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初日がそろそろ終われるだろうか?

眼鏡一本三編みCカップのユキさんが失態を冒す一人称

戦闘終了。リュウ先生と父である士郎先生の一騎討ち、結果は両者相討ちの引き分け。なんとなく想像はついてたけど、やっぱり引き分け。運営からのアナウンスが入る。災害に認定されている二人の勝負は、相討ちの引き分け。これで総員観戦のスペシャルマッチは終了。これよりイベントを再開します、と。

ビッグマッチを最前線スペシャルリングサイドで観戦していた私は、少しだけほうけてしまっていた。それぞれの知識を持ち寄っての解説。それでもまだ解けない達人の技術。見応えは満点。

だから試合再開のカウントダウンは知っていたけれど、周りがどう動いているかまで気をまわしていなかった。

だから、カウントゼロで腰の刀に手をかけたとき、トヨム小隊長と白銀輝夜さんがなにをしていたのか、確認していなかった。

「悪いな、ユキ」

耳元でトヨム小隊長の声。抵抗することすら許されず、身体を仰向けにのばされてしまった。なにをされているのか、いや、これは柔道の裸絞め?

それもいわゆる胴締めチョークスリーパー。ようやくそれだけ理解したところで、今度は輝夜さんの声。

ユキどの、御免!

あ、輝夜さんが抜いた。私も抜かなきゃ……。でも私は仰向け、刀を抜くのに鞘引きしても、地面につっかえて鞘が引けない。

輝夜さんの抜いた刀は私の胸に吸い込まれて、私、死人部屋送り……。



白銀輝夜

「やったな、輝夜! それじゃあアタイは狼牙棒部隊の護衛に帰るから!」

「私はまだかかってくる鬼組を相手にする。まかせましたぞ、小隊長」

士郎先生、撤退。若き剣豪ユキどの、撤退。キョウどのはカエデ中隊長が抑えている。残る鬼組メンバーは、忍者にダイスケどの。そしてフィー先生だ。この中で与しやすきは……ダイスケどのだな。彼は大柄アバターを用い、大力の士である。しかしその怪力も、常識の範疇。力士やレスラーという本職に比べれば、やはり甘いところがある。技の通じない力技ではない。

確実に倒すならば、ここだ。

「咲夜、いるか」

「いま忙しいわよ!」

なんだ、ヤッ〇ラン副長のようなことを言うな。見れば新兵複数に襲われて、防戦を強いられている。どれ……。

咲夜を苦しめる新兵のひとりから、ポンと小手を取る。このような調子で、長得物の敵は、まず小手を落とす。そして回復をされないうちに、もう片方の小手も取っておく。

「さ、咲夜。これでもう大丈夫だろう」

残る剣士を、咲夜は苦もなく斬って捨てる。

「ちょっと輝夜」

咲夜が可愛らしく頬をふくらませた。

「あんた忍者のときには激怒したのに、新兵相手には怒らんのね?」

「新兵が刃を向けるのと、忍者が刃を向けるのとでは訳が違う」

「何がどう違うんよ」

「新兵に咲夜は斬れん。しかし忍者にはそれができる。さらに言えば」

「さらに言えば?」

「忍者には『あわよくば可愛らしい女の子と仲良くなろう』という下心がある」

それを聞くと咲夜は、フッと訳知り顔で微笑んだ。

「仕方ないじゃろ、忍という文字には下心が付き物なんよ?」

誰が上手いことを言えと。まあいい、咲夜が健在ならば問題は無い。

「では咲夜、これより陸奥屋鬼組を迎え撃つ。まずはダイスケどのを討ち取ろう」

「えっと、鬼組で残ってんのがダイスケさんにフィー先生。それと忍者か……、まあ輝夜としては無難な選択じゃね」

「そのココロは?」

「忍者は逃げたし、フィー先生みたいな頭がイイ人、輝夜は苦手じゃろ?」

「咲夜は私に容赦が無い……」

「ンなこと言うとったらホラ、一時方向にダイスケさんよ?」

「おう、まかせておけ!」



マミさん

はいはい〜〜♪ ここまで全然出番の無かったマミさんですよ〜〜♪

シャルローネさんはぁ、ナンブ・リュウゾウさんの援護にまわってしまい、リュウ先生は士郎先生と仲良く死人部屋。カエデさんは中隊をひきいているし、トヨム小隊長は戦車隊の護衛任務。つまりマミさんは太平洋一人ぼっち、本陣に控えていたのですが参謀長なども忙しそうで。これはもうどこかの戦場へ舞い降りてもかまいませんよね〜〜?

なにしろリュウ先生と士郎先生の一戦、東西両軍仲良く観戦していたものだから、戦闘再開となった瞬間からもう大乱戦。芋の子を洗うような混雑ぶりで、何が何やらもう無茶苦茶というありさまです♪

それでもマミさんは簡単に撤退なんかしたくありませんから、できるだけお味方さんの多いところへ出向きましょう!

両手のトンファーは前腕を守るような形で、戦場を遠足気分で横切ります。ときどき東軍の兵隊さんたちが襲いかかってくるけれど、敵の得物はたいていひと振り。マミさんは両手が使えます。右手で防御したら左手でお腹を突く。左手で受けたら右手で突く。誰にでもできる簡単なお仕事です♪

「どうも〜〜♪ マミさんが応援に来ましたよ〜〜?」

まずは鬼神館柔道のみなさん方。手にした鎖鎌を振り回すでなく、相手を巻き取ったり鎌で引っ掛けて柔道技に持ち込んだりと、あくまで柔道として奮闘しています。

これは頼もしい、マミさん絶対に撤退はしなさそうですねぇ♪

「おう、みんな! マミさんが応援に来てくれたぞ! いいトコ見せて男を上げろ!」

フジオカ先生の声に、みなさん「応っ!」と元気な返事。ただでさえ強い柔道が、さらに激しく荒っぽくなりました。

「しっかしリュウゾウの奴もついてねぇな、折角マミさんが来てくれたってのに、離れ小島で新兵相手かよ!」

「普段の行いが悪いんだろ、っつーかあいつは女の子に縁が無い一生を送るだろうさ!」

「そうだな、あいつ女の子とデートするのに、ジャージ着て来そうだもんな!」

なにやら男の子たちは楽しそうにお話してますけど、あくまで激闘中ですよ? それにしても、何故ここでナンブさんの名前が出てくるのでしょう?

世界はマミさんに理解できない、ミステリーに満ちあふれています。



東軍一般プレイヤーの嘆き

俺たち、豪傑格。そこそこヤル腕前って自認している。実際、武道経験者で固めた俺たちをチームは、不正ツールなんか使わなくても勝率は六割強。つまり決して弱くなんかないチームだった。それがすでに、二人も死人部屋へ送られている。

敵対するチームは、鬼神館柔道。新兵格のクセして、これが妙に強い。俺たち界隈では扱い困難とされる鎖鎌を使い、鎖分銅で絡め取っては柔道技でしとめてくれる。

「おう、佐々木。あいつらえらく強いぞ、どうする?」

全員観戦が義務付けられた剣豪同士の一戦。それが引き分けに終わった瞬間には、俺たちすでに新兵格の目の前に陣取っていた。試合再開と同時にキルを取りまくる予定だったのに……。

俺たちは六人、敵は五人。数的有利なはずなのに、すでに二人がやられていた。

どうする? と訊かれても、正直どうしようもない。と、そんときだ。運命の女神が現れた!

豪傑格ではあるけどDカップ!(佐々木くんはDTです。というか、女性のカップ数については詳しくありません。ついでに言うなら、マミさんのバストはそんなモノでは済みません)

見た目ではトロそう! しかもしかも、ショートレンジもしくはクロスレンジ武器のトンファーしか武器は無い!

「よし高橋、あの女の子……マミさんを倒そう!」

「そうだな、女の子に恨みは無いが、ここは目標変更だ!」

するとピンク髪のマミさん、こちらに気がついたようで。

「おやおや〜〜? もしかしてマミさんを狙っているんですか〜〜?」

トロくさい声で訊いてくる。

「悪いね、こっちも必死だからさ」

「そうですよね〜〜。でも今はのマミさんを狙うと、大変ですよ〜〜?」

構えた得物を、思わず引いてしまう。ものすごい迫力だ。そう、ニヤリと笑うマミさんの背後に、柔道着の男どもが腕組みして並んでいたのだ。

あ、これ死ぬやつだね♪



軍師ヤハラ

「うむむ、なかなか思うようにはならんものだな」

我らが総裁、鬼将軍がウィンドウに開かれたマップを眺めて唸る。

「総裁、それは違います。いま現在、士郎先生とまほろば軍リュウ先生の一戦のおかげで東西全軍が混沌の戦闘に入っております。混沌の帝王鬼将軍としては、これは大勝利なのでは?」

「……うむ、確かにそうだが」

納得するんかい、オッサン。

「しかしだね軍師どの、この混沌は私が生じさせたものではない。混沌の帝王、大波乱の帝王としては、登場するだけで場が大混乱する。そういうものではないのかね?」

「おっしゃる通りです、総裁。ですがいましばらく、まだ合戦は初日。総裁ほどの巨人が登場するには充分な暖機運転が必要となります。そうしなければ……」

「そうしなければ?」

「総裁の毒に当てられて、大半のプレイヤーが二十四時間以内に死亡します」

「猛毒だね、私は」

これで機嫌が上向いてくれるのだから、「この男、実生活は大丈夫なのか?」と心配してしまう。

「とにかく総裁、初日の合戦は間もなく終了します。おそらくあちらの軍も隊を整えて来るはずです。初日終了の前に隊をまとめておきますので……ん?」

おかしい、陸奥屋とまほろばは、最前線で脇目もふらずに激突しているはずだ。それなのに陸奥屋には、陣地の制圧ポイントが入っている。……誰だ、まほろばに向かわず陣地を占領している奴は?



天誅戦隊カツンジャーリーダー ビッグスワン

なに? どうしたこと? せっかく陣地Aを占領してるっていうのに、なんで誰も私に挑んで来ないのよ!?

……これはアレね、みんな私の恐ろしさに尻尾を巻いて逃げ出してるのね? さすが私! 私・ザ・グレーテスト!

全プレイヤーは私を讃えるがいいわ、ビバ・ビッグスワン! ハラショー、ビッグスワン! 世界はキミのためのものだって!


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