02 御帰宅。
いやー、今日のお勤めもご苦労さん。 我ながらガッコー頑張った!
明は極々普通の女子高生だけど、ここで言うお勤めやらガッコーは勉学のことでは無い。
売られたモノを買って、買って買ってのたまに売って、運動の日々。
休日返上でお勤めすることもある明は、生粋のスポーツウーマンなのだ。
あの後の女子会も特に仲良しな女友達と、名一杯汗水流して血反吐を吐かせた。
それから、いそいそと無事に御帰宅。
待ちに待った届いた荷物を確認する為だ。
いつものように「ただいまー」と玄関に入る。
靴を脱いでいると、キッチンから明のお母さんが顔を出す。
「おかえり明、ちょうど良いところに帰って来たわね。 お醤油買って来てくれないかしら?」
「ええー! オレ忙しいんだけど」
明とよく似た黒髪、しかしその顔はおっとりとした垂れ目美人である。
何処に売っているのか? 豹柄で上下一体になった部屋着の上に、フリフリの可愛らしいエプロンは完全にミスマッチだ。
モンキーホーテで見た猫耳メイドのカチューシャまで付けている始末。
服のセンスは疑うが、40越えてもまだまだ現役。
若いお母さんと言えよう。
「何言ってんの! アンタが代引きで頼んだ荷物、代わりに払ってやったのはお母さんなんだからね!!」
「うっせぇなぁババァ! んなガミガミ言わなくても聞こえてるっつーの!! 行けば良いだろ? 行けば!」
なんだかんだと言っても、明は流石優しい子だ。
女子会でお友達を急いで叩きのめ――……汗水運動した後、いそいそ帰って来る程届いた荷物を楽しみにしていたのに、親の手伝いを優先する。
ちょっぴり言葉遣いが荒いのは明なりの照れ隠し。
素直になれない複雑なお年頃だから致し方ない。
明の大切な相棒、ストレートフラッシュがさしてある鞄を下駄箱横に置けば、脱ぎかけだった靴をまた掃き直した。
「ついでにこれ、歩美ちゃんのところに持っててちょーだい」
「はいはい、いつものお裾分けね」
歩美ちゃんとは同じマンションに住む、ひとつ階下の幼馴染で同い年。
小さい頃に難病で父親を亡くしてから、母親は生活のため働きに出ていて忙しい。
このお裾分けは、明の母親が歩美ちゃん母子の為に作った、いつもの作り置きである。
近所の安いスーパー袋いっぱいに入ったお裾分けを受けとれば、「行ってきまーす」「行ってらっしゃい」 のやり取りの後、玄関を出た。