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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第二項 鉱山の街
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変異種マーキュリーゴーレム戦 その3

 マーキュリー・ホプの胴体から射出された剣は確実に私の胸に当たっていた。そして、攻撃が直撃したことにより〈白黒〉の効果によって召喚されていた白の十字架が砂塵となって消えていく。そう、白色の十字架だけが解除されたのだ。


「万象夢幻。全ての事象は夢であり幻だ。勝てた、とでも思ったか。確かに今の不意打ちは想定外だった、がもしものために対策くらい考えてるさ」


 唖然として硬直しているマーキュリー・ホプに蹴りを入れて吹き飛ばす。攻撃を防いだ代わりに〈白黒〉の効果が低下しているので与えたダメージは少ない。

 まさかこいつが意表を突く行動をしてくるとは想定していなかった。今まで腕を増やすことをしなかったのも、アホみたいな行動も知性を隠すためのブラフか。

 あのタイミングでの攻撃は意識していなければ避けることは難しい。鞭形態から剣形態に移行したのも自然に私と近接戦を仕掛け、あいつの両腕に意識を集中させるための行動だった考えると私はまんまと嵌められたわけだ。

 知性があるというのは怖いものだ。だが、これであいつが知性がありかつ狡猾な行動をする魔物だと理解した。次からは子供だましなどには引っかからんさ。


「さて、リターンマッチといこうか」

 

 新しいオリジナルスキルの効果で〈白黒〉が解除されたのでバフとデバフを使い、再度十字架を召喚する。まったく、上手く騙された。知性があると分かればさっきみたいな油断はなおさらできない。あいつもフェイントをしてきたのだし私もフェイントを活用していくか。

 今まで以上に気を張りヤツと相対する。むこうも私が先ほどまでの油断がなくなったとみたのか腕の数を4本に増やし、鞭と剣の両方にしてきた。

 いや、できるなら最初からそれにしとけよ。それの方が何倍も厄介だろ。まあ、これもさっきの不意打ちを防げたから言えることで実際にあの攻撃を喰らっていたら確実に私は死んでいた。そう考えると腕を増やせることを最初から見せつけるのは不意打ちの成功率を下げることになるのか。


「結局は人も魔物も変わらないってことだな......エンチャント・グリーンアップ」


 マーキュリー・ホプが振るう鞭を掻い潜り、刀腕での切り付けを半身をズラし躱す。ヤツのがら空きになった胴体めがけ攻撃をすると見せかけて足払いをする。

 お前がやりたいことは分かっている。私が胴体に対して攻撃した時にカウンターを仕掛けようとしていたのだろう。腹の部分がわずかに波打ってたのが何よりも証拠だ。


 攻之術理 地落


 足払いで態勢が崩れたのをいいことにマーキュリー・ホプを地面に叩きつける。こいつにダメージを与えるなら普通に殴るよりも地形を利用した方がいい。気を付けないと攻撃を受け流されて余計な反撃を貰いかねないからな。

 そして、地面に倒れこんだマーキュリー・ホプ目掛けかかと落としをお見舞いする。


 私は正々堂々と戦うことはしない。実戦において公平さを求める者ほど早く死んでいくからな。使えるものは何でも使う。これが戦場で長生きするコツだ。それにコイツも正々堂々と戦う気なんてないだろうしな。そんなことをするのは騎士道を重視する騎士くらいだ。


「これで残りHPは1割っと......アブソープ」


 痛覚などないだろうに痛そうに寝転んでいるマーキュリー・ホプを蹴り飛ばす。そして、ヤツは吹き飛ばされながらも受け身を取り、華麗な動きで体勢を整えるがついにそのHPは1割を切っていた。

 敵のHPは残りわずかだがアーツも忘れずに使用する。〈白黒〉のためというのもあるが新しいオリジナルスキルの制約でMPが半減してるから今は雀の涙でもMPが欲しい。

 

 追撃をしようと攻撃の構えをとるとマーキュリー・ホプが腕を無造作に振りまわしながら後ろに跳躍して私との距離をとる。その間は大体数十メートル。一気にこの距離を詰めるのは難しいので向こうの出方を伺おう。

 HPが1割をきったからの行動だろうし、何か来るに違いない。もしかしたら最終形態に変化するかも。少し危険な気もするが様子見だな。


 先ほどまでは人型だったマーキュリー・ホプはまるで沸騰しているかのように体が泡立ち徐々にその体を崩壊させていく。そして、体が全て崩壊した後に残っていたのは地面に残る水たまりのような溶けた金属だった。

 いや、その表現はふさわしくないな。より正確に言うのなら液状になった水銀であった。そう、ついに名の通りの水銀になったのだ。今まで固体だったのが不思議なくらいだがこれでコイツも本来の姿に戻れたのだな。


 そんなことを考えていたらマーキュリー・ホプがかつてない速度で私に接近しその表面から剣や槍を生み出し私を串刺しにしようとする。


「おっと、危ない。てか、その速さははぐれ〇タルかな? 経験値が膨大とかそんな設定ないの?」


 警戒はしていたので後方に跳ぶことで攻撃を回避する。しかし、人型でも動物を模した形でもないのはつらいな。殴るにもマーキュリー・ホプは地面にいるので攻撃できない。蹴りなら当てられるが人型の時よりも圧倒的に体積が少ないのでこれでも当てづらい。まさに前衛職の天敵ともいえる形態だな。

 そんなときには〈邪魔術〉のアーツ ヘルオーラの出番だ。あってよかった攻撃アーツ。まあ、なかったらひたすらに状態異常のアーツをかけるだけだ。最後まで近接戦で決着を付けれなかったのは名残惜しいが十分楽しめたしわがままは言わないさ。


「ずいぶんと楽しませてもらった。また、お前が出現したという情報が出たら会いに来るよ。それじゃあな......ヘルオーラ」


 アーツを行使するとマーキュリー・ホプを中心に半径5メートルほどの魔術陣が現れ、魔術陣から漆黒の瘴気のようなものがにじみ出る。それに触れた瞬間ヤツのHPがゴリゴリと削れる。本来のヘルオーラならこれほどまでに敵のHPを削ることはできない。だが〈白黒〉により超強化されたパラメータの暴力の前では些細なことだったらしい。

 これがあるからこのアーツを使うのは憚られる。一度ロックゴーレムで試したときはHPが一瞬で蒸発してしまった。しかも展開領域も直径10メートルと広く範囲内にいた奴らは......お察しの通り。


「いや、まあ流石に一回じゃ死なないよな......エンチャント・イエローアップ......ヘルオーラ」


 マーキュリー・ホプはヘルオーラの危険性をすぐに理解したらしくすぐに魔術陣の範囲外に脱出することに成功していた。このアーツは場所が固定されるから範囲外に出れば効果はない。しかし、マーキュリー・ホプの速さを持ってしても脱出までに少しのダメージを受けている。

 あとは私のMPが尽きるまでこいつにヘルオーラをかけてチビチビとHPを削っていくだけだ。MPポーションも買ってあるので最初に私のMPが枯渇することはない。

 

 マーキュリー・ホプも死ぬまいと私に近づき、瞬時に表面から武器を作りだし攻撃してくるがそれを避け大きく距離をとる。あいつの武器を射出する攻撃も遠くには飛ばせないようで結局私にダメージを与えるには近づかなければいけない。なので、近づいてきたところにヘルオーラを発動させる単純作業になってしまった。

 そして、ヘルオーラを発動させること数十回。ついにマーキュリー・ホプ、いやマーキュリーゴーレム・ホプリゾーンは光となって周囲に溶けていった。


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