あー行きたくなくなってきたー鬱になってきたー
議事録20210510
短編創作小説
タイトル:あー行きたくなくなってきたー鬱になってきたー
註釈)
この物語は創作であり、全て事実とは無関係のものである。
2021/05/10(月)
この日、まーは憂鬱だった。
まーは、今まで滞納し続けた督促状を手にしていた。
その重みはとても紙ペラとは思えないほどものだ。
意を決し、デイケアの施設へ向かう準備を整える。
「行くぞー」
自分を鼓舞してみるが、その足取りが重いのは決して体重のせいだけではなかった。
「行くの〜?」
寮の職員がまーに話しかけてきた。
「2件、お金を支払いに」
「行ってらっしゃい」
こうして、決戦の舞台へと旅立ったのだった。
寮から徒歩2、3分といったところに、デイケア施設はある。
「はぁ、だめだ…」
苦痛の言葉がまーの口から零れ落ちる。
「入るだけで出てきちゃった…」
激しい動機がする。
「今日は珍しくデイケアの作業が終わってない…」
施設内の掃除作業が終わっておらずまだ人が多い。
この状況で突入するにはやや気後れした。
まーは暫く待機を余儀なくされた。
「はぁ、まだ終わんないかな、まだかなぁ」
この瞬間が永遠に感じられる。
ホーホケキョ。
季節はもう冬の寒さをとうに過ぎ、世間では自粛のだの勝負のだと言われたGWの長期休暇を終えた5月の長閑かな時期だ、天気もすこぶる晴れである。
まーの心とは対照的に、そのコントラストを色濃く映し出す。
待つ事およそ半刻。
「カラスが鳴いてるな」
中の作業がひと段落した様子を聡く感じ取り、まーは施設に入る。
それはおよそ1ヶ月振りのことであった。
「あ、こんにちわ」
まーは施設内部へ移動した。
「まーさん、元気?久しぶり」
と、般若が現れた。
「あー、はい」
そこからさらに5分ほど待たされた。
「まーさん、どないしたん?」
「…」
「まーさーん?久しぶりまーさーん」
「あー、はい!」
ぼーっとしていたまーは不意を突かれた形になり、思わず声が上擦ってしまった。
「ちょっと※※だったまーさん、どないしたん。なんか用事があるんですよね」
「あ…」
「はい」
「あの先週末かな、あのこれが来まして」
「これが来た?」
「で、支…」
「あーお金やね」
「はい」
「こんな払ろてないん?」
「はい」
「あーー、うーわー、結構な、溜まるとすごいね、はい」
般若が声を張り上げる。
「通帳借りて引き出して払いにいこうかと思ったんですけど、なんか、なかなかあのー、誰にも話かけられなくてこのまま座ってました」
まーが説明をする。
「え、誰かに呼ばれて、お話いってるのかなと思ったんけど」
「いえ」
「あらそー、すごいね、お金あるん?通帳あっても中身入って無かったら…」
「通帳の中身には多分105,800円払うだけはあると思うんですけど」
「10万円?、、、105,857円?延滞金よりマシなんちゃう、テンパーくらいで付くやん普通」
「はい」
「うわー、1月から、で?…で?」
「え?」
「どうしよう?」
「で通帳お借りしたいんですけど」
「通帳お借り?」
「はい、とにかくちょっと引き出しにだけ行かせてもらえると」
「なんかお返しすることとか?」
「いっぱいあるんですけど、ちょっと」
「ちょっと相談してきますね」
「はい」
般若が離席する。
「はい、お待たせしました、これまーさんの通帳」
まーが通帳を受け取った。
「えっとじゃあ一回お金引き出して全部渡してから、これの領収書と差額もらいに来てもいいですか?」
「差額?」
「じゃなかった、この分だけ一回全部預けてからこれの分だけ引き出してもいいですかここ戻ってきて、それとも直で払った方がいいですかね?それやとこれが、預けてあったこれがいるんですけど」
「一旦全部こちらで要るので」
「ちょっとこれ置いていきますんで、これ」
「置いてくの?」
「はいちょっと」
なんとか通帳奪取に成功した。
「バス間に合うかな」
まーは受け取った通帳を握り締めてお金を下ろしに施設を出た。
はあはあ。
「通帳引き出した、後はバスを待つだけ。家に帰ったら決心が鈍りそう。でもバス停で待つのは長過ぎる。どうしよう」
途方に暮れたまーは、すごすごと施設へと踵を返したのだった。
「どうしたん?」
と、これは別の職員が聞いてきた言葉だ。
「バスがあの1時間後とかしかないんです」
「1時間後!?」
「ちょっとその間にいろいろ話した方がいいんじゃないかと思って」
「どなたに?」
「般若さんに」
やおら、まーは施設長室へ向かって行った。
刻は来たのだ、ここからがまーにとって本当の地獄の始まりであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
註釈)
ここからは台詞メインの構成となる。
口語を忠実に再現した表記や、文語としての読み方を最適化した表記が混在しているものとする。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
般若:なんでしょう
まー:えっと、あのその、えっとここ1ヶ月近く、ってか1ヶ月以上ですか、あの無断で欠席してしまってすんませんでした
般若:うーん、うーん
まー:えっと事由、理由としましては
般若:うーん
まー:その最後の時に、ちょっと友達に色々聞かれたっていうのは言ったんですけど
般若:周りから聞いたね
まー:はい、その聞き方が般若さんと友達がちょっと似てたってだけなんですけど、どうしてもそれが、ちょっとほんとは違うんですけど、友達に持ってた苦手意識みたいなのがその、般若さんへの苦手意識みたいになってしまって
般若:うーん
まー:んでその、他の職員さんに相談するって手もあったんですけど
般若:うーん
まー:その、なんていうか結局、他の職員さんに相談しても般若さんにいくんじゃないかと思って
般若:うーん
まー:相談せずにここ1ヶ月ずっと引き篭ってましたね
般若:うーん、うーん、うーん…うーん
まー:で、なんとかならんかと外行ってみたり、あの知り合いに相談してみたりもしたんですけど
般若:うーん
まー:結局答えは見つからずもう1ヶ月も経ってしまったし、まあ督促状も来たので母親にも相談してこれを機にちょっと動いた方がいいんじゃないかって言われまして
般若:うーん、うーん、うーん、お母さんにどこまで説明してるの?
まー:えっと、もう1ヶ月来てないこととか
般若:デイケアに?
まー:はい
般若:はーん
まー:まあその間、体重増えたこととか
般若:うーん
まー:まあ体感的なもんですけど確実に増えているんで、まあそうやろって話でしたようなこととか、お金がほとんどないから般若さんの世話になってて今こんな状態になってしまっているということとかも説明はしました
般若:うーん、ふーんふんふんふーん、で?
まー:で…
般若:そんでもその1ヶ月休んでなにかあったん?成果は
まー:うーん、とりあえず…
般若:なんの1ヶ月間だったかは全然こちらはわからないから
まー:あー
沈黙。
まー:とりあえず面と向かって話せるぐらいには苦手意識はなくなったかなと思うんですけども
般若:うーん
まー:それも1ヶ月必要やったんかどうかはちょっと自分でもわからないです
般若:うーん
まー:ほんとは親とか全然関係ない人に相談してたらもっと早よう済んでたかもしれないんですけど
般若:うーん
まー:相談できずに
般若:うーん、うーん、でも苦手意識って別に相談して消えるの?よくわからない
まー:よくわからないです自分でも、でもよー考えたら別に般若さんが苦手って訳じゃなくて、その友達のことがあって。で、それでだめになってるだけやなって思うようになってからは少しマシにはなってたんですけど
般若:うーん、うーん、なんかそれとそのデイケアに来れてないということがまず今どういう、なんていうんだろう、自分がね置かれている状況というか、まあいうたらグループホームにおる以上、各種ルールがありますわね
まー:はい
般若:それら一切できてない、っていうまあルール、いうたら破りまくりやんね今
まー:はい
般若:うん。で、そもそも根本基本のデイケアに最低何回は来てくださいね、みたいなところもできてない
まー:はい
般若:うーん、状態で周りの人へのこう影響も出てきてる。ま、そんな中でどう考えてるん自分自身。今も昔も自室でご飯食べている人はまーさんが最初で最後くらい初めてよ。で、そういうのもなんか、そういうのはなんでそういうことになるんかな、なんでそうなるの
まー:まあ、※※さんと顔合わせるのが嫌で
般若:うーん、※※さんと顔合わせるの嫌ったって給食の時に合わせるやん
まー:はい
般若:だから避けされへんでしょ、それ
まー:はい
般若:ふっ、じゃないの?
まー:はい
般若:なんでそんな自分が作るものだけはなんかお部屋で食べるん?逆に
まー:いや作るっていうか、なんていうか
般若:まあ湯入れるだけかその、鍋で煮るだけか知らんけど、なんでそれをわざわざお部屋に持ち込む必要があるの?
般若:見られたくない知られたくないっていったって必然的に何食べてるか匂いでわかるし
まー:はい
般若:だいたい冷蔵庫の中にそんな野菜とか入れてない時点で何食べてるのか誰でも想像付くやん
まー:はい
般若:じゃない?はっwそんなもんww、隠すに値するのかなって話やけど
まー:はい
般若:で、そういうこともお部屋の中で飲食は、ルールとして禁止っていうふうになってるん違うん?
まー:はい
般若:前からみんなに言ってるようにあそこはその何、勝手に自由気ままにするとこじゃないのよ
まー:はい
般若:じゃないの?
まー:そうです
般若:お掃除もできひんとかやらへんとか、まあいうたら、なんていうんだろう、すべてこじつけにしか思えないっていうか、じゃない?だいたい。だって例えば私の事がその被って苦手意識に変わってっていうところは別にどっちでもいいけど理由として、じゃあ※※さんのこともまあ苦手っていうのはそもそもの関係性がよくなったりはしないんだから、まあそれもなんかいいとして、それとなに自分の生活態度がそこまで、なんていうんだろう、こうなにも無になる事と何がこう比例するの?じゃあお風呂に入りませんとか、お掃除しませんとか、まあ実室内もそういうふうに当然そこは正比例でたぶん掃除もしてないんだと思うけど、そういう事と。だから例えばリネンを付けてるんそんな状態で
まー:一応
般若:毎週リネン交換してるんかな
まー:はい、それもまあ週一で交換とか、リネン回収に量ったら自分でもしてるかどうかわからないくらいのことですけど、ああ一応は
般若:だからそのへんはもう確かめようがない感じやしねうちとしても結局、だからそういうところをなんかどう説明するのかなって。まあだから地域やったら確実追い出されてるけどお家賃3ヶ月滞納の時点でね
まー:はい
般若:うん、まあ民間のアパートマンションなんてそんなものでしょ。3ヶ月滞納でだいたい出て行ってくださいって話になるはずやから、だからそれはなんか、なんていうんだろう、こうこっちは待ってあげてほしいっていうお願いしてちょっとずつ払わなあかんでって話もして、で現在に来てるのに、まあそれを何?お友達と言い方が被ったという理由で、般若さんの事が苦手?じゃあ自分でしたらええやん全部。じゃないの、まーさん。そんな、いろんな事の責任をこっちに負わす、だけど自分の責任は果たさへんだと社会に通用するそれ
般若:って話じゃないの
般若:どお?通用する社会でそんなん
般若:それこそいうように、私の事に関してもそうだけど、そういうふうになんか何、苦手意識みたいなものが湧いたんやったらそれは絶対的にその、他のスタッフに言うべきでしょ。それで解決するかどうか知らんけど。それとそのなんか二週間も三週間も自室に篭ってっていうのはどう言ったら整合するの
再び沈黙。
般若:だぶんきっと今160のその元の状態に戻ってると思うんよ、その体重もどないすん。動くのしんどくないの。ねぇしんどくないん?
再び沈黙。
まー:うぅ
まー:しん、しん、しん、、、
般若:うん?
まー:しんどいです
般若:そうでしょうねー。もうたぶん一気に、そのなんだろう1ヶ月くらいか?ほんとに。で、たぶん、何十キロ?っていう感じで太ってるから、たぶんすんごい体に負荷がきてると思うけど。一気に痩せるのもあかんけど、一気にそうやって太るのももっとあかんと思うけど。身体負荷がもうたぶん掛ける何倍じゃないの、ふつうの。臓器とかいろんなところに。んで偏った食生活になってしまってるから、たぶん最悪のこう太り方やと思うけど、まーさんはどうしたいのこれから
般若:どうしたいんですか?これから
(どこかを掻く、掻き回す音)
般若:ね、どうしたいか、ひとつもなし?プランは?
般若:んー?ひとつもなしですか?
(外では、小鳥の囀りが聞こえる)
般若:じゃあ今の現状でいいってことなのかな?
再び沈黙。
まー:いや。良くはないと思います
般若:んー、今の現状で良くないったらどう、どう、どうするつもりなん
再び沈黙。
般若:ねえ、どうするつもりなの?まずは、とかないの?
(まーの呼吸音が室内を響く、車が通り過ぎる音、小鳥の囀りもあいも変わらず長閑かだ。ここ一番の長い沈黙である)
般若:んー?今のままではよくないっていうんだったらもうどないするのまず、なにから頑張るの自分
まー:ズズー
(鼻を啜る、長引く花粉症の影響だ)
般若:んー?
(キレ気味に言う)
般若:外出してないことも多かったと思うけど、外出してない日なんてどない、どないしよったん家の中で、部屋の中で。あそこに引き篭って何をしよったん。一日ゲームをして過ごせるのそんなん
(笑う)
般若:いやw、そしたら何するん、寝るん?寝て起きて、寝て起きてゲームしてってことなん?よーそんなんで過ごせるな毎日。それはちょっとそれで感心するけど、違う意味で。でもそんなん二日もしたら充分やけど私やったら。特に今言われているように、外出自粛の期間やからね今、不要不急の外出は控えるようにっていう話はデイケアでもずっとみんなにさしてもらってるところなんやけど、まあそれでなんかね、必要じゃない外出をそんな頻繁にされたら、まず何か持ち込んで来て何かみんなにあったら、まーさんだけじゃないんやね困るの。まあそういうのも今後考えて動かなあかんのにな、実際。もう色んな意味で今のまーさんの生活はもう最低やで、はっきりいって
般若:だってコロナの件なんていうのはこれ全国民がもう今、まあ世界と言っても過言じゃないけど、今敏感になってる。まあ、敏感にならなあかん時期だし、そういうまあいうたら流行病のように、まあそれでその意識もないようだし
般若:いつまでこう嫌な事とかがなんかあった時にそんだけ逃げるんかなー、まーさんは。なんでこう誰にー、もそうだけどちゃんと相談で、、、
(通信不良のため神の聴覚が及ばなくなる)
般若:、、、それは、なんでなん?別にいうたら一人二人じゃないやん周りの、なんていうの、解決する努力もしないってことやでそれは。例えばどの、なんていうんだろう、スタートでもいいと思うんだけど、どの点においても、なんていうん、こう、スタートも切らないというか、例えば精神的にしんどいでもいいと思うし、もうどうしていいかがわからないでもいいと思うし、さっきなんか冒頭に仰ってたようになんか友達の、こう、件と般若さんが被ってのとこでもいいし、どこの点でもいいけど、なんていうんだろう、いずれにしたって適切に動けてないよね?まあいうたら、それを避けてというか、先延ばしにしてって、それでいいことが今あるんって聞いてるのよ、だから、まーさんにとってこうプラスになることが一つでもあんの?どうなん?一つでもあったの?なんか
まー:ズズー、フンフンフンフン
般若:この何週間かそのいい事あったの自分にとって、一個でも、どうなの?
般若:どうですか?まーさん。ありました?一個でも
(別の職員が入ってくる、般若に何かを手渡す)
般若:あ、ありがとうございます
般若:なにかあったのいい事は?一つでも。あったの?
まー:うーん…
長い沈黙。
般若:で?
(短くも重い一撃を放つ)
般若:今日、朝とか昼とか、食べてんの?ちゃんと。今日とか食べたの、朝とか昼とか
まー:は、はーい
般若:じゃあなんかあんの?ねえ、朝とか昼とか、食べるものはあるん?
まー:はい
般若:すごいな、お母さんよくくれるねでも、ふっw、それはお母さんなんのつもりでくれたん、お金は、なんのつもりでくれたのお母さんって。な、どういうふうに説明してもらったん。逆に
まー:んー
般若:え?聞かなあかんお母さんに、電話して、わざわざ、どないどなんしてどなあゆうてもらったんそれは
まー:いや、行けてないから
般若:ん?
まー:行けてないから、お金がないって
般若:あー、デイケアに行けてないから?
まー:はい
般若:はーはーはーはーん、んでそれでお母さんほな、とりあえず1万5千円、2万円?知らんけど。ほな持って行くわーってなったん?
まー:最初はちょっとやったんですけど、それが重なってそんぐらいに
般若:うーん、うーーーん
まー:んで、お金を理由付けて
般若:うーん
まー:で、時々行ってるみたいにいうて貰いました
般若:時々行ってっていうのはデイケアに?
まー:はい
般若:ほー、デイケアに時々行ってる、けどお金がないみたいなこと?
まー:はい
般若:うーん、よーお母さんくれるなー
まー:うーん
般若:それはそれで、ブフwあかww、あまw、甘いなお母さん。ふーーん、でこの先どうするの?まーさん。この先どうしますかぁ?
RRRRRRR
電話が鳴る。
般若:どうする?
RRRRRRR RRRRRRR
3回目のベルで受話器を取った般若。
般若:はい、般若です。はい、はい、はい、、、、はい!
般若が中座して部屋の外へ。
般若:わかりました、ありがとうございますー、はい、了解ですー
般若戻る。
般若:で?どうするの?まーさん
沈黙。
般若:ん?だってさっそく明日からまた今日一週間スタートの月曜日だから、明日からまた生活始めなあかんのにどうするの
般若:ん?どうするの?
般若:何に今困ってるの?
般若:ん?
般若:別に困ってる事とかないの?
般若:へ?ふふw
般若:どうするのー?
般若:ん?どないしますかー?
般若:家に帰りたい?
般若:うーーーん、しないといけない事はわかってるの?へ?わからない?へぇ?フッw、できるかどうかは別にしても、しないといけない事はわかってるの?自分で。それもあんまりわからない?
般若:ん?
般若:ん?(不気味に優しい声で)どうなの?
般若:今まーさんは何を考えていらっしゃるの?
まー:んん
般若:考えてる事を話してもらわないと先にも後にも、全く前に行かないんだけど!
まー:うぅ
般若:ん?
般若:その涙は、まーさんはなんの涙やそれ、しんどかったなーって涙?それともー、現状しんどいなってこと?情けないなってこと?
手指に付いていた玉ねぎの乾いた汁を、まーは誤って眼に触れてしまったに過ぎない。
まー:ズズー、ズズー
般若:ん?
近くで門扉が閉まる音が響く。
般若:ん?
まー:ズズー
般若:明日からデイには来られそうなの?そんで
まー:んあー
般若:え?来られそうなの?って聞いてるんですけど?
まー:んー
般若:へ?どっち?来られそうなんですか?ってだから
カラス:カァーカァーカァーカァーカァーカァー
般若:ん?来られるの?ん?どうですか?
般若:どう?明日から来られそうなの?デイケアには?
般若:来られそうにない?
般若:ん?
まーの呼吸音が響く。
般若:んー?ぶっw、デイケアに来れるかどうかもわからないの?
般若:ん?
般若:ん?来れるかどうかわからない!?
般若:ん?
まー:わからないです
般若:わかんない!?どうするんじゃあ?
まー:わかんない、です
般若:このまま一週間に、一回も来れないのがっていう日が、続いたらもう退去の話が上から来ると思うけど。あたしの段階じゃなくて、上からそういうふうに退去してくださいっていう話をし、されてしまうと思うけど!
まー:あぁ
般若:そうやったらまーさん、自宅に帰らないといけないけど、それ大丈夫なのかな?ご家族さん大丈夫なのかなそれ
般若:ん?でもそうなっちゃうけど
般若:大丈夫なのそれ?家は。だって行き先ないもん、どうするの?
まーの呼吸音が響く。
般若:ふぅ
般若:どうする?まーさん。自分で自分の首を絞めてるのにどうするの?
般若:デイケアにー、来れるかどうかわからないっていう理由はなんなん?
般若:理由
般若:理由!
まー:わ、わ、
般若:ん?
まー:わかんないです
般若:わかんない!?朝起きれるかどうかがわから、あのー、わからないとかそういうことー?
まー:んん、んん
般若:その、わからないの理由によるんじゃない?
般若:ん?理由によるんじゃない?プログラムに参加できないってこと?
まー:んんー
般若:理由によるんじゃん、だから、だいたい
般若:えー?
般若:んー?
般若:ん?
般若:ん?
般若:んー!?来れないってなったら、まーさん、そうなるんだけど自動的に
まー:ふー、ふー
般若:どうします!?
まー:ふー、ふー
沈黙。
般若:ん?どうしますか?
般若:まーさん、困るだろうけど、私も間に立って困ることになるんですけどぉー
般若:ねぇ、困ってることとかないの?
まー:すー
般若:特にないのかな?
般若:ん?
般若:どうしようかなー、どうしますか?
中座する般若、飲みかけのカップを片付けにいったのだ。
待つ事しばし、やがて戻りつつその一連の動作の流れの中で言う。
般若:どうするまーさん、ちゃんと答え出してよー
さらに中座、どうやら帰り支度をしているらしい。
この間、まーはスマホをチェックする。
ファーストフード店の期間限定割引がないかの確認を怠らなかった。
般若の右往左往する足音が耳を劈く。かなりイライラしげな様子だ。
ピッ。
電話:ただいま、電話に出ることが、できません。ファックスをご利用の方は、送信ください。電話の方は、ピーという音に続いて、お名前と、ご用件を、お話ください。
施設、本日の業務終了である。
般若が戻る、足音はさらに鋭さを増す。
般若:んー!どうする!?
今日イチの咆哮を放つ。
般若:もっかい立て直さなあかんとは思ってんの!!!?
まー:は、はい
般若:それは思ってるんやね!?
まー:はい
般若:デイケアにはほんで、来れそうに、、、来れそうにないのは、わからないっていうのは、自信がないみたいなこと?
まー:はい
般若:え?
まー:はい
般若:自信がないみたいなことって言われても、そりゃあでも、やー、やるかやらないかは自分でしょうねー、誰も代わってはもらえないからね、そういうのは
まー:はい
般若:うーん。来れないイコール、それで退去ってなるけどそれはそれでいいの、だから
まー:ふぅ
般若:それはもうそれで仕方ない!?
まー:う、んー
般若:それはでもまーさん、あたしの判断じゃないからね、そうなったら、さっきから言ってるように
まー:はい
般若:うーん、あたしより上の、方々の判断になるから、当然、それは
般若:どうするの?
カリカリカリカリカリカリ・・・
まーは体を掻き回す。
般若:もう現状なー、そうやって、このままじゃあかんっていうのが少しでも自分にあるんだったらなんとかするしかないからね、それは
まー:はい
般若:うーん、じゃないの?そんなぐずぐず言ったって、何も待ってくれないわー、もう散々待っての何週間もやんか、これ、じゃないの?
まー:はい
般若:うーん、みんななんだかんだ言ってしんどいって言いながらそういう、まあ、なんていうの、こうルールに則ってみんなやってるで、やることは、最低限
般若:だからデイケアにも来れないイコールってことじゃないん、そうやって生活リズムも狂うし、まあいうたら、動きがない分肥えるし、ってことじゃないん?
まー:はい
般若:それに自分にとってなんにもこうプラスになることがないと思うけど、どう見ても
まー:はい
般若:それ楽か知らんけども、楽とも思えないよなその今の様子見てたら。結構しんどいんちゃうの?それ、その生活。一日時間経つの早いんそれで?時間感覚とかあるん?まーさんのその生活、今。時間の感覚あんの?朝、昼、晩みたいな。もうこの何週間も来てない訳でしょ!
まー:はい
般若:うーん、それ時間感覚とかあんのって
まー:んんんんんー
般若:お腹が空いてー、目が覚めてー、なんか食べてー、でだらだらしてー、昼食べてー、とかじゃないん?
まー:はい
般若:お腹が空くから起きるだけじゃない
まー:はい
般若:んー、カロリーも使ってないのにカロリー摂取するからそんだけね、おっきくおっきくそりゃぁなるわね
まー:はい
般若:うーん、だから太いのはな見た目だけの話じゃないからね、言ってるように、それこそ、心臓かってそうやし、いろんなとこに負荷がかかってますよー
まー:はい
般若:まあ、忽ち、また腰痛起こすと思うけど
般若:はぁ…
般若:で、どないするん?どないしますか?ちゃんとこう、結論を持ってきてくれないと
般若中座、帰り支度を続ける。
どん、どん、どん、どん・・・
まーの怒りが頂点に達し、デスクを野太い指で叩く。
シャーシャーシャー
般若がブラインドを閉める。
般若:どうすんの?
般若:もちろんな、支払いはしてもらはなあかんで
まー:はい
般若:それはね、それブフォw、それ最低限じゃなくてそれしないってことになったらもう、いるいないうとかいう次元の話でもないしって話なんやから、当然なんだけど!まあそれは、通帳残高、見てー、払えるとこからって話なんやけど。うーん、うちのこのグループホームっていう箱物はそういうこう、決まりがあるからね、そもそも、ま、ずっといてもらうとこじゃないよとかっていうのところと、そういう、デイケアに週何回はって、お願いしますねっていうのはもう決まりになってるから、そこは
まー:はい
般若:で!?明日から来れるのかしら?
般若:わからない!?
まー:はい
まー:というか
般若:うん
まー:僕が決める決めない関係ないんじゃないかなーって
般若:だから決める決めないじゃなくて…
まー:やればおい、これ、来れるし、やらなきゃ追い出されるだけで
般若:うーん
まー:僕の、意思なんてそこに関係ないんじゃないかなって
般若:いや、意思っていうか、自分が、まあもう、なんていうんだろう、頑張っていかなあかんなっていうので、ならないと、結果はもう見えてるんじゃないのって話じゃないの?それいうならば
まー:うーん
般若:うーん、じゃあ自分が家族に迷惑をかけてはいけないとか、自分が実家に、というのか自宅というのかわかんないけど、帰るっていうことが、まあいったらしたくないとか、できないと思うんだったら自分で踏ん張るしかない訳でしょ、じゃないの?
まー:はい
般若:だって、まーさんの、なんていうん、まあいったら、最低限しないといけない目標っていうの、自立じゃないの?正直
般若:だってそのいつまでもー、いつまでもー、親御さんも元気じゃないからね、だから。やしー、そんだけお父さんにこう、なんていうん、喧嘩売ってというか、そういうこう、態度取っといてじゃあ家に帰りますっていう話にはならないと思うけど、普通は。でもそれでもまーさんが頭下げてでも家に帰るっていうんだったらもう※※どうにもならないけど。だって結果がもうそうやって、出ちゃったら家に帰るって選択肢しかなくなってしまう訳でしょ。とりあえずというのかわかんないけど、じゃないの?だから選択肢で聞いてる訳じゃなくて、やけど、別に、まーさんに選択肢を問うてる訳じゃないんだけど。やるのは自分やでっていう説明をした上で、どうするのっていう話なんだけど。もうそのー、なんていうんだろう、こう、やれー、やりますとかやれますとかっていうことすら言えないってことはもう結果なんてもう見えてるんじゃないのって思ってるけど私は、そんなん。だって嫌なことなんて山の如くしあるし、生きてたら。果たしたくないことだって、しないといけないってなったら、果たさないといけない責任も、出てくるし、社会人になったら。それでも今、最小限、最低限しかないよー、まーさん、今。それでも目先のなんていうんだろう、そのー解決すべきことから、こう、なんていうの、目を背けるというのか、そっから逃げるというのか、じゃないの今って。そんな気がするけど
般若:じゃあどうするのって聞いてるの
般若:単純に1ヶ月休んですいませんでしたー、じゃないと思うでー、そんなん
別の職員が何某か用事で入ってくる。
般若:はいどうぞどうぞ、はいはい
(職員出て行く、と同時に)
般若:と思うけど
般若:ほんとに、デイケアに迷惑をかけてるとかかけてないとかじゃないからね、正直。その自分で自分の首を絞めてるだけのことやからもうやってることは、すべて。誰が困るって自分が困る話よ、まーさん。困るのはあたしじゃないよ、巻き込まれるのはあたしじゃない。一番、まあいうたら巻き込まれるのは家族さんやん、最終的には。ご自身の、その、なんだろう、今の、状態っていうのは、巻き込むのは家族さんやん、すべて。自分の息子のこととはいえ、そういうことやで、まーさん。考えなあかんのは。自分の行動に責任取るとか責任を持つってそういうことやけど、最大限、自分の中でこう、なんていうんだろう、困ったりするのはいいけど、その尻拭いを家族さんにさせるなんていうことはもう、うーん、もうこれから先どんどんそういうことをなくしていかなあかんの違うの?そろそろ
般若:私は、たぶん至極当たり前の話しかしてないけどな、今も
般若:少なくとも選択肢ーの有無については、なんていうんだろう、選択肢ー、があるかないかっていう話をした覚えもないし、そういう状況だけど、頑張る気はあるのかっていう話やけど、即ち、どうするのっていうは
般若:だって本人がなんか立て直す気もないのに、立て直しますとかったってそんなもん話にならへんやん
般若:そういう…患者さんたちだってまあみんな一緒やけど、入院してる人なんてリハビリの結構、なんていうん、いる人たちが多いから。とりあえずなんか自分がやる気になって一歩ずつ進まないと話にならないじゃん、そんなもん、はっきりいって
般若:じゃないの?
ブラインドを閉める、帰り支度の続きだ。
般若:前もまあいうたけど、ここで、まあ例えば、プログラムに入るのがしんどいっていうんやったらまあとにかくここに来て過ごさなあかん違う?まず自分みたいな人は。プログラムにいきなりがっつり入るかどうかは別としても、とにかく9時半にはもうここに入れて、3時半までちゃんと日中居れるってことからせなあかんの違うん?そんなこともせーへんっていう話なん、じゃあ。すごい1時間もそこらかかるところに通えって話じゃないし、そっからここでしょー。そんなところからいうたら努力もせぇへんし逃げて何になるん?自分が困るのはいいわ、そんなもん家族さんの迷惑考えてー、だから。まずはそこ違うん?そこのノルマみたいなもんや、そこは達成できな次のステージなんかあらへんよ。通常の、なんていうん、きちんといろんなことが普通にできるまーさんには戻、戻られへんでしょそれになると、違うん?
般若:違う!?
まー:いえ…
般若:とにかく、一日一日そうやってやっていくしかないんじゃないの?
まー:はい
般若:とりあえず生活リズムって付けていかなしゃあないやん、そんだけ、もう乱れまくってるんやから。で、この何週間ここに誰かと接点持ってるん?お母さん以外。誰かと話したりしてるん?
まー:いえ、そんなには
般若:いや、それこそなんかその変な友達じゃなくて、たまに電話してきたその変な人じゃなくって、普通にお友達とかも話してんのちゃう?
まー:はい
般若:そんな不健康な生活してて、こう、健康になるはずがないよね?じゃない?普通に考えて自分で、そのぐらいわかるん違うまーさん、こんな生活してたら健康的じゃないよなって、わかるん違う?
まー:んー
般若:そんなことないん?
まー:んんー
般若:それが楽な訳?え?どっちかやと思うんやけど。もう何も考えてない?毎日
まー:そんなこと、考えたこともなかったんで
般若:え!そうなん!な、ただなに、時間が過ぎていくだけってこと?毎日
まー:はい
般若:ほー、で何も考えずに過ごすん、っていうけど、こう支払いとかってこう最低限すべきこともしてない訳でしょー、それはどういう神経に基づいてそうなるんかな。だって、まーさん、お分かりだと思うけど、この通帳とかキャッシュカードなー、こんなもんあたしが勝手に下ろしに行くことなんも、でん、できひんよ。暗証番号当然知らないし、じゃないん?
まー:はい
般若:そな、どないしてあたしがそれ支払いの算段をするん?そんな話を最終日にしたと思うけど、あなたが来なくなる前、まーあったら、当日の日か、勝手に帰って、まあまあ、しまった日にな。そういうのも考えていかなあかんのよって話を、その話をしたつもりなんやけど、その言い方がその人と被るじゃなんじゃいうていうけど。や、ま、やらなあかんこと目の前にあるって話はさしてもらったと思うけどそん時も
まー:ん、ん
般若:覚えてない?
まー:はい
般若:そんな、そっからもう放置やでんな、そんな支払いという最低限しないといけない、ま、食い逃げとかと一緒やで、結局。お食事とか摂って、こう家借りてるのにそれも払わんとっていうもんやからな、これ福祉施設やからそれ、こうやってまだ罷り通るだけで、だから民間がそうやったら即連帯保証人のお母さんに連絡いって、どうにかしてください、退去してくださいの話やけど、普通に。もう最低限そうやってせなあかんこともなんかまだ覚えられてないんかなみたいな感じやで、まーさん。今の現状。で、当然みんなもそうやけど、こういうところにおる人って、例えば精神的にもそうやし、肉体的にもそうやけど、しんどくてできないんだったらしんどくてできないっていう最低限伝えなってことはせなあかんやん、それも自分の義務であり責任でしょうよー、そんなん。でないとわからへんやん、周りには、どないなっとんか、じゃないの?違う?
まー:うー
般若:え!?違いますかー?
まー:いえ
般若:だいたい、でデイケアの人がなに、聞きに行ったら聞きに行ったで、それはしんどいじゃかなんだか言って。で、聞きに行かへんかったらこうやってもうずーっともう、なにをしよんか知らんけども、ずーっと部屋に引き篭もってこうやるべき最低限のこともせぇへん訳やなこうやって、これどうしたらいいのこっちは!逆に聞きたいわ、まーさんに!デイのスタッフはどうしたらいいんですかみたいな。行ったら行ったでそうやってそれが苦痛やとかっていうし!で、かと言って自分で仰ることもしないし!それまーさんじゃなくてこっちが泣きたいわ!正直。心配したらそれが迷惑なんでしょ?要は。デイの人が来させたいだけやんみたいなことなんでしょ、結局捉え方は。そうなんでしょ、まーさん。人のなんか思いやりをこう逆手に取るっていうかそういうのも大概にしてほしいわなそんなん
沈黙。
般若:みんな大丈夫かなーっと思って心配してますよ!みんな。まーさんにはそういう思いが人に対してないのかもしれないけど、みんな心配してますよ、施設スタッフは。まーさんがそんななんか、ちょっと微塵も思ってないんだろうけど
沈黙。
般若:まーさんはそんなんわかってないんでしょ全然、スタッフのそういう思いというか、こう、全然。わかってんの?わかってないの?知らなかった?わからない?どうですか?ん?どうですか?
般若:わからない!?
般若:今初めて知った!?
般若:わかってた!?
般若:考えたこともなかった!?
般若:だってまーさんは心配しません?そんな人がいたら、おんなじグループホームの中に。心配しませんか?例えば※※さんとか※※さんとか、そのへんがそんなことになったら心配しません?普通に。
般若:しない!?
般若:興味ない!?
般若:大丈夫かなって思いません?普通に
般若:思わない!?
般若:ん?
般若:思わない?
般若:ん!?どうですか?まーさん、そのへん。言ってることの意味はわかるの!?
まー:たぶん
般若:うーん
般若:今のその自分自身の、こういろんな状況って、今まーさんにとって健康なの?
まー:うう
般若:で、なんとかしようって気はあるの?健康じゃないなら、健康じゃなくてそのままでもいいの?
まー:すー、ふー
般若:ねえ、なんとかしないといけないっていうのはないの?そのまま不健康でいくの?で、どうするかはまたさておいてよ、なんとかしないといけないんじゃないの?
まー:ふにゃー、しー
般若:それしんどくはないの自分で、だから、今の状態
まー:ないです
般若:え!?しんどくはない?
まー:ないです
般若:ない?あります!
まー:しんどいような気もするし、そうでもないような気もする、まあよくわかんないです
般若:うーん
まー:そんなしんどかったらやめてるでしょうし
般若:何を?
まー:そんなしんどかったらこんな生活してないでしょうし、でもずっとこんな生活もなーとも思いますし
般若:うーん
まー:どっちなんでしょう
般若:うーん、うーーーーん、しんどくもない訳やな
まー:ずっとしんどかったらたぶんこんな生活はしないと思うんですけど、でも
般若:うーーーん、そうかな?
まー:んん
般若:そうかな?(消え入る声で)そうかなー…
般若:うーん
般若:で、どうするかやなー
まーの呼吸音だけが響く。
般若:んじゃー、引き篭もりの生活を続けるのーずっと、この先も
まー:いや、なんとか来れるようにしたいんですけど
般若:うーん
まー:どうやって来れるかいうたらちょっと
般若:うーん、絶対来れるかどうかっていうのは自分自身の問題でしょ、だから
まー:うん
般若:いや絶対…
まー:それは今の気持ちなら来ると思うんですけど
般若:うん
まー:またなんかあったら
般若:うーん
まー:って思うと
般若:うーん
まー:絶対とも言えないというか
般若:またなんかっていうのはなんなん?例えば
まー:いや、何かはわかんないですけど、その時次第だと思うので
般若:住宅の中とかでってこと?だって今日…
まー:何かはわかんないですけど
般若:明日までへーw、明日までの時間ってそんなにもうない、ないやん。他ご飯食べてーっていってぐらいなとこ、ところかなーみたいな、人との摩擦ってそんな、まあいうたら、ないと思うけど
まー:んー
般若:何きっかけかがわからないから、それはあれやけど、まあいずれにしてもそれ乗り越えなあかんとこやからな自分が
まー:はい
般若:うーん、そんなこと言い出したらこの先もいっぱいあるもの、躓く石はいっぱい落ちてると思うけど
まー:はい
般若:うーん、だからそん時に自分がどうしたら楽になるかとか、どうしたらその、なんだろう、こう引っ掛かったり躓いたりしたものを、なんていうん、一日でも早くというか、少しでもなんていうの、回避できるかというか、だと思う
般若:だから、方向考えるのは周りがこう手伝いできても、自分自身が、それは、それを選択できなあかんでしょ、だってまず。こんな方法がありますよーっていったって、まーさんに合ってないと、適してないと意味はない訳でしょ、結局なんでも
まー:はぁい
般若:うーん、だからやっぱ自分次第なんじゃないの?一緒に考えたりとか聞いたりっていうのは、なんていうの、周りの人が一緒にしてくれると思うけど。だからお金だって一緒じゃないん?だから。これどうしていくこうしていくとか、どうやって返していくって算段はさー、周りが協力できても、最低限あなたがこれお金下ろして来ないかんのに、その算段できないし、話やから
まー:はい
般若:うんー、その最低限を今まーさんがやってない、全部において
般若:だからそのやる気が出ないのを、じゃあその、例えば、主治医の先生?
まー:はい
般若:…は、なんて仰ってるのー?
まー:ちょっと、タイミング的に、話せなくて今まあ、1ヶ月過ぎてますね
般若:え?コロナでってこと?
まー:いや、ちょうど僕は、一回だけ行けるようになって、行けるようになりましたっていうたんが
般若:うーん
まー:最後の日と一緒やったんで
般若:うーん
まー:ちょうど1ヶ月まるまる、主治医の先生と話してない、というか連絡も入れてないから
般若:ほー
まー:まあ、定、定期的なやつ、が今週の末あるからっていう感じですかね
般若:ほー、今週末にじゃあ通院すんの?
まー:はい
般若:うーん、お薬はあんの?
まー:薬は、はい
般若:うーん、そういう、そういうのをさぁ相談、しないといけない先じゃない
まー:はい
般若:逆に。普通そんな状態になったらもっと早く普通みんな受診するけどな
まー:はい
般若:お薬が切れるから受診のタイミングじゃないと思うけど(半笑い)
まー:はい
般若:うーん、うーん、基本的にはたぶんその不調とか不具合とかっていうやつやけどな、そうなったらたぶんその前倒して行くべきやと思うけど
般若:だって自分だけでさ、なんともな、ならないんでしょ、結局は、じゃないの?なんにしたって
まー:あーあー
般若:答えも出ない、やる気もない!無!みたいな状態でしょー?それって
沈黙。
般若:ん?違うん?
般若:これそんだけでも思考回路が止まってたらもう、かなり状態的には、よ、よろしくないんだけど
まー:あいー
般若:えー?じゃないの?
まー:はい
般若:とりあえず一個一個じゃない?
まー:はい
般若:やっていくしかないっていうか、やっていかないと通常には戻れないというか
まー:はい
般若:うーん、な気がするけど
般若:まずは一日、一日、一回一回っていうのかわからないけど。まずは生活リズムを付けないといけないんじゃない?
まー:はい
般若:まあ、とりあえずあのー、言っとくけど、不要不急の外出は今ね、このコロナのご時世、控えて頂いてるからね
まー:はい
般若:うーん、とりあえず、デイケアに来ないってなったらじゃあ明石に行くって話にはならないし、だいたい兵庫県もすごい増えて来てんのに、減ってはないから
まー:はい
般若:うーん、まーさんがどっかからもらって来て、こっちで拡めてもらったらとんでもない困ったことになるから
まー:はい
般若:うーん、持病がある人も多いのに、シャレにならないよそんなん
般若:とりあえずあのー、そのお支払いせなあかんから明日、ちょっと郵便局行かないといけないから、今日行けなかったから
まー:はい
般若:うーん、だから明日行かないといけないし、郵便局でもゆうちょ銀行、行かないといけないから
まー:はい
般若:とりあえず、明日はもうちゃんと来れなあかんよ!
まー:はい
般若:うーん、まずそっから違う?
まー:はい
般若:うーん、とにかく、プログラムに出なくて自主活動すんやったらそれでもいいけどー
まー:はい
般若:とにかくもう、なんていうんだろう、ちゃんと参加できなあかんちゃいます?
まー:はい
般若:まーさん、そっからじゃないかなー
まー:はい
般若:うーん
般若:いい?それじゃあ
まー:はい
般若:もう、とにかくそっからね、まずは
まー:はい
般若:うーん、だから、明日来てー、起きてー
まー:はい
般若:ゆうちょ銀行に行ってー
まー:はい
般若:お金下ろしてー
まー:はい
般若:お金の話もしないといけないしー
まー:はい
般若:生活を立て直さないといけませんから
まー:はい
般若:とりあえず、今日もちゃんとお風呂入って、髭剃ってとかしてもらわないとなー
まー:はい
般若:うーん
般若:うーん、まあいろんな話をしてもしょうがないから、まずはそっからです
まー:はい
般若:オッケーですか?
まー:はい
般若:うーん、じゃあもう、あし、明日ちゃんと来れるように、早く今日は寝てください!
まー:はい
般若:はい、したらまた明日ね
まー:はい、あとこれ、新しいやつ
般若:なあ、はいはい、わかりました
こうして、まーはその長い戦いを終え、施設の外へと開放されたのだった。
だが、この時既にまーには”とある腹案”を持っていたのだった。
まーの砂利道を歩く足音と風の音、そしてまーの呼吸音が綯い交ぜになり、拡がっていた。
「疲れた…反省会は…7時頃にします
それでは皆さん、さようなら」
了