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他のチームの捕物〇

ここで私たちは本店におもむき、他のチームがどのような活躍をしているのかを拝見した。


まず同じく本店に来ていたジャスティスチーム。あの熱い男、ジョージ・ワンレッツ率いる正義の戦士たちだ。彼らの活躍を彼らの前で動画再生してみる。


ファーストアタックは、私たち同様、あまりのジェリーのすばしっこさに逃亡を許して失敗。これは仕方のないこと。ただし、炎の男ジョージだけは、任務失敗のコールが出されるまで、人混みの中を必死で追跡していた。見上げたガッツである。


そして二回目の挑戦、ここではジェリー登場と同時に、熱い男ジョージのラガーメンタックルが炸裂。見事下手人確保と相成った。ここでひとつ気になることがあった。私たちトヨム小隊は全体的に、韋駄天ジェリーを足止め、それから身柄確保に至っている。



しかしジョージたちはどうだ? 逃げる下手人に食らいつき、背後からのタックルで下手人を捕らえていた。ここに戦闘様式の違いを感じる。


世の警察官諸兄は柔道だ剣道だと稽古に熱心だが、それは相対した犯人には有効であろう。しかし逃亡する犯人相手には、ラグビーやアメフトのダッシュ力。あるいはタックルの技術が必要なのではなかろうか?


ふとアメリカの刑事ドラマなどを思い出す。ガタイの良いポリスマンが、怒涛の勢いで追いかけてきて、犯人の腰にしがみつき手錠をかける。そんな場面を読者諸兄も思い浮かべることができよう。


私のような戦闘能力は、戦場でこそ役に立つかもしれない。しかし警察官の逮捕劇には、ある一定の条件が付かなければ役に立たないかもしれない。


続いて現れたのは、ヒナ雄くん率いる、チーム『情熱の嵐』だ。ジャスティス同様、まだ全員分のマントは揃ってはいない。しかしこちらは手探りするような慎重さで、ノーミスの三連勝。的確にマントを集めている。


ここの特徴は全員でジェリーくんの逃げ道をふさぎ、包囲網の中からジェリーくんを出さない、というところにあった。つまり、全員で建物の中に入っているのである。



「おそらくジェリーは窓からは逃げないと思いますので、路地裏配置の人間もみんな宿屋バローに入れているんです」



ヒナ雄くんは事も無げに言うが、なかなか大胆な作戦だ。そして失敗無しのノーミス。これでミニイベントを経過しているのだから素晴らしい。慎重さと大胆さ。これらを兼ね備えている限り、歩みは遅くともその実力が上げ止まることが無いであろう。


そして問題のチームがひとつ。まほろば系『迷走戦隊マヨウンジャー』の面々だ。そのチームは私たちに似て中年のマミヤ氏と若い女の子だらけのチームなのだが。……なのだが。



「のう、マミヤさんや?」

「なんでしょうか、リュウ師範代」

「私は貴方のことをしっかりと若者たちを導ける大人だと認識していたのですが……」

「なにか問題でも?」



ある。割と問題だ。



「マミヤさん、なぜにお宅のアキラくんは、体操服に赤ブルマなのですか?」



アキラくんとは言ったが、少年のようなショートヘアながら歴とした女の子である。故に体操服に赤ブルマでもなんら問題は無い。しかし、しかしだ!



「マミヤさん、その服装が下手人捕縛に相応しい服装と言えるだろうか?」



マミヤ氏は私を見た。そしてアキラくんを見る。そして私に向き直って言う。



「少し順を追って説明しましょうか?」

「ぜひとも」



マミヤ氏は語った。



「アキラは小柄な上に、拳ふたつを武器にしたインファイターです」

「ふむふむ」

「そのアキラが、鎧どころか革防具、果ては既存の服装まで動きにくいと言いまして」



なるほど、近間でこそその本領を発揮するインファイター。その機能を最大限に発揮できる服装を求めるのは当然である。



「そんな折、武器屋服飾屋で『戦士の聖衣』と銘打たれて売られていたのがこの服飾」



うん、わかる。わかるんだ。体操服が機能的という主張は理解できる。百歩譲ってブルマーも良しとしよう。しかしオープンフィンガーグローブと脛当レガースてがブルマーとおなじ赤というのは、いかがなものか?



「師範代が何を問題視しているのか、私にはわかりませんが」

「そ、そうだな。ジェネレーションギャップというやつだな。私がいろいろと危険視しているものが、マミヤさんには理解できないこともあろう。しかし、しかしだ!」

「はあ……」


「ホロホロさん、あんたはアウトだ、アウト!」

「え〜〜、なんでですか? 師範代!」



緑色のロングヘアのホロホロさんは、華奢で小柄。その彼女がビキニアーマーなのだ。



「お前、わかっててやってんだろ!? なまじ似てるから著作権の危機なんだよ!」

「え〜〜? 私、夢狩人なんてアニメわかりませんよ〜〜?」

「アキラくんといいホロホロさんといい、マミヤさん! 事態の深刻さがわかっているのかね!」


「申し訳ありませんが、師範代と違い私はオタクではありませんので………」

「オタクでないとわからんネタぶっ込んでんのそっちだろ! いいからデザインどうにかしろ!」

「まあまあ、そこはよくあるデザインということで。ウチの主砲ベルキラも、ホロホロがビキニアーマーだと張り切るんですよ」



そ、そうなのか? ホロホロさんがビキニアーマーだとベルキラさんが張り切るという理屈はよくわからないが、まあ動画を再生してみよう。


モニターには、見慣れた宿屋バローが店内が映し出される。店内にいるのはマミヤ氏、これが出入り口付近。そしてロリコンたちの希望の星、ブロンドをオールバックにしたお姫さまのコリンちゃんが階段下。


大柄女子、精悍な肉体のベルキラさんがジェリーの部屋近辺。なのだが……ベルキラさん、なんで鼻血を吹き出してるんだ?

その視線の先には緑髪のホロホロさん(ビキニアーマー)しかいないのに。


まあいい、動画は進む。

屋外では出入り口正面にアキラくん、裏口にはマミさんに雰囲気の似たモモさんが張っている。

小柄なホロホロさんがフロントに訊いた。



「盗っ人ジェリーはこの宿にいるんだよね?」



そこで支配人のいつもの叫びが二階に向けられて。



「お客さま、旅客改めですよ!」



二階へ駆け出そうとするコリンちゃん。しかしジェリーがとびだした。……うまい具合にベルキラさんの正面だ。


……しかし、ベルキラさんはすでに倒れていた。鼻から目一杯鼻血をふきだして、幸せな表情は恍惚として。役に立たない女に成り下がったベルキラさんをまたいで、ジェリーは駆けてゆく。

しかしマミヤ氏の鋭い声。



「アキラ、正面だ!」



ジェリーは出口からとびだした。私が逃亡を許したルートで。しかし出口正面には赤ブルマーの猟犬、アキラくんが控えている。しかも、マミヤ氏にジェリーの逃走を知らされて。


一発。


扉を押し開けたジェリーを、右ストレート一発でとめてしまった。アゴ先、チンへの一撃だったのだが、フォロースルーが甘い。だからジェリーは撤退とはならず、その場に尻もちをついた。マミヤ氏が駆けつけ、お縄。ベルキラさんの張り切りもなにもなく、動画は終わってしまった。



「のうホロホロさんや?」

「嫌ですよリュウ師範代、そんな怖い顔」

「いや、ベルキラさん何してたよ?」

「ビキニな私のお尻を眺めて倒れてた」

「なぜに!? そして君のお尻を眺めて倒れる理由がわからん!」



ん〜〜……とひとつ思案のホロホロさん。



「あ、リュウ師範代はそこからわかりませんよね♪ 私とベルキラは女の子同士の恋人関係だからです♪」



お、おう。なんだかデリケートな話なのか?



「だから私のキュートなお尻を見て、ベルキラったら鼻血まで出しちゃって、純情さん♪」



だったらその格好辞めりゃいいのに……。



「いえいえリュウ師範代、そんなベルキラが可愛らしいじゃないですか♪」



まあ、本人たち、そしてチームメイトが納得しているなら、それでいいか……。


各チーム、それぞれ考え方もさまざまで、それぞれの特色を活かしながらイベントに取り組んでいることはわかった。そして私たちを振り返り、ファーストアタックで失敗していたが、あの失敗は有用な失敗であったことが理解できる。


そう、カエデさんの配置というのは、死角が無いのである。あるいは状況に応じることのできる構えなのだ。

ということで、人数分のミニマントも揃ったことだ。捕物帖ミニイベントの第二弾、次なる下手人を引っ捕らえることにしよう。


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