生産職の集い その1
今の時間はジャスト17時。今日はミサキさんたち生産職を鉱山の街まで護衛する予定が19時からあるので始まりの街にいる。
昨日は殆どのメンバーが転職可能になるまでアイアンゴーレムと連戦を続けた。案の定ロードだけは全ての魔術スキルがレベル最大にならなかったのでまだ転職ができていない。
そう言うことでロード以外は全員二次職に転職することができた。一刀は盗賊から密偵、聖は射手から弓兵、不知火が戦士から重戦士、そして最後にレオが戦士から剣士に転職した。
転職したからと言って急に強くなることはなかったが二次スキルは前のスキルよりも格段と強力になっている。だが、二次スキルは一次スキルみたいにLV1でも直ぐにレベルが上がることはなく、大体種族レベルが上がった時に一緒にレベルが上がる感じだった。そのおかげで二次スキルは4レベしか上がっていない。
「すでに皆さん集合していたのですか」
「そうね、あなたが一番最後よ。今日は鉱山の街までの護衛をよろしく頼むわね」
19時になり集合場所の南門に到着すると、そこには既にミサキさんたちと一刀たちが集まって雑談をしていた。
これはかなりの大人数になったな。私たちのいつものメンバー6人に生産職の6人で合わせて12人だ。1パーティは最大6人までなので今回は2パーティに分かれて行動することになる。
私、ロード、レオ、ミサキさん、リアさん、ゾルのパーティと一刀、聖、不知火、ドガンさん、ゴルジアナさん、アルポールことアルのパーティだ。私たちの今のレベルなら3人を守りながらでもイーコスウルフを倒せると思いこの構成にした。
それにミサキさんたちもLV15を超えているので常に守ることに集中しなくても大丈夫そうだ。ちなみにアルポールさんは木工師で聖の武器の製作を受け持っている。
今回はレオもいることだし、私が前衛に出て戦うことはしない。神官としてのプレイスタイルでイーコスウルフを圧倒してやろう。
「そういえばお前に渡したいものがあったんだ。この前これがイーコスウルフからドロップしたんだが錬金術に使えるアイテムみたいなんだ。これで何か作れないか?」
「どれだ見せて見ろ。......増音袋か。こいつは見たことがないアイテムだな。イーコスウルフのドロップアイテムの中でもかなりレアな部類だろう。どんなアイテムができるか分からんがそれでもいいなら製作を受け持つぞ?」
イーコスウルフを最初に倒した時に入手したアイテムは冒険者ギルドで調べたところ錬金術の素材になると言われたので錬金術師のゾルにアイテムを託すことにした。他にも錬金術の素材になるアイテムもかなり所持していたのでそれも全て渡す。
「これだけのアイテムをよく集めたものだな。錬金術の素材になるアイテムはドロップ率が低くて市場に多くは出回らないから助かった。アイテムができたらお前にまた連絡する」
「それにしてもあんたが転職しただろうとはアナウンスで分かっていたけどゼロ以外も転職しているとは驚きね。話によれば昨日はずっとアイアンゴーレムを狩っていたのでしょ。何か裁縫に使えるアイテムはあった?」
確かに昨日はアイアンゴーレム漬けだった。後半は作業になっていたので正直記憶がない。しかし、ドロップアイテムは各種鉄の塊と魔石だけだったので裁縫には使えないだろう。
正直アイアンゴーレムからドロップする鉄は殆どが街で買えるものなのでそれを買って生産職に装備を作ってもらえばいい。
だが、レアドロップ枠の純鉄だけは街で販売していない。街で売られている鉄は既に加工が終わっており、これ以上手を加えることができないが純鉄だけはそこに炭素を配合することで鋼になる。少し手間が掛かるがこれが鉄装備の一段上の耐久を持つ、鋼装備の製作方法だ。
そのために昨日はずっとアイアンゴーレムを狩っていたわけだ。おかげで製作に必要な純鉄はドロップすることができた。私もそれなりに手に入っているので本以外の武器を1つ作ってもらおうかと考えている。
「裁縫に使えるものと言ったら魔石くらいしかありませんでしたね。もしよかったら売りましょうか?」
「そうね、すこし売ってもらえるかしら。今の技量だと難しいけど魔石を粉末にして布を染めたら何か新しい効果があるかもって考えてるの」
生産職は常に新しい技術を生み出している。もし、ミサキさんの考えが上手くいくようであれば魔石を使っているのだし、MP関連の効果が付与されそうだ。私やロードと言った魔術を使うプレイヤーは常に魔力の消費を気にしなければいけないのでその負担が軽減するのであれば新技術の開発に惜しみなく協力する。
「着きましたな。ここがボスエリアですぞ」
「ここがですか? 私には何も見えませんかけど」
「俺も見えてないから問題ないぜ。だが、このエリア内に入るとボスに挑戦するかって警告が出るんだ。それでパーティリーダーが挑戦するを選択するとボス戦が始まるってわけだ!!」
リアさんは製品版から参入したプレイヤーなのでこの仕様を知らなくて当然。それに初めてのボス戦で少し緊張しているみたいだ。
「リア、リラックスしなさい。最低限は自己防衛できてればゼロたちに任せておいて問題ないわ」
「そうだ。私たちは生産職。戦闘が本職の彼らにはどう足掻いても勝てやしないさ。戦闘に関してはゼロたちの言葉通り動いていれば問題ない。もし、それでもお前が役に立ちたいと思うなら生産職としてあいつらのためにポーションでも作ってやるんだな」
「はい! 分かりました、先輩、ゾルさん」
私が言おうとしてたことを全部言われてしまった。まあ、なんだ。こと戦闘に関しては私たちに任せて欲しい。




