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陸奥屋まほろば合同会議

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 さて、大規模な稽古会が終了したところで全員の顔合わせとも言うべき、合同会議が執り行われた。議題は仮想敵の確認とその対策である。


 改めて言わせていただこう。私たちは正統派ストロングスタイル、不正ツールを是としない集団である。そして大隊規模、連隊規模にまでふくれ上がってきたこの集団は、いよいよネットゲーム『王国の刃』内においても無視できない集団となりつつある。


 まず一番の手始めに、そのことが確認された。不正ツールを使用した者、あるいはそのチームは脱退してもらうと。

 鬼将軍の鋭い眼差しが光った。



「そのような卑怯卑劣に手を染めている者は、この中にいるまいな?」



 全員が黙したまま頭を下げた。これはチーム『まほろば』が窓口となって集めた集団であり、同盟を結ぶにおいては不正ツールを使用しない、していないことが条件となっていた。


さらには出雲鏡花、あるいは陸奥屋本店により試合記録の動画チェックなどがおこなわれ、本当に不正をしていないことが確認されている。

 だが、それでも改めての確認だったのだ。

 なぜなら、私たちの仮想敵というのは不正の権化とも言えるトニー皇帝軍だからである。



「同志諸君、我々は何者か?」

「「「陸奥屋まほろば連合です!」」」



 その回答に、鬼将軍は不満なようであった。



「ではいま一度問おう、陸奥屋まほろば連合軍とは何者か?」



 新参メンバーたちは顔を見合わせた。戸惑っている、経験の浅いメンバーたちは、誰もが戸惑いを隠せないでいた。


 そこで鬼将軍はスナップ。指をパチンと鳴らした。陸奥屋本家とも呼ばれるべき、私たちが立ち上がる。



「「「我々は、挑戦者です!」」」



 宣言するように唱和した。

 今度は鬼将軍も満足そうであった。私たちは当然のことを唱えただけなので、自慢気もなにもなく黙して座する。



「その通り、新たに集った同志諸君もこれは心掛けていただきたい。私たちは挑戦者なのだ。よって安易な不正ツールなどで成績を稼ぐなどという発想は、まったくの不本意でしかない。ただ、自分たちの主義主張を他者に押しつけるというのも不躾な話である。不躾な話ではあるのだがしかし! 不正ツールなどという代物が横行しては、新規加入者が楽しめないではないか! それは自分たちの遊び場が衰退し、やがては滅亡を招くのみである!」



 一事が万事と鬼将軍は訴える。安易な不正というものは、やがて己の身を滅ぼす緩慢な自殺でしかない、と。



「挑戦者たる者、そのような虚無的思想、ニヒリズムなぞに染まっていてどうするか! 幸いにして諸君は挑戦者であり抵抗する者である。現状不正が平然と行われている王国の刃において、希望の光なのだ! なにとぞ不正者に下す鉄槌のひとつひとつとなってもらいたい!」



 鬼将軍の演説は終わった。

 みなの目が輝いている。明確な目標、不正者討つべしという方向性が指し示されたからだ。のんべんだらりとゲームにインして、勝った負けたと無駄な時間を過ごすのではない。


明確な敵を示されたのだ。そしてその敵は、次に壇上の人となった出雲鏡花によって具体的にされる。



「初めての方もいらっしゃいますわね。チーム『まほろば』所属、出雲鏡花ですわ。以後お見知り置きを……。さてわたくしどもは不正者憎しの思いで今日ここに集っている訳ですが、先に総裁鬼将軍さまが申した通り、みなさま一人一人が不正者に対する鉄槌のひとつひとつとなっていただかなくてはなりません。よって一致団結、一人一人が不正者の欲望を打ち砕く一兵卒となり身勝手な行動を厳に慎むことをここで誓ってくださいませ。ときには捨て石になることもあるかもしれません。イベントというビッグポイントを稼ぐべきときに、まったく活躍できないかもしれません。それでもなお、自分たちの遊び場所『王国の刃』から不正者を追い出すために、喜んで捨て石となることを誓ってくださいませ。わたくしは全軍の参謀長として、これからみなさまを駒扱いいたします。無駄な犬死にを強いますわ。それでもなお、この出雲鏡花の指示に従うと、『まほろば』代表天宮緋影さまの声として従うと、この場で宣言してくださいませ」



 なんだか思っていたのと違うな……そう言って、ひとチーム抜けた。もうひとチームも席を立つ。


「これで残りは八十余名……残りのみなさまはいかがなさいます?」



 壇上、出雲鏡花が微笑む。



「俺はやる!」



 立ち上がったのは士郎さん、そしてもうひと組。



「アタイたちもやるよ!」



 やれやれ、小隊長ひとりを立ち上がらせる訳にもいかないか。

 そして残存する各隊がみな立ち上がった。ここへ来れば夢のような技術を授けられるとでも思っていた連中は去り、志おなじくする者たちだけが残ったのだ。


正直に打ち明けるならば、出雲鏡花の問いかけにほとんどが席を立つと思っていたのだが、思いのほか同志は残ったのである。

 そしてようやく、ここからが本題である。



「こちらをごらんくださいませ」



 壇上、巨大なウインドウに動画が映し出される。大柄なアバター、金色に統一された甲冑。見ていて頭がクラクラしてしまいそうになる。


 そしてそれを率いるクソ生意気そうな小僧。



「こちらがわたくしどもの仮想敵、トニー皇帝軍ですわ」



 どうやら六人制試合のようである。相変わらず敵の攻撃はまるで通さず、必殺技連発の戦闘方法でまったく芸が無い。



「ご覧の通りこちらの攻撃をまったく無効にする、不正ツールの固まりのような防具。そして美人を見つけたヒナ雄さんがこぼす、ヨダレのようにダダ漏れな必殺技。まさしく不正の百貨店! 何でもござれの見本市ですわ」

「なあ、鏡花さん」



 士郎さんが手を挙げた。質問があるらしい。



「このトニーのクソ坊主、以前見た動画と代わり映えがしないが、この動画は最新のものなのかい?」

「えぇ、最新のものですわ。そして代わり映えと仰るのでしたら、皇帝軍の同盟者は百人を超えていましてよ?」



 場内「え〜〜っ」という声で満たされる。私も同じ思いだ。ここにようやく反不正同盟を八十余名集めたというのに、敵はその数を上回っているのだ。私だって「え〜〜っ」と言いたい。



「もっとも、百人を超えたといってもそのほとんどがドン助……つまり皇帝陛下の作り上げた不正兵士。同盟プレイヤーの数は二〇人ほどですわ」



 しかし二〇人のプレイヤーが五人ずつドン助を抱えていたら、その総数は一二〇人にもなる。こちらは八十四人。数の上で不利なのに、その中でドン助対策をできる人数となれば、さらに数は減らされる。

 いくら成長の無いトニー皇帝軍とはいえ、対処がめんどうくさいことになりそうだ。



「そうですわね、みなさんの懸念はこの不正者連中が散り散りになって、あちこちで初心者狩りや迷惑行為に及ぶことですわね。一応対策は取っておりますの」

「どのような策かね? 策士のねーちゃん」



 鬼将軍も身を乗り出す。安っぽいお姉ちゃん扱いをされた出雲鏡花だが、そこはサラリと流して涼しい顔。



「世界にとっては足引っ張りでしかない存在のクセに、高慢チキで猪口才な上にプライドだけは一丁前というあちらの皇帝陛下どのに、挑戦状を叩きつけたのですわ」

「ほう、それならばトニー皇帝陛下も我々しか狙ってこなくなるか!」



 呵々大笑、鬼将軍は機嫌よく笑った。しかし策士のねーちゃん、出雲鏡花はフウ、と憂いのため息。



「それはトニー皇帝軍がわたくしどものように、一致団結。一枚岩の結束があってこそ、の話ですわね」

「ではやはり、トニー皇帝軍は一般プレイヤーに迷惑をかけると?」


「えぇ、まずはわたくしどもとひと当たり。これは間違いなくかかって来てくれましょうね。ですが二度目、三度目の突撃でことごとく撤退を強いられたなら? あるいは状況不利と見て、それでもわたくしどもにかかって来る不正者は、どれほどいましょうか?」


「そもそもが不正に手を染める根性なしだからな……我々に突っかかってくるよりも、一般プレイヤーを狩って喜んでいるか……」


「そうなるとわたくしどももひとつ所で席を温めている訳にはまいりませんわ。各部署、ポジションに散って、なんとしてもこの狼藉を阻止しなくてはなりませんの」


「そうなると、さきほど鏡花さんの言っていたとおり、捨て石になるような戦いもしなければならなくなりますね……」



 口を開いたのはカエデさんだ。やはりその役割は自分だと心得ているのだろう。それを見た鬼将軍も、やはり憂いの表情を浮かべた。



「みなが楽しめるようにと結束したこの同盟で、捨て石をださなければならないというのは、どうにもやり切れぬものだな、策士のねーちゃんよ……」

「ただ、わたくしどもには切り札がございますわ」



 策士はひとつの提案をした。


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