呼魔の鈴
「そういうことなら了解だわ。それまでにはぜーったい作ってあげるんだから♡」
「おい、ゴルジアナ。キモイからやめろ。殺戮兵器かお前は?」
「あぁん!! 捻り潰すわよ。まったく、乙女になんてこと言うのかしら? ゼロちゃんもそう思うわよね?」
その通り、ゾルは何を勘違いしているんだ? ゴルジアナさんは乙女だろ。私はすでに自身を洗脳してるから大丈夫だ。お前も早くこの高みまで来ると良い。
「そんなことはどうでもいい。お前の話が終わったのなら次は私の番だ」
そういってゾルが一つのアイテムを取り出す。テーブルに置かれたそれは一見ただの鈴に見えるがこいつが取り出したと言うことは錬金術のアイテムだろう。
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〈呼魔の鈴〉 一般級 ☆10
周囲の魔物を呼びつける音を出す鈴
ゾルによってつくられたアイテム。鉄球の代わりに魔石を使用しているため、込めた魔力により効果範囲が拡大する
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「お前から預かったアイテムでいろいろ試していたんだが結局こいつができた。試運転をしてきたがアイアンゴーレムでもこの音色を聞くと寄ってくるから結構使い勝手がいいと思うぞ。それにMPを10込めることで範囲が1メートル広がった」
流石、ゾルだ。いいものを作ってくれる。私が今欲しいものを的確に読んできたな。アイアンゴーレムでも効果が効くならエリア内を一々は走らなくていい。もっと早くからゾルにあのアイテムを渡しておくべきだったか。
「こいつは同心円状に広がるのか? それとも指向性があるのか?」
「もちろん同心円状に広がるに決まってるだろ。指向性を持たせるなど今のレベルじゃできねえよ。だが、使う時は気をつけろ。MPを込めすぎると処理できない数の魔物が来るからな」
それなら、なおさらありがたい効果だ。今はとにかく数を倒したいから多少の無理は許容できる。いつまでもこの街に縛られるわけにはいかない。どうせ森林の街でも魔石を集めることになるのだからな。
「ちょっと、ゾルちゃん。いつの間にレア度が最大のアイテムを作れるようになったのよ」
「知らん。勝手にレア度が上がっていた。そんなことを気にしているからレア度が上がんないんだ。自分が作りたいものだけを作っていればおのずと上がるものだろ」
確かに一理あるがそう思ってもできる人は少ないだろう。まあ、私は彼らが作ったものを享受させてもらう立場なので丹精込めて作ったものなら文句などはありはしない。まあ、できれば等級やレア度が高い方が好ましいがな。
「それでいくらだ?」
「結構魔石を使ったから100,000バースでいいぞ。金じゃなくて使えるアイテムとの交換でも受け付けるからな」
100,000バースなら安い方だ。だが、バースはできるだけ使いたくないからドロップアイテムと交換してもらおう。100,000バース分のアイテムを渡し〈呼魔の鈴〉を受け取る。これで連戦が楽になってくれると助かるが今朝みたいに魔物が集まりすぎて戦闘が終われなくならないように気をつけなきゃだ。
「そういえば、ゴルジアナさんたちはいつまでこの街にいるんだ?」
「ワタシはドガンちゃんが移動するときに一緒に行くわ。この街ならたくさん金属があるから細工師として稼ぎやすい場所なの。それに比べて森林の街ときたら稼ぎづらいのよね」
ゴルジアナさんはまだここに残るのか。ドガンさんは鍛冶師だし、ここに残るのは当たり前だから彼と行動するなら次の街に行っても稼げない。というか森林の街には金属がほとんどなさそうだ。金属がなかったら鍛冶師としての仕事がほとんどなくなってしまうしな。
「私は今日中には森林の街に行く。お前からここのドロップアイテムをほとんど買ったし、ここにいても意味がないからな。次の街に行って面白いアイテムでも探すとするさ」
逆に、ゾルは森林の街に行くようだ。確かにこいつにはこの街で倒した魔物のアイテムをほとんど売ったからこの街にいても得るものはないだろう。ここの魔物はそれぞれ100体以上討伐したのだしその分アイテムの量も多かったからな。
「お前はまだこの街に残るんだろ?」
「そうだ。だが、明日には私もここを出るつもりだ。用事もお前が作ったこの鈴があればすぐ終わりそうだからな」
その後1時間ほど二人と話し解散となった。ゾルはそのまま馬車乗り場へ、ゴルジアナさんは生産職ギルドに向かっていく。
今日の夜にはフィールドボスに挑むつもりなのでそれまでに情報収集とオリジナルスキルを作らないとだ。ボスについてはギルドに行けば調べられるから今は教会の書庫に行くか。
問題は新しいオリジナルスキルだ。どんな効果がいいのだろうか。一応は方向性が決まった。だが、制約が決まらない。効果を強くしようとするとその分制約を重くしないと勝手に効果が下方修正されるらしい。
少し前にそれでオリジナルスキルが弱体化しすぎて普通のスキルと同じになったと掲示板で騒いでいたっけな。また、その逆で効果に合うように勝手に制約が追加されるパターンもあるみたいだ。それが一刀のオリジナルスキル〈死神の一撃〉なんだがな。
私としては妥当な制約だと思ったが今の私を見ているとあの制約は軽すぎる。魔物相手でもHPを1割削るのはそれなりのレベル差があれば結構簡単だった。それで魔物を確定で倒せるならレベル上げが簡単になりすぎる。ということで一刀のオリジナルスキルには〈死神の一撃〉で魔物を倒したときドロップと経験値がなくなる隠し制約が追加されていた。




