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地味な私が挑戦したこと

作者: 卯月カンナ

 どうも。柊ましろです。今、大ピンチです。なぜかと言うと、時間は少し遡って今日の4時間目の授業中のことです。


(ピコン)

 珍しいですね。誰からでしょう?玲凰は今テレビ出演が終わって移動中ですね。玲凰からでしょうか?先生には申し訳ありませんがとりあえず見てみましょう。えっと…あれ?藤原さん?いつもは休憩時間を見計らって連絡してくださるのに…一体どんな内容でしょう?


『授業中にすみません(>_<)授業中だと分かってはいたのですが大ニュースがありましたのでご連絡させていただきました。なんと!6月1日にサイン会が決定いたしました!詳しいことは今日の午後4時にいつものカフェでお話ししますので来てくださいね。(o^^o)では!』


相変わらず絵文字かわいいなー。…ん?今何か…えっと…はい?…え?…。


「は!?」

「おーい。柊ー。大声出すなー。」

「す、すみません…。」


は、恥ずかしい!…そ、それよりも…さ、サイン会?サイン会ってあれですよね?作者がファンの子たちに本にサインして手渡すあのサイン会ですよね?ちょ、ちょっと落ち着きましょう。深呼吸、そう、それです。スウ…ハア…。ちょっと落ち着きました…。そういえば、サイン会なんてしたことがなかったですね。私が今まで避けてたからですけど…。でもサイン会は…人見知りにとってはハードルが…。


(ガラガラガラ…)

「おはよーございまーす。」


あ、玲凰…。


「おー。よく来たな。席に座れー。」


今着いたのですね。


(ピコン)

『おはよ。』

あ、LINEが…玲凰から…

『おはようございます』

よし。

(ピコン)

速い!

『どうかした?』

え?なんで…。

(ピコン)

『さっき先生に怒られてたけど』

ああ、さっきの聞いていたんですね。えっと…。


(キーンコーンカーンコーン)

あ、チャイムが鳴ってしまいました。もう面倒ですし口頭で言いましょう。


「で、何があったんだ?」


食事開始の第一声がそれですか。


「これ。」


もうメールを見てもらったほうが早いですね。


「あー、なるほどね。今まで避け続けてたからついに最終手段に出たのか。」


え?最終手段?


「え…じゃあ、もう、断れない…?」

「だろうな。まあいい機会なんじゃね?そろそろその人見知りどうにかしないとな。」

「うう…。」


無理です!絶対無理です!!


「玲凰、今日暇ですか?」

「ん?今日はもう予定ないけど?」


よし!なら!


「今日の、午後4時、藤原さんとの会議、一緒に来て、欲しい…。」


い、言えました!これで断られたら終わりですが…。


「言うと思った。まあ打ち合わせぐらい付き合うけど、サイン会を断るのは手伝わないからな。」


そ、そんなー!玲凰が冷たいのか優しのか分かりません!今日は大変な1日になりそうです…。

とまあ、そんなこんなで時間は戻って今は藤原さんとよく打ち合わせをするカフェに来ています。このカフェは藤原さんのお友達の方が経営されているらしく、藤原さん専用の席があるのです。すごい常連さんです。


「では先生、今回のサイン会についての打ち合わせを始めましょうか。玲凰くんは付き添いですか?」

「はい。ましろがついてきてくれって言うので。」

「そうでしたか。」


ううう…藤原さんが乗り気です…。


「今回のサイン会は100人限定の予約制のサイン会です。先生のメンタルを考えて2日間に分けて行うことにしました。会場のセッティングで何かあれば意見をお伺いしたいのですが、何かありますか?」


藤原さん、それはもう決定事項なんですね…。


「大勢が行列で待つ感じなら塀で仕切って1人ずつ入って時間制限をつければいいんじゃ無いか?あいどるみたいなかんじで。」


玲凰、そんなことも知っているんですね。すごいです。確かにそれならまだ…。


「なるほど。いいですね。それなら大勢に見られてするよりはマシでしょうし。先生、その案ですすめますか?」

「えっと…はい、それで、お願いします…。」


あああっ。どんどん話が進んでいます…。どうしましょう…もし、サイン会で何かミスをしたら…また藤原さんや書店さんに迷惑がかかったら…もし…。


「ましろ。」

「っ!…玲、凰?」

「まーた根暗な方向に思考がいってただろ。」

「…そ、れは…。」

「そんなに心配しなくても大丈夫だって。」

「…でも…。」

「…はあ。…あー、もしもし、梶さん?ちょっといい?」


なぜマネージャーの梶さんに連絡を…?


「…うん、そう。6月1日のレコーディング次の日に回しといて。…大丈夫だって。3日休みだし。うん、それじゃあよろしく。」


…6月1日の予定を、あけてくれた…?それって…。


「藤原さん。その日俺ってスタッフとして入れる?」

「え!?大丈夫なんですか!?こっちとしてはとてもありがたいんですが…。」

「大丈夫。さっき当日の予定別の空いてる日にまわしたから。ましろの精神安定剤が割りくらいならできると思うよ。荷物運びだって手伝えると思うし。」

「ぜ、ぜひお願いします!ではそれも上の方に話しておきますね。ちょっと待っててください!連絡してきます!」


…ほんと…なんで毎回、先回りして私の不安を少しでも取り除こうとしてくれるのかなあ、この人は…。


「…あり、がと。」

「どーいたしまして。」


もう少しだけ、この余韻に浸っていたいなあ…。


〜時は過ぎ6月1日〜


ついに来てしまいました…そしてなぜか野次馬も付いてきてしまいました…。


「おー。ここでするのかあ。意外と小さかったな。」

「50人しか来ないんだからこんなもんじゃない?」

「あれだけ大ヒットしたんだからチケットの競争率高そー。」


…なぜ、なぜこの人たちがここにいるんですか!


「あの、赤坂くん…。」

「ん?なんだ?」

「その…お願いなので、もう少し、目立たないで、いただけると…。」

「ちゃんと変装してきたから大丈夫だって。心配性だなあ。」


心配もしますよ!あなた有名俳優の自覚がないんですか!?ないんですね!?そうでないとこんなに堂々としてないですもんね!?物凄く周りから見られてるんですが!見られてるんですが!←(ここ大事!)


「ましろ。もう少しだから、な?」

「うう…。そもそも、なんで、知ってたん、ですか…。」

「あー…悪い。俺が口滑らせた。」


なん、だと…?…玲凰はもう少し、口が固くならなければいけないようですね。


「玲凰、有罪らです。ギルティ、です。罰として、来月発売のら私の、好きなシリーズを、全て、買ってきて、ください。いい、ですね?」

「わ、悪かった!悪かったから勘弁してくれ!来月発売って確か30冊くらいあっただろ!?流石にそれは俺の財布がやばい!勘弁してくれ!」

「…分かり、ました。」

「ほ、本当か?」

「…20冊で、手を、打ちましょう。」

「うっ。…でも30冊よりは…。」


仕方がありません。20冊で手を打ってあげましょう。今後このようなことがないよう気をつけてくださいね。


「柊ちゃんって丁寧に喋るよねー。」

「ねー。いつも敬語だし。玲凰くんにも敬語なんだねー。」

「あ…その…。年上の人と、関わることが、多くて…敬語が、普通に、なって、しまって…。」


無意識にこうなってしまうのですが、相手からは不思議なのでしょうか…。まあ、一度直そうとしましたが治らなかったのであきらめていますが…。


「あ!先生!お待ちしていました!こっちですよ!…えっと、そちらは…。」

「す、すみま、せん…学校の、同級生、なのですが…。」

「はじめまして。赤坂蒼真と申します。この度はいきなり押しかけて申し訳ありません。こちら、皆さんでよろしければ食べてください。」

「は、俳優の赤坂蒼真!?ええ!?先生、お知り合いだったんですか!?」


あ、藤原さんもしかしてファンですか?どうしましょう、スタッフさんもびっくりしてます。流石俳優…。


「えっと…。」

「すみません、俺がつい口を滑らせてしまって…。手伝ってくれるそうなので邪魔はしませんので、こいつらを入れてもいいでしょうか?」

「…。本当は部外者は立ち入り禁止なんですが…仕方がありませんね。先生の精神安定剤として入場を許可します。」


ま、まじですか、藤原さん…ていうか精神安定剤って…。私、どんだけ心配されているんでしょう…。まあ、藤原さんとは長い付き合いですから私のことはよく知っていると思いますが…。


「さあ!本番まで時間がありませんよ!動く動く!先生は着替えとお化粧をしに控室へ!玲凰くん、メイクに関しては任せてもいいですか?」

「はい。前回とおんなじ感じで少しアレンジを加える感じでいいですか?」

「お任せします。」


あれやこれやとしているうちに私は着替えをして、玲凰にお化粧をされています。いつも下ろしっぱなしの髪を結っていく玲凰は器用です。私は真似できません…。


「後ろは下ろす感じでハーフアップにしてみたけど、これでいいか?」

「私に、聞かないで、ください…。」


聞かれても分かりませんよー!藤原さーん!


「先生、準備は…おお!いいですね!すごくお似合いです!」

「あ、ありがとう、ございます…。」

「おお…写真で見たがここまで変わるもんなのか…。」

「すごーい!柊ちゃんかわいい〜!」

「本当だ〜!柊ちゃんかわいい〜!」


うう…どうせ普段見た目なんて気にしてませんよー。髪を上げるの、違和感があります。それに…。


「れ、玲凰…前髪は…。」

「ピンでとめたらダメだったか?」

これじゃあ、視界とか…。

「…ましろ。何考えてるかはなんとなくわかるけど、お前のこれは別に隠さなくても大丈夫だって。ほら、こうやってボディーペイントで付け足したら…うん、似合ってるじゃん。」

「っ!」


あ…。久しぶりに、自分の顔を見ました…。


 私の右目の横にはタテューがあります。


 私の両親は世の中で言うダメ人間でした。お酒に溺れる母、ヤクザと関わりを持ち借金まみれになった父。私の居場所は箪笥の中だけでした。苛立ちを私を殴ることで落ち着ける両親。私の体はいつもボロボロでした。入れられた時よりは成長するにつれて少し小さくなった父が面白半分で入れた顔のタテュー。お腹が空いてもご飯はありません。私は盗みに手を出しました。お腹が空いて、我慢ができませんでした。セキュリティの薄そうな店を選んで盗もうとしました。しかし、店を出た所にたまたま巡回していた警察官に見つかり、捕まりました。その人は玲凰のお父さんでした。


 両親は児童虐待で捕まりました。私には顔に刻まれたタテューだけが残りました。


 両親が捕まったとき、私のことで親戚は揉めました。両親は親に既に勘当されていました。初めて会った祖父母は私を見て顔を顰めていました。私は結局母の従姉妹の娘夫婦、柊夫妻に引き取られました。その人の家の隣は玲凰のお家でした。私の部屋と玲凰の部屋はすぐ隣にあり、窓を開ければ玲凰の部屋の中が見えるほどでした。


 引き取られた当初、私は部屋に閉じこもっていました。何もかもに怯えて誰の視界にも入らないように、視界に入れないようにしていました。


 そんな時私に話かけてきたのは玲凰でした。玲凰は自分の部屋から私の部屋へ飛び移ってきました。初めは怖くて玲凰を傷つけることもありました。でも、時間と玲凰の積極的な行動で私は少しずつ玲凰を受け入れ、今に至ります。


「へえ。なんでそんな鬱陶しい前髪下ろしてんのかと思ったらそんなのあったのか。」


どうしよう…もし…。


「似合ってんじゃん。」


…え?


「玲凰、ボディーペイントするならここにこう花を…。」

「柊ちゃん柊ちゃん!前髪こうしようよ!絶対似合うって!」

「ナイスアイデア茜!絶対似合う!」


…なんで…。


「誰も気持ち悪いなんて言わねえよ。」


っ!な、んで…。


「お前のネガティブ思考なんてお見通しだっつーの。」

「あうっ。」


デコピンしないで欲しいです…地味に痛いです…。

…ずっと、怖かったのに…。


「…ありがとう、ございます…。」

「…。」×3

「せんせーい!お時間でーす!お!いいですね〜!お似合いです!」

「あ、ありがとう、ございます。じゃあ、行ってくる、ね。」


もう、怖い気持ちはない。


おまけ

ましろが部屋から出て行った後の4人


「え、何あのスマイル…。」

「ギャンかわ!」

「ちょ、玲凰、来週末柊ちゃん貸して…あのスマイルを広告塔に学園宣伝したら絶対生徒増えるって…。」

「却下。」

                                     END

お読みいただきありがとうございます!

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