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魔法決闘

「やるなら魔法決闘マジックコンバットだよね?」


 とクロエが横から口をはさむ。


「もちろんだ。魔法使いなら、魔法で戦うのが筋だろう」


 蜥蜴人の男子は魔法使いであることを誇るように胸を張った。


「魔法決闘って何?」


 とミゲルはクロエに聞く。


「そんなことも知らんのか。本当はお前、底辺なんじゃないのか?」


「平凡な家庭だったと思うけどなー。まあ平凡な家庭は上から見たら底辺っていうのは、よくあるパターンだな。自分が体験することになるとは」


 蜥蜴人の挑発を聞いた彼は怒らなかった。

 それどころか感心してさえいる。


「何かズレてるよね、ミゲルくん……」


 クロエは慣れてきたので驚かなかったが、蜥蜴人は違う。


「余裕かましやがって! 殺しはまずいが、泣かしてやる! ついてこい!」


 彼は挑発を返されたと解釈して怒り高ぶって教室を出る。


「どこに行くんだ?」


 ミゲルはついていかず、説明してくれそうなクロエに聞く。


「闘技場があるんだよ。申請すれば誰でも使えるんだけど、立会人が必要なの」


「立会人ならクロエでいいんじゃないか?」


 とミゲルは思ったのだが、彼女は首を横に振る。


「立会人になれるのは先生か四年生以上の先輩だけだよ」


「四年生もいるのか」


 三年で卒業することになるとミゲルは思っていたので目を丸くした。


「……ミゲルくん、もしかしてアカデミーのこと何にも知らずに来たの?」


 クロエがまさかという気持ちがあふれ出すのを堪えながら、問いかける。


「国内最高峰ってことは知ってるよ」


 ミゲルは不本意そうに答えたので、彼女は息をのむ。


「つまりそれ以外は知らないんだ……そういう子もそりゃいるか」


 そしてあきらめたように息を吐き出す。

 彼女が黙ってしまったので、ミゲルは視線を周囲へと向ける。


 建物は立派だし、あちらこちらに魔力が通っていることが感じられた。


「国内最高峰ってだけあって建物すごいね」


「……隠ぺい効果がある微弱な魔力を感知するなんてすごいわね」


 と言ったのはクロエではなく、いつの間にかミゲルたちの近くに来ていたフィアナだった。


「フィアナ先生?」


「さっきカイトくんに会ったので、わたしが立会人を引き受けることにしたわ」


 クロエが不思議そうに声をかけると、彼女は事情を明かす。


「本当はミゲルくんの様子を見に来たんだけど、いきなり魔法決闘になっているとはね」


「喧嘩を売ったのはカイトくんのほうですよ?」


 あきれた様子のフィアナに、クロエが事実を指摘する。


「わかっているわ。ミゲルくんとカイトくん、喧嘩を仕掛けるとしたらどちらか、くらいはね」


 カイトって誰だろうとミゲルは思ったが、口をはさまずふたりの会話を聞く。

 

「こうなった以上仕方ないわね。ミゲルくんは場合によってはすぐに退学だから、自分の立ち位置を早めに把握しておくのはいいことだし」


 フィアナは割り切ったのか、表情に落ち着きを取り戻す。

 そこで会話は途切れて三人は闘技場にやってきた。


 闘技場は渡り廊下の右側、体育館と屋外プールの中間に位置している。

 

(おー、古代ローマのコロッセオみたいだ! あれよりは小さいけど)


 オタクだったミゲルは古代ローマをモチーフにした作品を見たことあり、そこから連想した。

 

 中には観客席と四角い石造りのリングが設置されていて、蜥蜴人のカイトがすでに待っていて、隣には水色の髪の蜥蜴人の女子が立っている。


 彼女が左胸につけているエンブレムには☆が四つ並んでいて、四年生だということがわかった。


「ああ、ライネさんを立会人として呼んだのね」


「カイトくんのお姉さんだよ」


 フィアナの言葉を補足するようにクロエが教えてくれる。


 ライネと呼ばれた女子は背が高くてスタイルがよい美少女で、ぎろりとミゲルを見て、


「うちの愚弟が迷惑をかける」


 と彼に頭を下げた。

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