教会の書庫 その1
「ここは18時までの解放ですのでそれまでには退出をお願いします」
大都市でないといけないのかこの街にも図書館はない。なので教会関係者しか入ることのできない書庫に来ている。リーンの弟子というアドバンテージは恐ろしいな。
書庫には大量の書物がある。流石にこの量を読んでいては時間が足りないので魔術について書いてある本を読むことにする。
やっと見つけることができたがどういうことかほとんどの書物は読むことができなかった。なので読めるものを探すのにさらに時間がかかってしまった。
ということで持ってきたのが〈魔力を知ろう〉〈魔術辞典〉〈聖典と魔典〉の3つだ。もっと詳しく書いてありそうなものもあったんだがスキルが必要なのかそれともレベルが足りないのか読むことができなかった。どちらにしろ見れないならしょうがないので読めるこの3つにしたわけだ。
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〈魔力を知ろう〉 著者 アクア＝カーラ
私たちが普段使っている魔力とは何か、君たちは考えたことがあるだろうか。魔術や武技を使うことで魔力は消費されていく。そして一定以上魔力を消費すると魔力欠乏症と呼ばれる症状に陥り気絶する。
これは誰しもが一度は通った道だと思う。もちろん私も子供のころに経験している。あの頃は魔術が使えるようになりはしゃいだものだ。
それはさておき、結局魔力とは何なのか。有名な魔術学者が『魔力は空気中の魔素を吸収することで回復する』と提唱した。それはとある実験で証明されているので間違いないだろう。
ここで優秀な君ならこう思ったのではないだろうか？ 魔力と魔素はなにが違うのか、と。
しかし、なぜこのような区別があるのかは未だ解明されていない。なぜならこの区別は遙か昔、人類が旧大陸に住んでいた時から存在していると言われているからだ。
だが、我々の認識では魔素とは魔力の上位互換であり魔素を吸収し体内で分解することで魔力になると考えられている。
そのため魔力とは何かと問われれば魔素の下位互換といっても問題ないだろう。
ここで話の次元を一段階上げることにする。魔素とは何か。これが、私が長年研究している問題だ。結果として魔素の本質を解明するまでには至っていないが私は魔素とは未知なるエネルギーであると考えた。
なぜか。それは魔物が魔素で構成されていると考えられるからだ。魔物を倒したとき光の粒子となり消滅するが特定のスキル〈魔力支配〉や〈魔力固定〉といった魔力に干渉するスキルを持った者が倒した魔物は消滅せずに実体を保つ。
つまりこれは魔物が魔力または魔素で構成されていることの証明ではないだろうか。生物、いや原種に近い生態を作ることができるのは魔素が、私たちが知りえない未知のエネルギーが物質化したものだからだと考えられる。
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〈魔術辞典〉 著者 ルハ＝ルーシャル 他
・基本属性魔術とは
基本属性魔術とは火魔術、風魔術、土魔術、雷魔術、水魔術の5つと無魔術の計6つの魔術の総称である。なぜ無魔術をその他5属性魔術と同じ分類にしないのか。それは無属性魔術が唯一、光魔術と闇魔術の反発を受けないからだ。より詳しくは〈双極属性魔術とは〉に記載する。
無魔術を除いた基本属性魔術にはそれぞれ有利不利があり、火は風に、風は土に、土は雷に、雷は水に、水は火に強い。これを理解していれば戦闘で優位に立つことができるだろう。そして、無魔術はどの属性に対しても有利不利が存在しない。
これらの属性は神話に登場する世界に与えられた色を表していると言われている。また、それぞれの魔術はレベルが上がることで名称が変わるが属性としての色が変わるわけではない。
・双極属性魔術とは
双極属性魔術とは光魔術、闇魔術の総称である。これら二つは聖魔典管理神官が保有する聖典と魔典が大きく関連する。聖典には再生、強化、守護、治癒、強属が、魔典には死、弱化、吸収、呪い、弱属の10の概念があり、これらは双極属性魔術が持つ術理の元となっている。
双極属性魔術を習得したものが基本属性魔術を習得した際、また逆もしかりだが全ての魔術が上手く発動できなくなる。これは光属性を表す白と闇属性を表す黒が他の属性の色と役割が違うからだと言われている。
『基本属性に分類される色は世界に作用し、双極属性は生命に作用する』（〈世界創造の考察〉 著者 タース＝ギルガント）
それはこの一文からも分かるだろう。ただし無色、つまり無属性魔術だけは世界より外に作用するため双極属性と反発しないのだと考えられている。
・特殊属性魔術とは
特殊属性魔術とは上記の魔術に該当しない魔術であり、色が存在していないとされる。現在確認されている特殊属性魔術は召喚魔術のみだが、かつては結界魔術や血操魔術などがあった。また、精霊大陸や獣大陸には特殊属性魔術と似通った魔術がある。
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ここから考察したいのはやまやまだがそろそろ時間も近づいているので先にもう一冊読んでからじっくり考えるとしよう。
鉱山の街編は毎日更新します。
