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忍者の戦闘……をコピーするトヨム

「ま、そんなこと言って笑っていられるのも今のうちさ」

忍者がニヒルな微笑みを浮かべ、指を鳴らす。すると物陰から二人の影が……。

「みんなお久しぶり〜〜♪ あら? はじめましての方々もいらっしゃるねー?」

「あ、どもども、お久しぶりにはじめまして。ユキです」

「陸奥屋一党鬼組ガールズだ!」

「おぉっ!? フィー先生にユキ!! お前たち今まで隠れてたのかっ!?」

付き合いとノリの良いトヨムが驚いてみせる。しかしシレッと核心は突いていた。ユキさんにフィー先生、アンタら本当に今までただ隠れてただけかい?

「ですがー、小隊長? 忍者さんたちお三方、何をしに現れたんでしょーかー?」

「マミ、それをこれから忍者たちが見せてくれるんだ! 楽しみに拝見しようぜ!」

トヨムの言う通りだ。わざわざ三人で出てきたからには、なにか芸のひとつも見せてくれるんだろう?

いや待て、もしかしたらこの忍者。私たちと遊びたいだけなのかもしれないぞ?

「で? 忍者たちは何を見せてくれるの?」

「もうバレてるからには仕方ない、我らが軍師の授けてくれた必殺の陣。掛り車の陣を披露してやろうと思ってな! これを見て驚くがいい!」


忍者は「どーだ参ったか」と言わんばかりの大きな顔。しかしカエデさんがポツリと言う。

「少人数の戦法なんて、フィー先生やホロホロさんでも思いつくレベルの話じゃないかな?」

そこへ丁度良く、敵が三十ほど群がってきた。忍者たちは縦一列の陣を組む。

先頭、忍者。二番手、ユキさん。シンガリはフィー先生。

「んーー……このまま突撃して、忍者が道化師役で引っかき回しユキさんが傷口を広げて、フィー先生がキルを取る……かな? どうだろ、カエデちゃん?」

「だとしたら向こうの一般プレイヤーレベルでも考えつく技だよね? 忍者、ホントにそんなの有難がってるの?」

「もしかしたらよ、シャルローネどん。あの忍者、遊んでくれる相手がおらんのかも知れんぞい?」

「核心突かないであげて、セキトリさん。いままでみんな、オブラートに包んでモノを言ってたんだから……」

しかし現実は悲しいものだった。シャルローネさんの推察した通り、忍者がかき回してユキさんが傷口を広げ、フィー先生がトドメを刺していた。


三十人の敵をすべて葬って、忍者は言う。

「どうだ、私たちの車掛りの陣は!」

それに答えたのは、カエデさんだ。

「……ね、忍者? それ、ブラフつまり……ハッタリでしょ? すべてはかなめさんの策略だよね?」

「どういうことだ、カエデ?」

トヨムが訊く。

「ん〜〜……どこから説明しよっかな?

まず忍者の目的は、ウチの情報をすっぱ抜くこと。これは成功してるわね。次の目的は、私たちに誤情報を握らせること。これが軍師を雇ったと思わせること。だけどその軍師が与えた戦術っていうのが、『私たちも散々使ってきて手垢にまみれた二人一組戦術が三人になった程度』でしかない。つまり陸奥屋では軍師を雇えていない」

「なんでそんな回りくどいことするんじゃい?」

セキトリの疑問に、カエデさんは端的に答えた。

「私たちが陸奥屋では弱点を、どのように認識しているのか? それを探って持って帰るのが忍者のお仕事。そうじゃない、忍者?」


「カエデ、お前男の子にモテないだろ?」

「ちょっ! なに言い出すのよ、忍者!」

「私がフェムだったら絶対にホレてたけどな。惜しむらくは私がボイってことだ。そしてお前は詰めが甘い!」

忍者はつむじ風を起こした。砂埃が舞い上がる、そこに無かったはずの枯れ葉が舞い上がる。いわゆる木の葉隠れの術だ。

「また会おう、諸君! そのときは私も友達百人連れてくるからな! ワハハハハ!」

だが、詰めが甘いのは忍者の方だ。奴はカエデさんの読みが「あと一歩」と宣言した。

つまり陸奥屋は、それ相応の軍師を雇ったということに他ならない。

忍者がキツネか、カエデさんがタヌキか? とりあえず化かし合いは始まっている。


「へぇ〜〜っ、ホンモノの剣術使いがいると思ったら、忍者までいるのかよ」

タヌキとキツネの化かし合いのなかなかで、ナンブ・リュウゾウは感心したように笑った。

「どうだ、リュウゾウ? あの女忍者に勝てそうか?」

「え!? あれ女だったんスか、フジオカ先生!!」

男だと思ってたのかよ、リュウゾウ……。いや、リュウゾウを責めることはすまい。あの色気のない忍者……ぶっちゃけた言い方をするならば、胸の薄っぺらな忍者ならば、口調も相まって男に間違われても仕方ないことだ。

で、フジオカ先生の振った話題。

「あの忍者に勝つか……正直言うと、アイツまだ実力を見せてくれてないよな。だとしたら迂闊に『勝てます!』なんて言えないなぁ……」

「いつになく慎重だな、リュウゾウ」

「……俺まだ、忍者って奴を見たことないっつーか、初めて見たからさ。失礼かもしんねーけど、古流剣術だって『大丈夫か?』くらいしか思ってなかったけど、サカモト先生がメチャクチャ使い手じゃんか。サカモト先生見たら、古流古武道をチョロイなんて言えないさ」


この言葉に、カエデさんはボソリと呟く。

「意外と文明的なおサルさんなのね?」

これ、カエデさん。失礼だぞ、とは言い切れない。ナンブ・リュウゾウ、どこかサル顔。そして人類の叡智である古流の理合、勝利への理屈などというものには、どこか縁遠く感じられる野性。直球ストレートで述べるならば、筋肉主義の筋肉番長。考え方から何から、人類としての進化がどこか止まっているかのような、中世以前の勝負偏重主義者。直接そんなことを語っていた訳ではないが、私たちはトヨムというプレイヤーを知っている。そう、ナンブ・リュウゾウはどこかトヨムに似ているのだ。

「ナンブのアンちゃん、忍者の戦い方なら、再生動画で検索すると出てくるぞ?」

「んーー……とゆーかー……小隊長なら忍者さんの戦闘をトレースできませんかー?」

「そうですね、小隊長はマミの言う通り忍者に戦闘方法が一番似ているから、再現したりできませんか?」

「無茶言うなぁ、アタイと忍者は背丈から違うんだぞ? そう簡単に真似なんかできないさ」

とか言いながら、左の拳を突き出し、右の拳は自分の襟を握るような構え。

忍者の基本的な構えである。さらに腰を少し落として、両足均等に体重をかけていた。

またまた折よく、六人の敵が現れる。


「やあやあ我こそは、豪傑格チーム『青春の一撃』リーダー太刀風! 我と思わん者はいざ尋常に勝負勝負!」

丁度良さそうな相手だ。ちなみに私たち『トヨム小隊』のメンバーは、とっくに全員豪傑格へと昇格している。

「おう、小隊長。程よい相手が現れたぞい。一丁忍者の真似で揉んでやってみたらどうじゃい」

「ん〜〜……ナンブのアンちゃん。途中でアタイのオリジナルになるかもしれないけど、それでもいいかい?」

「あぁ、再生動画よりも真似っ子の方が参考になる。ぜひともおねがいしたい」

んじゃ、ということで太刀風プレイヤーの前にトヨムが出る。

「こちらは『嗚呼!!花のトヨム小隊』リーダー、トヨムだ! 相手にとって不足なければ、いざ勝負承ろう!」

相手プレイヤーはヌラリと両手持ち、大剣を抜き出した。


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