実在友人、出雲鏡花プレゼンツ。開幕前夜〜しょーもないオッサンたち〜……なんと前編!
今回もまた実在友人出雲鏡花のネタ出し。ですが口頭によるネタ提供でしたので文責の一切は作者にございます。では、どうぞお楽しみください。
間もなく夏イベント2022開幕!
その準備と練習に明け暮れるまほろば同盟と陸奥屋一党。そんな忙しい最中、いかがお過ごしでしょうか、カエデです。ジットリとした梅雨気分を室内で満喫して、次に控える焦げつく真夏の太陽など見向きもせず、『王国の刃』へ駆け込むようにしてイン。
少女の真夏、ひと夏の経験などどこへやら。すっかりネットゲーム三昧な日々を過ごしております。そんな日々の中、しっかりした大人に分類されるリュウ先生が、なにやらソワソワと。まるで牛丼店を最速で退店するユーチューバーのおじさまみたいに、なにか言いたげにしていました。はて、なんでしょうか?
ゲームにインしていながら、トイレにでも行きたいのでしょうか? するとリュウ先生、決意の表情で私に近づいて来ます。
あぁ、待ってリュウ先生♡ せめて告白は高級ホテルのレストランで、夜景と庶民を見下しながら……。
「どうしたんだい、カエデさん? まるでアメーバかゾウリムシみたいな動きをして。もしかして……また便P……」
「あぁっ! ダメよ駄目だめ、カエデはもう少しだけ乙女でいたいのにっ!」
「あの、カエデさん。具合が悪いならログアウトした方がいいよ?」
「はっ!!! 私としたことがっ!! ……………………コホン。どうされましたか、リュウ先生?」
「いや、どうしたのか? は私のセリフ……」
「ど・う・さ・れ・ま・し・た・か、リュウ先生!!!!」
乙女の胸の内は、神聖にして清らかなもの。いかにリュウ先生でも、いえいえリュウ先生なればこそ、除き見厳禁です。
するとリュウ先生、少し言いにくそうに。
「いや、カエデさんは狼牙棒とかトンファーとか、いろんな武器をみんなにアドバイスしてたね?」
「はい、リュウ先生には木刀もあれば同田貫もあるし、槍も鎖鎌も使える武器はすべて揃えているから。斡旋はしてませんでしたね?」
「そこなんだよ、それ。私の持ち物はどうもこう、実用一辺倒というか華が無いとか、ねぇ?」
「でもリュウ先生の場合、活躍そのものが華ですから」
「いや、なにも所持即実践という訳じゃないんだ。ただなんというか、こう……」
私は子供、リュウ先生は大人の中でもベテランの部類。言いたいことをズバリとは言い当てられないけど、なんとなく察することはできました。
「ん〜〜……あれが良いかな? それともこっち?」
業界では『武器商人』とか『死の商い者』とまで謳われたこのカエデちゃん。武器倉庫の帳面をペラペラとめくって吟味します。リュウ先生に似合いそうで、それでいて意外な得物っと……。
「あった、コレこれ! リュウ先生、これなんていかがですか?」
武器帳面のイラストをタップ。未来の世界の猫型ロボットが、未来の道具を取り出す効果音のように、ピロリロリ〜ン♪
と。その得物を紹介する私の声は、もちろんのぶ代ヴォイス。
私の取り出した得物は……。
「強力鉄扇〜〜♪」
「ほほう、これはおもしろい。真選組局長芹沢鴨も所持していて、肩コリの首筋をペシペシと叩いていた物だね?」
「はい、リュウ先生♪ ですがこれは標準サイズ。イベント前のストア開放で、こんなブツもあるようですよ?」
有り余っているゲーム内通貨をペシッと払って、オープン品をタップ。もちろん大〇のぶ代ヴォイスでおすすめ品のネームコール。
「鉄扇ヴァージョン師弟出馬!」
「おぉ、要から先端までの長さが二尺ほどありそうだね!」
商品を実際に手に取ってみると、ズッシリと重たい。乙女にとっては泣いてしまいたいくらい。
そんな鉄扇を薦めるのに、カエデちゃんからちょっぴり意地悪。
「すっごく重たいですけど、きっとリュウ先生なら軽々と扱うんでしょうね♪」
するとリュウ先生、要を留めた鉄紐に親指を通して右手に納めちゃう。
「うん、超寸といい重さといい、実にシックリと来る。……うん、さすが匠のカエデさんだ。相談して良かった」
そう言ってリュウ先生は鉄扇を開いてハタハタと扇いで笑う。
「だけど女の子にお金を払わせる訳にはいかない。これはカエデさんの死の商人倉庫にしまっておくといい。なに、私は私の金子で購入するから」
そう言ってリュウ先生は私の目の前でスペシャル鉄扇を購入。私としては「はあ、そうですか」とちょっぴりテンションが落ちちゃう気分。
しかし油断するなかれ、読者諸兄!
リュウ先生という人物は令和年間においても古流剣術を伝承する……ちょっとアレな人。まほろば陸奥屋講習会に鉄扇を持ってきてしまいました!
しかもまぁ、いつもの木刀でなくとも強い強い。指導員格のキョウさんユキさん、白銀輝夜さんもみんなみんな鉄扇で子供扱い。
さっすがー、シビレるーなどと喜んでいたのも束の間。緑柳師範がリュウ先生にアプローチ。
「おう、リュウの字。お前ぇイイモン持ってんじゃねーか」
なんとなく、どことなし、羨ましそうなその表情。そうですね、ここが発端と言えば発端だったかもしれません。いえ、坂本龍馬顔のニクイあいつの一言が発端なのか!
「いえね、『ウチのメンバーのカエデさん』にね、ちょっと選んでもらってですね」
「ほほう、そいつぁ自慢のタネになるな」
いやちょっと待ってください、両先生方。いま二重括弧を使いませんでしたか? そしてたかが鉄扇、自慢のタネとはどーゆーことでしょうか?
その答えが出たのは翌日。
私の得物、いつもの片手剣をひとり拠点で磨いて、その美しさにニヤニヤしていると、飛び込んできた頭痛のタネ。
「お願いカエデちゃん、なんとかして〜〜っ!」
ログインしてきた完璧超人、才色兼備なはずのシャルローネが縋りついてくる。
「ちょ、なになにシャルローネ! 刃物持ってんだから、危ないでしょ!」
闘技場でないしフレンドリーファイアも無いから、危なくなんかないんだけど、ついつい口走ってしまう。
「うちのおじいちゃん先生が、おじいちゃん先生が!」
「緑柳師範がどうしたっていうの?」
「カエデちゃんからプレゼントされた、リュウ先生の鉄扇!
あれを羨ましがっちゃって羨ましがっちゃって……『えぇのぅ、リュウの字ぁよぉ……若いお嬢ちゃんから武器プレゼントされて、鼻の下ぁ六しゃくも伸ばしてやがったぜ』……なんて、私の方をチラッチラッって!」
ねじ曲がってる。……事実がひん曲げられている。それが故意なのか悪意を持ってなのか、それは分からない。だけど『私が選んでリュウ先生がお金を払った鉄扇』が、いつの間にか『若くて可憐な乙女の私がプレゼントした』ことになっている。
「だからカエデちゃん、たちけてプリーズなのよ!」
こら、そこの完璧超人。あなた崩れるときはそこまで崩れる人間だったのね?
っていうか学級のみんなにも見せてやりたいわ。とりあえず噛りついたスッポンのように離れないシャルローネを、投げっぱなしジャーマンで引き剥がすと、事態を整理するためソファーに腰かける。
「始めるべ」
これが話し合いを開始する合い言葉。なにが起源でいつから始まったのかzそれは誰にもわからない。だけど混乱した事態を解決に導くための、重要な宣言だ。
今回の更新は短めではありますが、キリが良いところで引かせていただきます。後編にどうぞご期待を!