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いざ、改めて!〇

捕物ステージ2、戦利品トロフィーのマントの数を欲張って、トライ2は悪玉トリオに逃げられて失敗。今一度、拠点に戻ってステージをリセット。この方法でもリトライが可能とわかる。


しかし悪玉トリオ、毎回一階にいる訳ではない。部屋でコールガールと楽しんでいるケースもあった。そんなときは素直に撤収。私たちの目的はイベントをクリアすることだが、受けるキルの数は最小限でありたいと思っている。



「ですが、二度目のトライのときに小隊長の顔を見て、三悪が逃げ出しましたよね? 向こうもこちらの顔を覚えたんでしょうか?」



カエデさんの発見だった。



「だとしたら、三悪が一階にいるときは、案外簡単に捕縛ができるかもしれませんね」



そうか、宿屋の正面から乗り込んで、窓から逃してやるのか。窓の外で待ち構えていれば、下手人三人は、必ず窓から出てくる。そこを御用、という訳だな。


では配置だ。


私とトヨムで建物両脇の窓の外。セキトリと白百合の三人娘で正面から突入と決定。

これは作戦の初手だからということで確実性を重んじた配置である。もちろん二度目三度目のトライでは配置を変えてゆく方針だ。


さて、私は成人男子、トヨムは女子の中でも小柄な部類。私は丸杖という比較的長い得物、トヨムは拳と柔を武器としている。そんな二人が狭い路地裏で闘うにおいて、というか私が身動きするのに不自由は無いのか? という心配もあるだろう。


まあ、狭いといっても肩幅のスペースは確保できている。動くことに問題は無いのだが、いわゆるサイドステップは不可能という状態。杖で横に薙いだり払ったりという動きに、常人ならば苦労するだろう、という程度。


まあぶっちゃけて言えば、「私ならば何の問題も無い」というところだ。それをこれからお目にかけよう。


まずはロベルトくんが窓から出てきた。これに手裏剣を打ち込んで動きを止めるのは簡単だ。それから柔の手を使うなり杖を打ち込むのは面白くない。



「おい、人斬りロベルト」



まずは声をかけて振り向かせる。右手の杖は身体の陰に隠してあるので、ロベルトから見て私は無手に見えるだろう。そう仕向けているのだ。


案の定、ロベルトは短剣を抜いてきた。ここで豆知識だ。短剣の何が良いのか?

短剣というからには諸刃の剣だ。短いので懐に隠し持てる。そして諸刃の剣なので左右どちらかの刃が、大きな血管を傷つける、という可能性がある。


つまり殺傷能力の高い武器なのだ。そして諸刃の剣というのは、片刃よりも奪いにくい。そうした意味でも少々厄介な得物と言えよう。


そしてこの武器を選んだロベルトという男。まともな打ち合いをする気が無い、と読むことができる。パッと相手の懐に飛び込んで、そのままグサリ。だがここは狭い路地裏、左右へのステップで誘いの餌を撒くことはできない。それにどことなし、ロベルトは狭っ苦しそうだ。


その理由は私の立ち姿を説明すればわかっていただけると思う。私は左手左足が前、杖を執った右手と右足が後ろ。真半身と呼ばれる体勢、というか真横を向いている。狭い路地裏を広々と使えるのだ。そして真横を向いているので、急所の銀座通りとも呼べる正中線はロベルトからは見えない状態だ。


じゃあどうやって攻撃するの?


その質問に答える前に、ロベルトが短剣を突き出してきた、まずは防御からだ。左足はカカト、右足は親指のつけ根だけで足の位置を変えることなく正面を向く。その時対側に隠していた杖を、下から上へヌッと突き出す。


突如として現れた杖先だ、しかも先端は短剣をすり抜けてロベルトの最終防衛ラインを侵し鼻先に付けられている。私をひと突きしようと勇んでいたロベルトは急ブレーキ。惜しい、もう少しでその鼻をハンサムな形にヘコませてやれたのに。


だがこのままの形では、私の前置き手……この場合右手がロベルトの短剣の間合いにある。大変に危険だ。大きく左足を引いて間合いを私のものにする。


ロベルトも広がった間合いに危険を感じたのだろう。私に背中を向けた。しかし予備動作が大きい。腰にひと突き。ロベルトは短い悲鳴をあげて崩れた。腰骨を鳴かせたのだ、悶絶するのは当然である。



「大丈夫ですか、リュウ先生!? 全然心配はしてませんが!」

「カエデちゃん……もうちょっと言い方が……」



カエデさんとシャルローネさんだ。セキトリとマミさんはトヨムの方に向かったのか。



「カエデさん、こちらにはロベルトしか現れなかったけど、レイとトーマスはトヨムの方に向かったのかな?」

「え!? レイはこっちに来てませんか?」

「カエデちゃん危ないっ!」



シャルローネさんがカエデさんのヒカガミ……ヒザ裏に足刀蹴り。膝カックンの状態で、カエデさんは「ホゲ」と愉快なひと声を発して尻もちをつく。


そのカエデさんの頭上を、窓の内から伸びた剣が一閃。丁度カエデさんの目の高さを薙いでゆく。

その切っ先は、シャルローネさんがメイスで受け流した。というか、反対側の杖尻を受け流しの勢いを利用して、窓の内に突き込んでいる。間髪を入れない早業だ。



「殺しの下手人レイだね!? 出てらっしゃい!」



うん、シャルローネさん。気持ちはわかるんだけどそれで出て来るんなら楽な仕事だよね?

私尻もちをついたカエデさんから、捕物の縄を借用する。伸ばしては輪を作り、伸ばしては輪を作りした縄は幾重にも輪を作って重たい。


その縄を担いでシャルローネさんに目配せ。

シャルローネさんは私の手を理解したようにうなずいた。


この辺りか、と目星をつけて縄の束を振り下ろす。窓の内側、屋内の壁を叩くような要領だ。

すると窓の下からギャッと声があがった。


シャルローネさんが窓から飛び込む。無茶をする娘だ。そして屋内の乱闘の音が響いて、静まり返った。

ひと仕事終えたような爽やかな笑顔、シャルローネさんが立ち上がる。



「リュウ先生、悪玉一匹御用なり! です!」



撲殺されたように弱り切ったレイの髪を掴んで、シャルローネさんが引きずり起こしてくれた。

そのレイにはシャルローネさんが縄をかける。私はロベルトに縄だ。



「あたた、今回はイイトコ無しですね……」



尻もちをついていたカエデさんが立ち上がる。



「あ、ごめんねーカエデちゃん」

「いいよいいよ、あの場合仕方なかったし」



そうだ、あのとき膝カックンの関節蹴りを入れていなければ、カエデさんは間違いなく死人部屋送り。これは法律で言うところの正当防衛ならぬ、緊急避難というものだ。誰もシャルローネさんを責められない。


ということで悪党を二人お縄にして、表通りへ出る。すでにトヨム、マミさん、セキトリの三人が、トーマスに縄をかけて待っていた。



役人に三悪人を引き渡すと、景品のマントがまたもや貰えた。攻撃力が上がるで無く、防御力が上がるでなし。まったくバトルの役に立たない、腰まである中型のマント。ただのイベント攻略の景品でしかないマントである。


だからこのマントが後々なにかの役に立つ、レアスキルがどーのこーの、持ってない奴ざまぁ、な展開など期待しないように。



「で、このマントさぁ……」



トヨムのボヤきだ。



「例によって一枚しかもらえなかったけど、全員の分揃えないとならないよな?」



ただのマントのため、イベント続行である。


総合評価524pt、ブックマーク登録171、評価ポイント182ptまことにありがとうございます。

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