共に歌う奴らが出て来る。えらく勇ましい歌だ。きっと軍歌かなにかなんだろう。歌に歩調を合わせて、みんな歩き出した。もちろんアタイもだ。

闘技場の建物を出る。そこは広場なんだけど、なにしろ参加者は東西併せて五万六万といる。広場もプレイヤーたちで埋め尽くされていた。

帰ろう、今日の戦さは終わった。ここからはくつろぎの時間だ。帰ろう、冬の日が落ちるのは早い……。



マヨウンジャーのリーダー マミヤ視点。

私は吶喊部隊に配属されていた。短杖ステッキという短い得物を使っていたからだ。そして壁役、六人制試合の壁役ではない。死に帰りした敵兵の邪魔をするのが役割である。

初日、悪くない成果だったと自負する。キルを狙わずに相棒とともに死に帰りの邪魔をして、鎧にペチペチ攻撃。下拵えをしてから、ネームドプレイヤーに引き渡しをする。それが私たちの仕事なのだ。

もちろん四先生方が鎧を剥いで敵を送りつけてくれた。そういった敵兵は容赦なくキルを奪う。

そういう流れでここまでは上手くいった。そう、新兵格同士や熟練格同士の戦いでは、先生方あればこそ、有利にことを運べたのだ。

その先生は、明日のイベントで敵の英雄格にかかりっきり。どころではない、ネームド……いわゆる私たちのリーダーたちも英雄格を迎え撃つという。

できるのだろうか?

格下とはいえ数が五〇〇の兵を相手に。私たちだけで……。不安がつきまとうどころではない。昨日今日、王国の刃にインしてきた若者たち。それを率いなければならないのだ。果たして私たちは、どこまでやれるのか?

集う場所は『まほろば』の拠点、神社の本殿に似た大道場。ここで鬼将軍が前に立った。

「……初日でありながら三倍以上の敵をことごとく討ち取り、全員死人部屋送りにできたこと実に天晴。しかし諸君、それだけでは我々が単なるいじめっ子集団ということになってしまう。よって四先生方のご協力を得て、東軍英雄格を引きずり出してみた!

無敵甲冑なる不正防具を使用しているという英雄格、これをことごとく退けてこその我々ではないか!」

あぁ、そうか……やっぱりな……悪いのは全部この男か。……納得だな。



ナンブ・リュウゾウ

へっ、まだまだ強い奴、悪い奴らがゾロゾロ出て来るってか? 面白ぇじゃねぇか、どいつもこいつも手槍の錆にしてやらぁ。っと、そうじゃねぇって?

サカモト先生が壇上で説明してくれる。

明日は本身を所持するな? 敵はどんな得物や攻撃でも三十発叩かないと、壊れない防具だって?

だから重たい一発よりも軽い連打を重視ってか……。なるほどね、じゃあ俺も明日は無手で投げまくってやるか。……投げ技は有効、推奨だが得物は所持しとけ?

足を引っ掛けて転ばす方が有効か……。

まあ、三十発叩かないと鎧が壊れねぇなら、三十回投げないと死んでくれそうにねーし、関節技も三十回極めねーと折れなかったりしてな。よし、イベント二日目は木槍を担いで、敵をコカしまくってやろうじゃねーか。

……おっと、いけねぇいけねぇ。俺といえばマミさん。マミさんといえば俺。本日のマミさん観察日記といきますか。……いつもと表情が違うな。緊張してるっつーか、小さく薄い唇をキュッと噛みしめている。

……そっか、マミさんの得物はトンファーだ。超近距離戦闘兵器。しかも回転が早くて連打を打てる。オマケに柔道経験者なんだろ?

ってこたぁ、敵の英雄格相手に主戦力ってことになる。緊張するのも無理ねーか。なんとか手助けしてやれねぇかなぁ……。



二日目 マミさん視点

はい、マミさんです。ネームドプレイヤーのひとりです。いつの間にそんな偉くなったんでしょーねー。しかもですよしかもですよ、不正防具無敵甲冑を着た東軍英雄格。これを迎え撃つ主力メンバーのひとりに抜擢されてしまいましたー♪

人生オワタなんてフレーズが昔ありましたけど、神さまはマミさんに何を期待しているんでしょーか? え? そこまで仰々しく語ることじゃない?

チッチッチッ、それは違いますねー。主力メンバーの顔ぶれをご紹介すれば、マミさんの言ってることが正しいってわかりますよー?

まずは筆頭、主力小隊の隊長は、トヨム隊長です! カエデさんの選抜したメンバー、いきなりトヨム隊長ですよ? 二人目は主力小隊の鬼札、忍者さん!

三番手は実力ナンバーワン、迷走戦隊マヨウンジャーのヒットマン、アキラくん! 女の子だけどアキラくん! 赤ブルマーだよアキラくん♡

四人目は茶房『葵』の店主、レスリングのレオタードもまぶしい『まほろば』の葵さん! そして鬼神館柔道の猛者、ナンブ・リュウゾウさん!

このメンバーの中に、マミさんは混ぜ込まれてしまいました……。どうなることやら、トホホ……。そんな風に嘆いていたら、ポンと肩を叩かれました。振り向いても、視線が合いません。ん?

なにか髪の毛が生えてますねぇ。あ、リュウゾウさんでした♪

「緊張してんだろ、マミさん。……心配するな、ピンチになったら俺が……。必ず俺が助けてやる」

格好いいセリフなんですけど、リュウゾウさん? ゴム手袋はめて言っても、あまり格好よくありません。というか得物はどうしました? 投げるんですね?

投げる気マンマンなんですね!?



リュウ視点 二日目、開幕

さて今回のイベント、おそらく大将の鬼将軍発案。参謀長出雲鏡花の図面引きにより、万幸軍だけでなく東軍英雄格まで相手にしなければならなくなった。カエデさんの運命がかかっているというのにだ。

東軍英雄格の相手を務めるのは、陸奥屋まほろば連合のうち、ネームドプレイヤーたち。そして万幸軍を相手にするのは、計らずも新兵熟練格の一般プレイヤーたち。そして私たち『災害認定』の四人は、本戦に参加することができない。またもや東軍拠点前に陣取ることしかできないのだ。

陸奥屋まほろば連合、新兵格熟練格といえども、その技術は他所とは格段に違う。しかし敵の数は三倍以上。この状況を果たして覆せるものかどうか……。さらに言うならば、現場を切り盛りしてくれたカエデさんは陸奥屋本陣に座らされ、変な意味でのお姫さまプレイをさせられている。

「頼んだぞ、トヨム」

イベント会場へインする直前、我らが小隊長の肩を叩いた。

「あぁ、まかせてくれ。ダンナ」

いつものカラス声で、頼もしい言葉が返ってくる。今夜のトヨムは、主力の中の主力。

敵の英雄格をどれだけ仕留められるか、という鍵になるポジションだ。

戦闘再開へのカウントダウン。3……2……1……さあ、再び戦闘だ!



チーム『情熱の嵐』爆炎視点

俺たちネームドプレイヤーになれなかった連中は、今回新兵たちが闘いやすいように鎧剥ぎの仕事をまかせられた。いいじゃねぇか、大任だよな。そう来なくっちゃ面白くないぜ。

「爆炎、熱くなりすぎちゃダメだよ?」

ウチのリーダーヒナ雄に、それとなくたしなめられる。だけどよ、リーダー。その言葉はちょっとばっかし遅かったぜ。なにしろ俺の血は熱く燃えちまってんだからよ。

それはどうやら、チーム『ジャスティス』のメンバーも同じようだった。

「いいかみんな! このA陣地が落ちるも守るも、同志カエデさんが生きるも死ぬも、俺たちの活躍にかかっている! チーム・ジャスティス〜〜っ、行くぞ!」

「「「おうっ!」」」

「行くぞっ!!」

「「「おうっ!!」」」

「行くぞっっ!!!」

「「「おうっっ!!!」」」

見ろよ、あっちのリーダー、ジョージなんてえらく燃え上がってるぜ。ここで燃えなきゃ、男の数には入らないだろうよ。なあリーダー。


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