一時の休憩
これで冒険者ギルドでやることは終了。次はゴルジアナさんがいる生産職ギルドだ。ログアウトする前に連絡を入れておいたので大丈夫だろう。それが終わったら教会に行ってみるか。種族レベルが50になった時にオリジナルスキルの作成が可能になったから新しいスキルの効果を考えたい。
今考えている効果は防御系か補助系のどちらかだ。今後新しい魔物と戦う時に白黒を維持し続けるのが難しくなる。特に高位の魔物ほど人の形から外れ、巨大になるだろうし、予期せぬ攻撃を食らう可能性があるからな。
意外と街中にもヒントがあるかも、と周囲を見渡せば昨日と変わらない光景が目に入る。そんな簡単にヒントは落ちてないよな。道行くプレイヤーも見るが流石にオリジナルスキルを発動しているプレイヤーはいないか。
そりゃあ街中だから攻撃系のオリジナルスキルを発動してたら衛兵に捕まるだろうが他の人のオリジナルスキルも気になる。ロードみたいに装備としてオリジナルスキルを発動させているプレイヤーもいるが外見だけでは効果の詳細など分かりはしない。
掲示板でもオリジナルスキルを公開している人もいるが極まれだ。鑑定でももちろん視ることはできないしな。まあ、それで知れたら苦労はしない。可能性があるとしたら鑑定みたいな情報開示をするオリジナルスキルだがそこまでして知ろうとは思わない。
だが、一刀なら意外と作りそうだ。『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』。かの孫氏の言葉だが相手の切り札を知っていればいくらでも対策をたてれるし、万全な状態で戦うのがあいつの戦闘スタイルだから十分にあり得る。
そう考えるとできるだけ効果は単純な方がいいかもしれない。効果がバレていても対策を取られなければ問題ないからな。
「あ~ん、待ってたわよ。ゼロちゃん、こっちよ~」
生産職ギルドに入ってすぐゴルジアナさんを見つけたので彼のもとに向かう。ギルドの中はかなりのプレイヤーがいて混みあっていたがゴルジアナさんはすぐ見つけられるので探す手間が省けた。
「ゾルも来ていたのか」
「お前がここに来るとゴルジアナから聞いたからな。フレンドメールを打つのも面倒だったんで同席させてもらった」
席に着くとゴルジアナさんの隣にゾルが座っていた。たしかにメールを打つのはめんどくさい。メールじゃなくて通話なら楽でいいのだが、運営に修正案でも出そうかな。
そんなことよりこいつが来たと言うことは何かアイテムができたのか。昨日の今日で完成させる生産職には頭が上がらない。
「ここではなんだ、場所を変えよう」
ゾルの提案に頷きその場を離れる。ゴルジアナさんに依頼するのはミスリルのアクセサリーだ。まだミスリルが採れるという情報は教授から情報を買ったごく一部のプレイヤーしか知らないはずなので聞き耳を立てられないようにするためだ。
この情報が広まれば森林の街に移動した魔術士のプレイヤーがほとんど戻ってくるに違いない。人が増えるのは別に構わないが情報を売った身であるし、教授たちの商売を邪魔するつもりもないので誰かに聞かれるわけにはいけない。
ゾルもいるがこいつは別に構わないだろう。口も堅いし私たちとは協力関係にあるから情報を漏らす心配もない。
「お前、めっちゃ注目されてんな。掲示板でも盛り上がってたし人気者じゃないか」
「外でやりすぎてしまってな。おかげでレベルも上がったしそれ以上に術の精度も上がった気がする」
そういって私は自分の拳を見る。......ただの拳だ。
いや、そういうことじゃない。実戦を通して格段に術への理解が深まった。前までは相手に少しの間触れていないと震撃を上手く発動させることはできなかった。だが今は数回に一回くらいの確率で触れることなく衝撃を飛ばせるようになった。
「も~、ゼロちゃんたらす・て・き♡ 」
ありがとうございます。今ので、さらに何かの耐性がついた気がしますよ。
少し歩いて教授と訪れた件の喫茶店に入る。教授にはいい場所を教えてもらった。ここならプレイヤーも少ないし話を聞かれる心配もない。従業員に言われるがまま席に案内され注文を入れる。
「ミスリルはインゴットを使った方がいいのができるわ。素で希少級なのよね?」
「インゴットが希少級でドロップアイテムの方が一般級です。もしかしてインゴットの場合だと直ぐに作るのは難しいですか?」
「そうね。ゼロちゃんのためにすぐ作ってあげたいとこだけど多分希少級は今は手が出せないわ」
紅茶を一口飲み、アクセサリーの構成を考え合う。ゴルジアナさんによると二次職になれば希少級のアイテムを作れるかもということなのでミスリルのアクセサリーはゴルジアナさんが二次職になるまではお預けだ。
今はここらの魔物とはレベル差がありすぎているので直ぐに必要というわけではない。この次は森林、迷宮、王都の順で街があるから迷宮の街またの名をダンジョンの街までには完成してくれれば上等だ。




