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探索ステージを使った訓練

ブックマーク登録ならびにポイント投票誠にありがとうございます。作者ますますの励みとさせていただきます。毎回同じ文言ですみません。

 みなさんお久しぶり、リュウです。私たち『嗚呼!!花のトヨム小隊』は夏イベントに備え、少しでも活躍できるようにと特訓に入ります。格下ではあるかもしれないが、まずは探索のファーストステージ、大量のゴブリン先生、さらには野良の相撲取り、そして私たちの邪魔にしかならないプルプルをキルしまくることで、少し場馴れをしておこうという次第。


「テーマはどのようにする、トヨム?」


 われらが小隊長のトヨムに方針をうかがう。


「そだね、まずは二人一組ツーマンセルの確立。とりあえずその連携が取れてないと、生き残りすら危ういからね」

「具体的に言うなら、ツーマンセルで死角を無くす、もしくは持ちこたえるということかな?」

「そう、まずはキルを与えない。今回の訓練では死角を作らない、ってことで取り組んで行こう

よ」

「ではツーマンセルの編成は、同じ役割同士でいきますか、隊長?」


 シャルローネさんだ。トヨムはうん、とうなずく。


「一応アタイの考えでは、セキトリとマミのタンクで押し込んで、いつものように旦那とカエデが道化師役。トドメはアタイたちが刺すって方針で行きたいんだけど、物量を考えたらまた旦那頼みになっちゃいそうでなぁ……」



 ガリガリと短い髪を掻くトヨム。その頭に私は、ポンと手の平を置いた。


「考えてくれたんだな、トヨム。ありがとう」


 トヨムは鼻をこすって猫のようにエヘヘと笑った。


「まかせておけ、無責任に言わせてもらうが、私と士郎先生がいたならば、絶対にヤグラは奪わせない」

「だけど旦那、敵は千人から押し寄せて来るんだぞ? 大丈夫かい?」

「だったら千回斬るだけだ」

「はいはいはい! 小隊長! その千回の中には、私の一撃も入っています!」


 なにかと競うように、カエデさんがアピールした。しかしトヨムはニッコリ。


「あぁ、そうだな。旦那には頼もしいカエデがいたんだっけ? 頼りにしてるぞ、カエデ♪」


 トヨム、ニッコリ笑ってカエデさんに言ったな? ということは、お前カエデさんにこれっぽっちも期待してないんだろ? だが私は、ここでトヨムのリーダー気質を見た。カエデさんの手をキュッと握り、潤んだ瞳で青い瞳を見据える。


「旦那のこと頼むよ、カエデ……」


 私は公務員、私は道場主。だからここは若いトヨムを評価してあげよう。リーダーとは、他人に部署を任せられる人間だ。トヨムはいま、私の身柄をカエデさんに託した。まかせることにしたのだ。こうしたことができるのが、リーダーなのである。職場で部下を持つ私としては、トヨムの行動を評価したい。

 まあ、愁嘆場にも似た場面は終了。第二回、探索出撃である!


 前衛はセキトリとマミさん。控えるのは私とカエデさん。見事なまでのツーマンセル。後方ではトヨムとシャルローネさんが一組。うん、トヨムの思い描く見事な作戦成就を、成してあげたいな。




 では、いざ森の手前。草原へ侵入。静かに、刺激しないように前へ進む。いかにこの訓練の方針が決まっていたとしても、前回のようなゴブリン総動員は私たちも御免だからだ。


「止まれ、セキトリ。そこにいるぞ」


 私の前のセキトリの、陣形外側を私は指差す。するとカエデさんがそそそと寄り添ってきた。恋人の仕草ではない。強襲準備のためである。飛び込むつもりだ、カエデさんは。そうすることによって敵の戦力を測ってくれ、というのだ。


 冗談じゃない。彼女には生存してもらって、より多く働いてもらわなくてはならないのだ。

そのためには、私がカエデさんを守る! 後方から、「ワオ♡」という声が聞こえてきたが、今回は無視。とりあえずカエデさんを背中にして、私はグイと前に出る。


 私とカエデさん、前に出る。ついてこなくてもいいのに、こっそりとそう思う。彼女の実力、私の実力。それを比較するとカエデさんは足引っ張りでしかないのだ。私の相棒を務められる男……。頭脳の辞書をパラパラめくると、士郎先生の顔しか思い浮かばない。

 仕方ない、カエデさんにはキルポイントを献上しよう。私は防具剥ぎに専念する。


 だが、ゴブリンは防具など着てはいなかったで御座るよ。

ならばと私は小手やスネを狙う。少しでもカエデさんのポイントを上乗せするのだ!

 二頭三頭と姿をあらわすゴブリンだったが、私たちが第一条件でもクリアしたのだろうか。急に出現数が五頭に増える。


「よし、ここはタンクの出番ぞ! 続け、マミさん!」

「よし来た、オヤカタ!」

「儂ぁセキトリぞ!」


 相変わらず変なところで息ピッタリ。数で押してくる敵を火力で押し込むタンク役二人。


「ここは一度、アタイたちがフォロー! 行くぞ、シャルローネ!」

「ほい来た、小隊長どの!」


 トヨムとシャルローネさんで、タンクが囲まれないように両翼を固める。自然と私たちは後衛に回ることになった。周囲警戒、とりあえずゴブリンの群れが私たちを取り囲む気配は無いようだ。


「それにしてもトヨム! 相変わらずえらい数じゃのう!」

「それじゃあセキトリ、一度後退しよう!」

「そうじゃのう! それがええのう!」


 ということで、私とカエデさんがタンクと交代。前衛に回る。セキトリたちは一旦後退。私たちが戦闘不能のゴブリンを大量生産している間に、トヨムたちも後退した。

 私とカエデさんも転身、その背中を守ってくれるのは、ひと当たりしてゴブリンを怯ませてくれるタンク二人だった。



 距離を置いて、ゴブリンたちと睨み合い。


「よし、全員無事だな? それじゃあトヨム、ここからは小当りに徹して二人一組の訓練をしてみるか?」

「二人ずつゴブリンに当たってくんだね? 誰から行く?」


 誰から行く? と言っておきながら、トヨムの目はシャルローネさんをとらえている。そしてシャルローネさんの革兜に、ピョコンと犬耳が生えた。だけじゃない、尻尾まで生えてブンブン振っている。


「ま、当然アタイたちだよな」


 なにがどう当然なのかは知らないが、トヨムとシャルローネさんのヒットマン・タッグが前に出た。私たち「チャールズ・チャップリン」……道化師役は、いざというときの救助班だ。いつでも出られるように備えておく。


 この二人は面白い。長得物で間合いは取れるが回転力で難のあるシャルローネさん。回転力は抜群だが、間合いの取れないトヨムという、言わばデコボココンビなのだ。しかし、シャルローネさんは上手くなっている。突き技を覚えて細かく嫌がらせをして、ゴブリンを近づけないのだ。



 そしてトヨム。こちらも間合いを潰す弾丸ダッシュ。そして落ち着きの無いサイドへの動き。一対一の回転力だけでなく、戦場における立ち回りを吸収しているのだ。


「二人とも上手くなったな。もう単純なヒットマンじゃ無いぞ、これは……」


 思わず夏イベントへの期待が高まってしまう。

 そして十分なアタックポイントを稼いだところで、タンク二人に交代。セキトリとマミさんの登場だ。この二人もセキトリの長得物に、マミさんの双棍と、長短織り交ぜなタッグ。なまじ突進力と火力があるので、そこに溺れないように立ち回るのが、今回の鍵と言えよう。


 まずはセキトリの突進。当たるを幸い右に左にスパイク付きの昇り龍を振り回す。マミさんは後ろに続いている。そしてセキトリが立ち止まるや、群がる敵に素早い棍棒の連打。


「チーン! チーン! チーン!」

 いや、マミさん……。たしかにそれは物打ちを効かせるコツなのだが、嫁入り前のお嬢さんが連呼していいものじゃないぞ。

 突き、打ち、ゴブリンを近づけないセキトリ。しかし数で押してくる敵にはマミさんが対応。こちらのタッグもまた、上々のデキと言えた。


 さあ、そうなるといよいよ私たちの出番だ。


「さあ、リュウ先生! いよいよ私たち、エンタツ・アチャコの出番ですよ!」

「道化師役、に引っ掛けてるのかな? ボケるにしても方向性がシブすぎだぞ、カエデさん」



 この娘のセンスは置いておくとして、私たちの動きは「道化師役」というにはあまりにもシブ過ぎる。ピシピシと取る欠損部位ポイント、そしてキルポイント。そこだけ見れば華々しいものだ。しかし、渋いのはカエデさんの立ち回りだ。


常に先回り先回り、私の背後、右左にポジションを取って、ゴブリンに付け入る隙を与えないのだ。おかげで私の動きも悠々としたもの。ひとつ打ち、二つ打ちしてポイントを稼ぐことができるのだ。


「しかしまあ、カエデもかいがいしいねぇ。まるで長年連れ添ってきた熟年夫婦だよ」

「あ、小隊長もそう思います? カエデちゃん、絶対にいいお嫁さんになりますよね?」


 何を言ってるんだか、ウチの観客席は。というか、トヨムたちがいらんことを言うので、カエデさんの動きがギクシャクし始めた。顔は真っ赤、目も見開いている。


「トヨム、そろそろ戻っていいか? カエデさんの調子が落ちている」

「可愛いモンだねぇ、いいよ旦那。恋女房連れて戻って来て!」


 ということで、私たちは後退。しかしそれからカエデさんの調子が上がることはなく、今回はファーストステージ攻略を断念することになった。


うん、今回はトヨムとシャルローネさんが悪いな。


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