表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

218/724

カエデちゃんの実験室♪

はいどーもー! まだまだ続くカエデちゃん回です♪

ラブリーエンジェルとかあなたのハートにとかいうフレーズは、なんだかみんながいたたまれないような顔をするので、少し自粛していこうかと思っております……。

さてさて今回のお題は、シャルローネのメイスの一撃すら止めた、トンファーによる十字受け。これで超重兵器狼牙棒の一撃を止められるかどうか?

この実験に移ってみたいと思います!

「え〜〜……マミさんがやるんですか〜〜?」

「大丈夫よ、マミ。トンファーを所持してるのは、あなただけじゃないわ」

ということで、カエデちゃんトンファーバージョン! 完全無欠のロックンローラーに装備します。

ところが……。

「なにやら騒がしいと思えば、やはりトヨム小隊のみなさんか……」

おや? チーム『まほろば』の銀髪剣士、白銀輝夜さん。……だけじゃない、まほろばのみなさんと鬼神館柔道の面々まで。

「あぁ、そこで行き合わせてね。そうしたらなんだかステージが騒々しいじゃないか」

フジオカ先生が爽やかに微笑む。だけど細めた眼差しの行く先には……やっぱり狼牙棒。ていうか、早くその話題に移りたくてウズウズしてるのが分かっちゃう。

「えぇ、夏イベント用決戦兵器の実験をしていたんです」


「ほう、これがそうですか?」

なんてわざとらしく。だけどこの表情は私、見たことがあります。新車で自家用車を購入しようとしてるときの、ウチのお父さんと同じ顔。早く手にしてみたいって、期待値マックスな顔ですよね?

「なかなかどうして、これが面白い武器ですよフジオカ先生」

リュウ先生は両手で持って、刀のようにブンブンと振っている。

フジオカ先生もさっそくひと振り購入。日本刀のように振り回し、その感触を確かめたりして。……というか両先生、人間ですか?

もしかして私は今、『鬼に金棒』という場面をライブで見ているのではないでしょうか?

「どれ、俺もちょっと試してみっか」

両先生にできてオレにできないはずはない、とばかり小賢しいサルのナンブ・リュウゾウがしゃしゃり出てきた。途端に「よーし、みんな離れろーー」というフジオカ先生。

はっはーん。ナンブ・リュウゾウさん、あなた師匠から『こいつまだまだ未熟なクセに、分不相応なマネ始めるから気をつけろ』って言われてるんですよ?

その言葉通り、狼牙棒を振るや身体を持っていかれ、あるいは地面に打ちつけ。散々な成績でした。


だけどさすがはお師匠さん。フジオカ先生は快活な笑い声。

「リュウゾウ、お前はまだ手の内ができていない。柔はなかなかだが、剣には至っておらん。剣というのは力まかせではないぞ」

そう言って、長身美形の剣士。白銀輝夜さんに狼牙棒を手渡す。

「輝夜さん、手の内を意識してゆっくりと振ってみな」

と、これはリュウ先生からのアドバイス。

「では、御免」

狼牙棒に一礼して謙虚に構える輝夜さん。そうですよね、剣士たる者こうでなくてはなりません。そしてリュウ先生のアドバイス通り、ゆっくりとひと振り。ブゥンと軽い唸りが生じたのは、物打から落とすという『斬るための振り方』ができているから。その証拠に、重たい重たい狼牙棒を振っていながら、輝夜さんの姿勢はまったく崩れておらず、切っ先もピタリと止まっている。

「ん!?」と何かに気付いたような輝夜さん。「こ、これは……」ともらしてしまう。

「何か気が付いたかな、輝夜さん?」

問いかけるのはリュウ先生。


白銀輝夜さんは二度、三度と狼牙棒を振り、その勢いは増してゆく。だけどそれでも、切っ先だけはピタリ、ピタリと止められているものだから、どれほどの腕前かが知れてしまう。

……そう、……この輝夜さんもまた……人を斬れる腕を持っているのだと……。

見た目では大学生? それとも背の高い高校生?

とにかく大人びたところのある輝夜さん。一般女子、もしくはその他大勢に仕分けされる側としては、少々羨ましい存在。

その輝夜さんが、達人先生二人にご意見ご感想を。

「……素振りの稽古にはモッテコイと思います」

「この狼牙棒をそれだけ振れるってことは、それだけ基礎基本が身についてるってことさ。むしろ輝夜さんなら、普通の軽い木刀の方が稽古になる」

また、達人リュウ先生は素人には分かりにくいことを言う。どう見ても軽い木刀より、重たい狼牙棒の方が稽古に向いてるじゃないですか。

だけど達人は達人候補生にばかり目が行っていて、一般モブ女子の私の疑問質問になんかは答えてくれなさそう。


と、そうそう。そうなると達人候補生輝夜さんに振れる狼牙棒。天才シャルローネが制御できないって、どゆこと?

「ややや、どーもどーも! 復活娘のシャルローネでぃっす!」

と、折よく騒がしいのが帰って来た。

「おぉうっ!? これはこれは『まほろば』のみなさんと鬼神館柔道の方々までっ!!」

あ、そーよねー。シャルローネはまだ私たちが合流したこと知らなかったものねー……。

「で? 輝夜さんがずいぶんと軽々、狼牙棒を振っておいでですねぇ?」

「そーなんですよーシャルローネちゃん♪ 同じ古流の剣士として、シャルローネちゃんはできないんですかー?」

マミ、あんた残酷なこと兵器で言うわね……。それが無理だから、あんな奇っ怪な振り方したんでしょうに。だけどシャルローネってば、ジッと輝夜さんの素振りを見詰めて……。

「あ、リュウ先生。私もいいですか?」

上目遣いで乙女のおねだり。……なんだかシャルローネがやると無性に面白くないおねだりよね。

だけどそんなことで鼻の下を伸ばすリュウ先生ではなく。

「お? やってみるかい?」

なんて気安く狼牙棒を渡している。


あ、シャルローネの手で狼牙棒が持ち上がった。そして、中段に構えている。

「ここから……こう……」

切っ先がスルスルと持ち上がって、上段の構え。からの……斬撃! もちろん切っ先はぴたと止まっている。

え!? なんでなんでどーして!? さっきまで大車輪剣法しかできなかったシャルローネが、急に狼牙棒を振れるようになるの!?

私の疑問には、「ふむ」と納得顔の白銀輝夜さんが解説してくれる。

「元々の下地はあるのだな、基本基礎ができている。……しかしそれでいながら、あの奇っ怪な振り方をできるとは……恐るべき発想の柔軟さだ」

いえいえ輝夜さん、あのポンコツ天才はそんな良いものじゃありませんから。と言いたかったんだけど、極楽とんぼは頭を掻きながら照れくさそうに言う。

「いやぁ、振れるふれないよりも狼牙棒を見た瞬間に『どう使うか?』がひらめいちゃったんで……」

うっそだ〜うっそだ〜! 嘘くさいにもほどがあるよ。ん?

待てよ……だけど『ひらめいちゃったんで』というからには、確かにシャルローネ。ひらめきだけで狼牙棒を振りそうなところはあるよね?

あながち嘘じゃないのかな?


「ときにカエデどの、この狼牙棒とトンファーで何かしようとしていたようだが?」

輝夜さんに訊かれて我に返る。

「そうですそうです、実はこの狼牙棒の一撃をトンファーの十字受けで止められないものかと……」

「そんなに硬いのか? このトンファーの防御は」

普通のゲームなら『防御力

〇〇』とか数値化されていて、それ以上の性能は発揮できない。だけどここは『王国の刃』です。数字だけでカッキリと割り切られたものではなく、武器や防具は使い方次第で性能を極限まで伸ばすことができる、はず。その良い例がリュウ先生の木刀。

一般プレイヤー、というか素人が木刀を使っても、クリティカルどころかカスダメすら入らないかもしれない、いわゆる『クソ武器』でしかありません。だけど剣豪リュウ先生や士郎先生が使うと、一発キルも取れる超兵器に早変り!

使い方次第というなら、このトンファー。空手でもっとも強固と言われる十字受けを使えば、素人でも狼牙棒を止めることができるかも。

その実験の真っ最中でした。

ちなみに私の丸楯では、南無阿弥陀仏の暇もなくあっさりと死亡。死人部屋の住人とされてしまいました。


「ということで、誰かこの狼牙棒で私に必殺の一撃を入れてくれませんか?」

そういうと、フジオカ先生がリュウ先生に耳打ち。

「リュウ先生、あの娘は頭のネジが飛んでやしませんか?」

「いえ、ごく普通。平常運行ですけれど」

「いやしかし、どこの世界に命がけの実験を平気な顔でする者がありましょうや?」

「ゲーム世界ですからね、カエデさんもそこはわきまえていますよ。リアルではそんなこと絶対にやりません、命の大切さは知っていますよ」

そーそー。むしろ柔道ニッポンの名誉のためなら、「金も命がけも名誉もいらぬ」という鬼神館柔道の方がよっぽど頭のネジが飛んでますから。それなのにゲーム世界で他人のライフを気にするだなんて、なんか可笑しいよね♪

「カエデどの、それならばシャルローネどのが披露していた大車輪打ち……あれが実験には適しているかと……」

あ、輝夜さんも太鼓判だね。やっぱりここはもう一度シャルローネに、おねがい♡

「仕方ないにゃー、カエデちゃんのおねだりなら……」

シャルローネは大車輪打ちに構えを取ってくれる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ