短めの更新
本日はちょっと短めの更新で失礼します。なにしろ世界情勢も緊迫してますので。
あ〜〜忍者です。盗っ人ジェリーを引っ捕らえる任務では、どんくさい二人を待ちきれずついつい私が下手人逮捕となり、私が一身に非難を浴びることになりましたが、悲劇はまだまだ続きます。なんと第三回、盗っ人ジェリー逮捕劇においても、フィーとユキっぺは芋くさい所を露呈。結果的に私が下手人逮捕という段にあいなりました。しかしここいらで、敢えて訴えさせてもらおう!
これは私が悪いのか!? 私が悪いのか!? 私としてはどんくさい二人が悪いのではないかと訴えたい!
しかし『女の子』な二人を相手にそのような訴えなど通るはずもなく、やはりジッと手を見る。
だが三枚揃った景品のミニマント。これを私も身につけてやれば「忍者似合うじゃない♪」とか「キャーいずみーかわいいー♪」などとすぐにご機嫌。これだから女の子ってやつは、面倒くさいやか可愛らしいやらで。
「でもいずみ、次のラウンドは反撃してくる三人組だからね。浮かれてちゃダメだよ?」
いやフィー。私、浮かれてない、浮かれてたのお前。そしてユキっぺ。ついでに言えば下手人逮捕に、二人ともまったくこれっぽっちも役に立ってないから。
「そうなるとフィー先生、一人ひと縛り。今度こそ私たち、活躍しましょうね!」
「そだねーユキちゃん、頑張ろうね♪」
「と、決意も新たなところ悪いが、二人とも真剣をやめて木刀にしたらどうだ?」
私の提案。
「え〜〜、だって忍者? 私たち父さんやリュウ先生みたいな達人じゃないよ?」
「そうだよいずみ? 私たちは一般人、士郎先生やリュウ先生みたいな、ちょっとオカ……じゃなくってイカレ……でもない。超人じゃないんだから」
おいフィー、お前本音がほとんどたれ流しだぞ?
「逆だよ、逆。キル取っちゃいけないルールで真剣使ってるから、イマイチ活躍できないんじゃないのか? 木刀なら致命傷にはなりにくいだろ?」
もっとも二人の実力で面を打てば、下手人は即死だろうが。胴くらいならライフ激減くらいで済むのではないだろうか?
ちなみに木製の薙刀も木刀という呼称で良さそうだ。一応は調べておいたが、「ヘイ忍者、そいつぁ間違いだぜ!」という意見がございましたらぜひともこの忍者にお教えいただきたい。そのうえでイイねボタンを押してチャンネル登録を……オフザケが過ぎました。
「でもそういう忍者は手裏剣以外に何を装備してるの? 忍者刀を差してる訳でもなさそうだし……」
「私か? 私は身ひとつで挑んでいるぞ? 昔の捕方は縛りのお縄は携行してたが、ほぼ素手で下手人を取り押さえたらしいからな」
とはいえ、私も捕方同様捕縛用の縄くらいは所持している。ちなみに私がこのような素手ゴロに興味を持ったのは、某大人気格闘技マンガの中で、「素手は世界各国どこへ移動するにもフリーパス」とあった影響である。私も忍者、誰にも怪しまれることなく肉体という兇器を持ち込む、という意見には賛成である。その稽古として『王国の刃』は最適である。道場の稽古もあるが、道場には何も無い。椅子もテーブルもジョッキグラスも無い。
そして受けと捕りの間で、加減や誓約も多い。それらのすべてを取っ払って、柔の技を目一杯試せるのはやはり『王国の刃』だ。
ただし、私が古武道における過激派とか危険分子とか勘違いされては困る。私はさまざまな角度から古流を研究しているだけだ。決して殺人鬼のような人間ではない。NPCが相手だから平気な顔で殺し技を面白半分で用いるようなことはしない。そんな技を使う相手は、士郎先生やリュウ先生だけだ。
で、私がほぼ素手で捕方を務めていると知ったフィーとユキっぺ。
「ダメだよいずみ!」
「そうだよ、危ないよ!」
「せめて忍者刀くらい佩きなさい! そうじゃないとお姉ちゃん、怒るよ!」
いままで散々ブーたれておきながら、こんな可愛いことを言ってくれる。だから私は女の子が大好きなんだ。
だがここは『王国の刃』。死ぬことが無ければ怪我する事も無い。キルを取られる危険があっても、柔を試すだけの価値はある。よって二人の意見は却下。といきたいところだが、やはり女の子に嫌われるのは損だ。使わない小刀の木刀くらいは装備してやるか……。
「そーそー、いつもそうやってお姉ちゃんのいうこと、素直に聞いてくれればねー……」
やたらとお姉ちゃんぶるのも、フィーのクセのひとつだ。
「じゃあ今回の下手人は三人、槍のトーマス、剣術のレイ、短剣使いのロベルトだが……」
「槍使いは私かな……」
フィーが言う。
「じゃあ私は剣術のレイだね」
と、これはユキっぺ。必然的に私が短剣使いのロベルトを相手にする。ただし、これは初回限定。せっかく下手人が三人いて、三回はクリアしないといけないミッションだ。対戦相手は入れ替えたい。
では、いざ宿屋へ。私たちは三人の下手人の顔を完全に覚えている。これだけでも有利だというのに、襲撃する側なのだ。これはもう、本当にボーナスステージのようなものである。ただ、同じステージを二度三度と繰り返すうちに、下手人サイドもこちらの顔を覚えるようなので、できるだけ顔は隠しておきたい。
ということで、まずは三人お揃いのツバの広いフェルトハット。ボルサリーノで顔を隠しての潜入だ。すると……いた。三人バラバラ、一階のバーで酒を飲み、ポーカーに興じ、女の子をからかっていた。
私たちは目配せしてそれぞれの獲物にわかれる。私の相手はポーカーで稼いでいたロベルトだ。
「稼いでるとこ悪いけど、短剣のロベルトさんだね?」
「それがどうした」
「殺しの罪状でお縄にする。文句無いな?」
へえ、と言ってロベルトはカードをテーブルに伏せた。
「悪いがみんな、今回は降りるぜ」
そう言ってロベルトは貨幣を上着のポケットに流し込んで立ち上がった。途端に滑り出す右手。すでに短剣が握られている。しかしそんなことは先刻承知、半身になって刃をかわすと、一歩踏み込んで裏拳。ロベルトの鼻先をかすめる。
ひるんだロベルトの小手を取ってヒザ関節に軽い蹴り。先の裏拳同様、牽制目的の蹴りだ。本命はあくまでも短剣を握った小手。これを極めて仰向けにひっくり返す。関節技を極められると、人間は力まかせに激しく抵抗するものだ。その抵抗をできなくするために、関節を極めたまま脇腹に蹴りを入れる。技の流れは少林寺拳法を連想してくれるとたすかる。
フィニッシュは相手をうつ伏せにした形での関節技。われながらニクイくらいにキマってしまった。
他の二人に目をやる。フィーはトーマスの槍を弾いて無手にした。体格差を頼りに立ち上がるトーマスだが、そのスネをフィーはしたたかに打つ。うつ伏せに倒れたトーマスの背中の急所を石突きで押さえて、長身トーマスに悲鳴をあげさせた。
そしてユキっぺはもっとシンプル。腰に落とした木刀の柄で、レイの水月を突き込み昏倒させている。あっという間の三人制圧。あっという間の逮捕劇であった。