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令和御前試合 組み合わせ!

まずはおさらい。

メイン

ユキさん

忍者

白銀輝夜

トヨム

シャルローネさん

アキラくんの六人。



チャレンジマッチ

三条葵と有志の初心者たち。



中堅クラス

セキトリ

ダイスケくん

御門芙蓉

比良坂瑠璃

ナンブ・リュウゾウ

フィー先生

キョウちゃん♡



前座

ジョージ・ワンレッツ

爆炎くん

蒼魔くん

キャプテンハチロック

モニカ

ベルキラ



といった具合で選抜がされている。もちろん数の合わないクラスもある。ということで、あくまでこれは候補。増えることもあれば減ることもある。

では試合の仮組みだ。


前座、第一試合

ジョージ・ワンレッツ対爆炎


この一戦では二人の勢いに期待している。なにしろ御前試合の開幕試合だ。ここでショッパイ試合を見せる訳にはいかない。陸奥屋一党もまほろばも、これだけ勢いのある集団に育ったぜ、大将!

という試合を見せなくてはならないのだ。


第二試合

モニカ対ベルキラ


ここで早くも女性陣、パワーのベルキラさんと技巧派のモニカさんで競ってもらう。実はモニカさん、社会人枠の体格でありながらかなりの童顔。故に大きなお友だちの中ではなかなかの人気らしい。この試合で観客のハートを別な意味でグッと掴んでもらいたい。


第三試合

蒼魔くん対キャプテンハチロック


イロモノである。……ゲフンゲフン、失礼。ギミックレスラー同士の対決としておこう。こういった試合はやはり前座ならではと私は思う。ただし、興行としては大変に重要な役割を担っている。こうしたギミックマッチが特別感を演出するのであって、ひょっとしたらこの一戦が御前試合のMVPを取るやもしれないのだ。


「まずは前座が選考通りに決まったな」

翁が言う。

「では次のカードを……」

第四試合、ここから中堅クラス。

「まず、どっちを中堅のメインに据えるかだ」

翁が問題を提起する。ダイスケ対セキトリをメインに据えるか、キョウちゃん♡対ナンブ・リュウゾウをメインに据えるか?

前座のメインは男子同士の一戦で締まった。翁としては男子の試合でそれぞれのクラスをキメたいようである。

私は特別に男子でなくては、という思いは無い。しかし翁のチョイスしたメンバーに異論はまったく無い。

「俺は巨漢対決を推すかな」

士郎さんはダイスケ・セキトリの駒を並べた。

「私も同意見です。やはりヘヴィウェイトの対決は、見所満点ですから」

「前座は男同士の試合から始まって、女へ移って男で締めた。ここは予想を裏切って、男試合を二つ並べちゃどうでぇ?」

「ニクイ演出かと」

さすが翁、攻めのマッチメイクだ。

「となると、その前段で女子試合ですが……ひとり足りないですな」

中堅クラスは残りが御門芙蓉、比良坂瑠璃、フィー先生の薙刀トリオ。

「そうだな、リュウさん。これまで似たような得物同士の戦いが続いている。ここいらで異種試合感を出してみたくないか?」

それだ。

御門芙蓉と比良坂瑠璃は同じまほろばのメンバーなのでこれを対決させるのはどうかと思う。となると、どちらかがフィー先生と対戦。どちらかが新選抜の選手と対戦することになる。では、その新選抜は誰か?

「意表を突いたマッチメイクを許されるなら……」

私は御剣かなめの駒を入れた。

「おいおい、そりゃ奇手、いや鬼手だろう? あのお姉ちゃん、メインイベントメンバーをごぼう抜きするくれぇに強ぇぜ」

「……なりませんか」

「第一、あのお姉ちゃん抜いたら誰があの大将のお側仕えするんでぇ?」

「……やりたくありませんな」

「同じく」

「オイラだって御免だぜ」

ということで、長考。鬼将軍のお茶当番を三人が拒否した、ということで私の案は没。

「確か……タヌキの娘がいなかったか?」

士郎さんが言う。

確かに、トヨムにまとわりついていた、ケモ耳のお嬢さん方がいたような気がする。

「どうだろう? 彼女たちの誰かをぶつけて、その指導を小隊長に任せては?」

「人身御供のようで気が引けるなぁ……」

ここで初めて、私は三人の仲に異論を挟んだ。

「いや、リュウ之助。なにごとも経験だぜ。負けるとわかっていても尻尾を巻かない。そういった精神は人生に必要なものだと、オイラ思うぜ。ひとつここは、チャレンジマッチを飛び越えたジャンプアップマッチってのぁどうでぇ?」

「翁、そのタヌキに金の一手を授けてくださいますか?」

「そうだな、言い出しっぺとしちゃあ、おかっぱでも馬のケツでも勝てる手は授けるぜ」

比良坂瑠璃にも御門芙蓉にも勝てる手を授ける、と言う。ゴクリと私は喉を鳴らした。士郎さんも唇を厳しく固めている。

弱者が強者を凌駕する一手を授ける。翁はそう言った。

緑柳翁、齢七十。剣歴は五十五年と聞く。つまり十五の年に古流剣術に入門。つまり西暦1967年の入門。昭和四十二年である。この年がどのような意味を持つか?

終戦から二十二年しか経っていないということだ。

終戦で二十五歳の若者が、五十前の現役バリバリ。沖縄決戦で日本刀を振り回して、アメリカ人(米兵とは言わない)を斬って斬って死んでいった者を知っている世代。爆弾を抱えた戦闘機でアメリカの空母を目指して突っ込んでいった者を同期の桜として持つ世代。

血と泥と栄光と屈辱を噛み締めた世代を、師匠として仰いでいたのが翁である。その薫風を受けた翁が、どのような一手をタヌキに授けるのか?

興味はある、しかし興味を持ってはいけないと理性は叫ぶ。だが私の亡くなった師匠も、最後の最後にすべてを投げっぱなしに授けてくれた師匠も、翁と同じ世代なのだ。

聞きたい、学びたい! これは修行者としては当然の欲求だろう。

「して翁、その一手とは?」

士郎さんがズバリ訊く。

翁、答えて曰く。

「すべてを攻撃、必殺に絞り込むのよ。それ以外に、自分より強いやつを倒すほうほうがあるのけぇ?」

つまり、特攻だ。撃ち落とされることを恥じるな、征かぬことを恥じよ。初心者にこれを仕込まれたら、私とて危ないかもしれない。というか、怖い。

命も名もいらぬ、ただ一命を賭して一事を成すのみ。西郷さんがそうだったか、そういったバカが私には怖い。

だから私は、翁に訊く。

「それを授けて、タヌキはどのような人生を送ることになりますか? その教えは、確実に人の人生を狂わしますよ?」

「やるかやらねぇかは、ほんにんの決断だろ? だけどリュウ之助よ、お前自分の人生に後悔はあんのかよ?」

ある訳が無い。私は私が好きだったり嫌いだったり。だが師より授かった技に、後悔は無い。

人を殺めるだけの技術だったかもしれない、だが私はそれを学ぶことで慎みを覚えた。師を持つことで謙譲の美徳を学んだ。そして師を失ってまだ、学ぶことのできる翁を得た。その教えを理解する礎を得ている。嗚呼、喜ばしいかな。

「だったらタヌキに教えてもいいじゃねぇか。俺の見るところ、お前ぇが心配しなくてもいいくれぇ、タフだぜ」


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