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45 ミリア、実家へと帰る。

 二人目の宿痾操手との戦闘を終えて、少しずつ私達は変化を迎えようとしています。

 こんにちわ、ミリアです。

 寝取られ滅ぶべし、悪は去った、いや私という悪が塗りつぶした――えっへんぶい。


 とりあえず、戻ったらまずは一旦アツミちゃんがお疲れだったので休憩しつつ学園へ戻り――カレーはとても美味しかったです。けぷぅ――そこからは今後の話。

 クロアちゃんはライアさんと同じく学校で眠ってもらっている。私達はとりあえず元の生活に戻ることになる……のだけど、やはり問題は敵の存在。


 宿痾操手。

 アイリスと名乗るその女の子は、どうやらあのイケメンたちよりも遥かに強い存在らしい。イケメンたちは私ならなんとかできる程度の戦闘力だけど、それ以上となるとどうだろう。

 もっと言えば、既に二人のイケメンをすりすりしたわけだけど、残りの操手は何人いるのだろう。アイリス以外に複数人いたとして、その強さは?


 謎は多いし、皮算用は厳禁だ。かと言って過剰に警戒しすぎるとこっちからは何も手が撃てなくなる。ということで、人類は考えた。

 人類全体は警戒を強めつつ、私は楽観論で主要な敵が残るはアイリス一人だと想定して行動する。


 正確に言うと、アイリスと同等の力を持つ敵がこれ以上存在しないという前提だ。というか、もしアイリスが二人いたら人類は片方が私を相手している間に人類は滅びる。

 なので、アイリスは一人しかいない。他の宿痾操手はいても弟たちと同レベル……という想定。まぁアイリス自身が自分が完成品と言ってるし、必要ないから殲滅したとも言ってるから、アイリス以外に主要な宿痾操手はもういないのだろうけど。


 それはそれとして警戒は必要だ。

 というか私の想像が正しければ、あともうひとりいる。……あれを宿痾操手といっていいのかは判断に困るけど。


 なので人類は防御を固めつつ、残るアイリス以外の操手に警戒する。私はアイリスとの対決を想定しつつ、準備する。シンプルだけどシンプル故にわかりやすい作戦だ。

 それが決まってから、私は自室で色々と準備をしていた。

 時期は夏頃――気象がぐちゃぐちゃになってて、この世界の四季は存在しないのも同じだけど、あくまで私の認識として――魔導学園アルテミスは、最初のステップを終える。

 座学における基本とも言えるカリキュラムを修了し、いよいよ実技と演習に比率が上がるのだ。


 そこで、一度私達は長い休暇を与えられる。だいたい10日ほど。その間に私達戦姫は、本部のある中央都市にでかけて休養と本部見学をしたり、各々部隊で計画を立ててパーティをしたりする。

 まぁ、何にしても部隊の絆を深めるための休養期間だ。

 思い出を作るためのその期間で私は――



「みなさん。ミリアは実家に帰らせていただきます」



 荷物をまとめて、皆の前で挨拶をするのだった。



 <>



「そうか、土産は買ってこいよ」


「どうして、ミリアちゃーん!」


 シェードちゃんとアツミちゃんの反応が極端だった。


「何が悪かったの? 改善するから、教えてよぉ! オ風呂に入ってるときに体を洗うって言ってちょっとボディタッチが深すぎた? 一緒に寝ると熱くて寝苦しかった? ねぇミリアちゃーん!」


「めんどくせぇ彼女かてめぇは!!」


 ボディタッチ多めは私は気にしませんが、気にする人はいると思うので控えたほうがいいと思いますよ! それはそれとして


「いえ、帰るとはいいますが、できればシェードちゃんとアツミちゃんには付いてきてほしかったりします」


「……ってーと?」


「ほら、私と円環理論実践できるのは、まだお二人だけじゃないですか」


 そもそもの話、私が実家に帰るのは色々と理由がある。

 まず一つ、顔を見せたい相手がいる。家族のこともそうだけど、この間話をしたランテちゃんのことも。できれば仲間たちには紹介したいのだ。

 ただ、もう一つの理由からそれは憚られる。私が学校を離れるのはアイリス対策でもあるからだ。


「私が学園にいると、アイリスが学園に襲撃してくるかもしれません。ので、これを機に一旦距離を取ることに決まりまして、どこに行くかということで実家に決まりました」


「ふぅん、どれくらいだ?」


「とりあえずは当分実家ぐらしですね。ミリア隊に関しては、私が外れることで結果として普通の演習カリキュラムを進められるってすんぽーですよ」


 なので、他の子たちは連れていけない。アイリスが学園に来る可能性? 学園に来れるなら本部に行った方がいいんじゃないですかね。イケメンの件もあって、重要施設はどこも警戒度マックスですよここ最近。

 一箇所に集まって防衛と決め込んでもいいですが、そういう選択は取らないと人類は選択しました。

 現状、どこを攻撃されても一緒なのだ。私がいる場所は守れても、私がいない場所を攻撃されたら大きな被害が出る。そもそもアイリス相手に私がいる場所を守れるかも不明。なら、私を遠ざけてそこにアイリスが来るのを待ったほうがいい。


 そういうわけで、私は人の少ない場所に行って、他の場所を人類は全力で守るのが現在の方針なので。これでアイリスがでてこなければ、こっちから打って出ようって感じだ。

 どこを攻撃されてもいち早く私が動けるように待機する、という意味もある。


「例外が、円環理論が使えるアタシとシェードってわけか。ずっとそっちにいるのか?」


「一応、アツミちゃんたちは今回の長期休暇の間だけの予定です。それ以降は、時間が会いたら様子を見に来てもらう感じで」


「あいよ」


 なので、私とシェードちゃんとアツミちゃんは、休養期間中、私の実家に来てもらいたいのである。


「うーむ、まぁ今の所普通の学生戦姫でしかないアタシたちがついてけないってのは当然ッスけど、寂しいっすね」


「お土産話……聞かせて……ね?」


 と、残念そうにするのはカナちゃんとナツキちゃん。

 二人は特になんでも無いように言うけれど、驚いているのはハツキちゃんたちだ。


「実家って帰っていいものだったの!?」


「いや、一般的には非推奨よ……? でもミリアの家が一般的なわけないでしょ……?」


「……なるほど」


 驚きつつも失礼なことを言っている。

 いやまぁ、そもそも私だからというわけではなく、姓持ちの家は特殊なんだけど。


「ローナフもグランテも、戦姫を生み出すための家系だ。最初から戦姫が生まれてくるってわかっていて、専用の教育をしているし、何よりそこから輩出された戦姫は次代の戦姫を育てる必要がある」


 つらつらとアツミちゃんが語る。

 なんかアツミちゃんっぽいくない!


「おいもう一度言ってみろ」


 ひゃああああこっちの心が読めるようになってるうう!!


「……いい加減てめぇの擬音思考にもなれたっての。まぁいい、姓持ちの家系は次代につなげる必要があるんだから家とのつながりはそのままで当然だろ」


「なるほど……」


 言われてみれば、かなり現実的な理由だったので、ハツキちゃんたちはすぐに納得した。

 次代、次代かぁー。

 前世の記憶のせいか、あまり色恋に興味を持てない私ではありますが、そうなると一人で育てる……? アレなんかクローンみたいで倫理的に忌避感が……でもうーむ。


「なんかすげぇよくわかんねぇところに思考が飛んでるやつがいるが、それはさておき、そういうことならアタシは構わねぇぞ」


 はっ。


「いやてめぇじゃなく……」


 思わず正気に戻った私はまずい、と思いましたがアツミちゃんがいいたいのは私じゃなかったみたいです。ちらりと視線がそちらへ。



 シェードちゃんが机の下に挟まって膝を抱えていました。



「ぶつぶつぶつぶつ」


「こわっ」


 思わず叫んでしまったカナちゃんは悪くない。

 全身からすごいオーラを出しつつ、なんか真っ黒に染まっているのはなにかの術式ですか。私じゃないんだから変な術式を生み出さないでください。

 アツミちゃんから私化が進んでいると言われるシェードちゃんが、それはもうすごい勢いで沈んでいました。


 あわわわ。


「慌ててる場合か、なんとかしろ」


 ばっしーん。

 アツミちゃんに押し出されて、机の下に埋もれているシェードちゃんと向き合います。


「シェードちゃん」


「ミリア、ちゃん……?」


 膝をついて、目線を合わせて、ふっと笑みを浮かべました。


「私、シェードちゃんを実家に紹介したいんです」


「……ふぇ!?」


 周りから歓声が上がった。アツミちゃん以外の面々はなんだかんだ付き合いがいい。


「シェードちゃんのその透き通るような金髪も、可愛らしい顔立ちも、なまらおっきいでかぺーも、私大好きです」


「最後のいるか?」


 突然のセクハラ、流れるようにおっぱいを褒めてしまった。ママにすがりたい気持ちを抑えきれなくなっているのかもしれない。


「ミリアちゃん……」


「お前は冷静になれ、セクハラをスルーするな」


「アツミちゃんは余計なこと言わないでくださいよ! 後少しなんですよ!」


 見ればシェードちゃんのしぇええっとしているオーラはすこじずつ収まりつつあります。いいですよ、もうすこし、もうすこしー……


「ミリアちゃん……ミリアちゃんは私の友達なんだよね?」


「もちろんです。シェードちゃんにはいつも助けられてます」


「ミリアちゃんのこと、命と同じくらい大事に思ってもいいんだよね?」


「命より大事はだめですが、同じくらいならいいですよ!」


 シェードちゃんの顔が、だんだんと明るいものへ変わっていきます。ヨーシヨシヨシヨシ! いい子ですよシェードちゃん! 何だか普段と立場が逆ですが。


「いつもだったらてめぇが布団の中に籠もるパターンだな」


「アツミちゃん静かにっ!」


 大事なところなので、流石にハツキちゃんたちが抑えてくれました。


「ミリアちゃん……」


「シェードちゃん……」


 私達はゆっくりと手を取り合って、机という天の岩戸から抜け出して、希望の未来へライジングアップ! ハッピーニューイヤー!!

 ――その時でした。



「ところでミリア、お前こないだ妹のランテってやつを紹介するって言ってたよな、そいつにも会えるのか?」



 アツミちゃんここで油をシューッ!

 見れば顔が明らかに笑ってます、あの人わかってて燃料を投下している――!!


「い、もうと……ランテ……ちゃん……? ミリアちゃん私その子知らないよ。なんでアツミちゃんだけ知ってるの?」


「い、いや忘れてただけですよ!? 今回実家に帰るので、一緒に話をしようと、あ、あああーシェードちゃん閉じ籠もらないでー!」


 ――結局シェードちゃんを引っ張り出すのに、それからまた小一時間かかってしまうのでした。

 楽しかったからいいですけどね! アツミちゃんには今日のカレーを三倍くらい辛くしてあげます!!

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