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無双流対草薙流 その変わり種の闘い

やはり主人公 リュウ視点

「リュウ先生、頑張って来いよ! 守りには私がいる!」

フジオカ先生の無線が入った。大変に力強い言葉だ。

「頑張ってください、リュウ先生! 私たちも緋影さまをお守りしますから!」

茶房店主葵さん、切なる乙女の願いだ。

「頼みましたよ、リュウ先生。非力な私たちに代わって、まほろばを勝利へ導いてください」

迷走戦隊マヨウンジャーのマスター、マミヤさんの言葉。

「がんばれ! がんばれ! まかせたよ、リュウ先生!」

そしてみんなの声が、私の背中を押してくれた。

「敵陣接近! わたくしどもも打って出ますわよ!」

双方矢印陣形、防御などまったく考慮しない態勢でぶつかり合う!

「こなくそっ、やっちゃるわい!」

狼牙棒戦車隊、セキトリの声が聞こえた。が、まずはその戦車隊が全滅した。

「狼牙棒戦車隊、全滅っ!」

報告が上がったが、戦場にいればそんなことはすぐわかる。

「マミさんシャルローネさん、行くぞっ!」

「はいな!」

「小隊長、リュウ先生のそばに! 戦車隊がいないなら、そこにいる意味無いから!」

「わかった! 旦那、いまアタイが行くぞ!」

「カエデさん、草薙士郎の護衛は誰かっ!?」

私が訊くとカエデさんは即答。

「忍者とユキさんです!」

畜生、草薙士郎め。確実にこちらを屠りに来たか……。いや、あれこれ考えていて勝てる相手ではない、草薙士郎は。私もひたすら刀を振るうだけだ。

「トヨム小隊とリュウ先生による突撃! チームジャスティス、全滅! 槍組……残り二…いや、全滅! 鬼組フィー先生、死亡!」

負けないぞ、草薙士郎。狩り勝負というなら、和田龍兵。負けるものではない! 貴様と兼定、私と胴田貫。どちらが上か勝負だ!



剣士のそばに付く者の視点

シャルローネに背中を押された。

「ほら小隊長、やっぱりリュウ先生のそばには小隊長がいなくっちゃ♪」

「え? アタイ……うん……」

そうだな、旦那と一番長く付き合いがあるのは、アタイだしな。でも、旦那にとっちゃどうだろ? むしろ足手まといにしかならないんじゃないの?

そう思えるくらい、旦那は斬って斬って斬りまくっている。斬りながらだってのに、アタイよりも速い。旦那の足はアタイよりも遅いはずなのに、それでもついていくのがようやっと。

そしてアタイは、そこで神話の世界の戦いをみた。

なにものかに背中を押される旦那。容赦なく襲いかかる敵。それを剣のひと振り、ふた振りで死人部屋へと送ってしまう。

「さすがは剣豪、リュウ先生。しかし俺も、安々とここを通す訳にはいかんのだ!」

海賊が顔の前で剣を立てて、決闘の作法。アタイも相手をしたことがあったけど、この海賊は実力派だ。いよいよネームドと呼ばれるに相応しいプレイヤーとの対決。それでも二合打ち合っただけで、勝負はついた。今日の旦那は強い、今日の旦那は絶対に負けない!

そう信じて見ていられる、揺りかごの中の赤ん坊よりも、安心して見ていることができる強さだった。

何が剣士をここまで強くさせるんだ? 不思議なまでの強さだ。まほろば軍を振り返る。見送ってくれた仲間たち。信じてくれる仲間たち。

そうだな、「がんばれ!」「しっかり!」そんな簡単な言葉でしかなかったけれど、それが今の旦那には力になっている。

だけど、一人ぼっちだね旦那。まほろば軍を代表して陸奥屋一党を全滅させるとはいえ、たった一人で戦いを挑むなんて。ンなこと言ったら旦那のことだ。「私の背中を押してくれる、大勢の仲間が見えないか?」とか言い出しそう。「私が戦うのは、後進の未来を切り拓くためだ」とか。格好良すぎるよ、旦那。それでこれだけの斬殺数なんだから、言ってることに根拠あり過ぎ!

「リュウ先生、急いでくださいまし! 士郎先生はまもなくまほろば本陣へ到着しますわ!」

「心配いらないよ、出雲鏡花。旦那ももうすぐ……よし、ダイスケさんを斬って陸奥屋本陣だ!」



リュウ視点

遂に切り拓いた。陸奥屋本陣への道。

「出雲鏡花、まほろば軍はどれだけ残っている」

訊いてみたが、返事は無い。仕方ない、マップを開いて自分で確認だ。

するとまほろば本陣に前に忍者、ユキさん、草薙士郎の三人。そして私とトヨムが、陸奥屋本陣前に。

勝負は決していない。そして死に帰りの者たちが、本陣の後方にそれぞれ控えていた。

前線へは出て来ないのか? いぶかしんでしまう。

いや、それぞれの軍が本陣決戦に自信あり、ということか?

とはいえ、まほろば軍本陣は御門芙蓉を先頭にした女の子たちだけだ。それだけではあの三人には敵うまい。

「トヨム、本陣に加勢してやってくれ。お前がついていてくれれば、私も安心できる」

「あぁ、わかったよ旦那」

渋々でもなく、かと言って喜んで、でもなく。複雑そうな含みを込めて、トヨムは本陣へと走った。

さて、そういうことで……。

敵陣陸奥屋に向き直る。目標は鬼将軍、それを囲む美人秘書。執事にメイド、若い参謀くん。そして甲冑に十字槍の老人。

「……誰から来る……?」

私が言うと案の定、十字槍の老人が出てきた。甲冑と言っても西洋式のフルプレートではない。和甲冑である。

「かかってこい小童! わが槍の錆にしてくれようぞ!」

威勢は良いがしかし、申し訳ない。先輩にこのようなことを言うのは申し訳ないのだが、残念ながら古流というには骨董品に過ぎない代物だった。小手を斬り内股を斬り、鎧の隙間を突いた。

「次は……?」

「さすが名うてのリュウ先生。御名に恥じぬ手練れ……」

もうか? まだ鬼将軍を守る手勢は残っていように、早くも美人秘書御剣かなめが登場した。

「懐刀が早速の登場とは、残る者たちに自信ありというところですかな?」

「さて、それはどうでしょう?」

美貌に微笑みをたたえる。パンプスは脱がない、スーツ姿もそのままだ。得物らしい得物といえば、小脇に抱えた秘書ノートだろうか?

刹那、手裏剣が飛んできた。これは足でかわす。そこへ飛び込んでくる御剣かなめ、手には手裏剣の巧無が握られていた。これを刀の棟で受けると、彼女はすでに間合の外。

やるな、今の今までその正体を明かしていなかったかと思うが、彼女もまた忍びの手の物語なのだろう。巧無を懐にしまうと、今度は逆手に小刀を抜いてきた。

ここで抜いて見せつけるということは、陽動かな? おそらく本命は後ろ回した左手。

王国の刃で得物は二つに限定されているので、おそらくは小手の防具を利用した無手の打ち。そうでなければ懐にしまったと見せかけた、巧無が握られている。

私の構えは中段、少しでも間合を欲張っておきたい。

しかし意外なことに、御剣かなめは刃を納めた。

「よくぞリュウ先生を相手に時間を稼いでくれた、かなめ君」

深いバリトンボイスが響く。

「リュウ先生、道を開けてはくれまいか。これより私は、天宮緋影と一騎打ちを所望するのでな」

鬼将軍であった。そしてその姿を見て、私の下アゴは地面に落っこちた。

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