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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第二項 鉱山の街
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情報売買 その1

 鉱山の街の中心部にある喫茶店に入ると来客を告げる鈴が鳴る。

 店の中は穏やかな曲調の音が流れ、ここにいるだけで心が落ちついてくる。


「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」


 中に待ち人がいると伝え案内してもらう。ここにいるのは住民が大多数で、プレイヤーの姿は殆ど見受けられない。ここを選ぶとは教授はセンスがある。


「すみませんね。教授。お待たせしてしまいましたか?」

「今情報の整理をしていたのでそんなことはありませんよ。さあさあ、ゼロさんも席に座ってください」


 教授に誘われるがままに目の前の席に座る。

 流石検証班と言うべきか。既にAWOのシステムを使いこなしているようだ。半透明のウィンドウを2つ3つと開き情報の整理をしていた。

 キョージュー、またの名を『教授』。AWOにおいて大門先生率いる検証班と肩を並べる検証班のリーダー的存在。

 主にこの世界における歴史などの検証や情報収集を行っている。他にも魔物の生態だったり、情勢だったりと幅広く情報を集めているようだ。


「マスター。ブラックを1杯お願いします。ゼロさんは飲み物、何にしますか?」

「私も同じものを1つ」

「それで、ゼロさん。今日は言い情報があるのだとか」

「そんなに急がなくてもいいじゃないですか。まずはお互いの現状からでも話しませんか? こうして話すのもβぶりなのですから」


 ウィンドウを閉じた教授がいきなり本題に触れてきた。

 久しぶりに教授と会ったのだ、直ぐに本題に入るのは余りにももったいない。

 彼ら検証班は情報の塊。何気ない会話にも私が知らない情報がある。一刀も情報を集めているからと言ってあいつにだけ頼るのはフェアじゃないからな。


「それもそうですね。では私から近状説明をしましょうか。まず私は見ての通り種族はヒューマンにし、職業の方を錬金術師にしました。職業については二次職で初期職業以外の生産系ジョブが出るとの判断からです。そのためスキルについても検証に必要なものを重視して習得しています」

「やはりそうしましたか。初期選択で選択できる生産職は明らかに種類が少なかったですからね。私は今回はデミヒューマンの神官職にしましたよ。スキルの方も神官のテンプレと言っても過言ではない構成でーー」


 飲み物が届くまで教授と今の進行状況の確認を行った。

 教授たちのレベルは15になったばかりのようで今日の昼に鉱山の街に到着したらしい。

 始まりの街とここを繋ぐ街道にいるイーコスウルフは弱体化しており15レベルはあれば倒せるようになっているみたいだ。しかし、LV15でも戦闘職ではない教授たちはレベルの高いプレイヤーに護衛料を支払いこの街まで運んできてもらったようだ。


「おしゃべりはこの辺にして本題に入りましょうか」


 コーヒーを一口、口に含み匂いを楽しみながら飲み込む。

 私にはコーヒーは合わないようだ。この独特な匂いがダメなんだよ。紅茶なら飲めるのだがな。舌が大人になるのを拒んでいるかもしれない。


「そうですね。と、その前に教授、現状で一番価値のある金属は何ですか?」

「価値のある金属ですか。私の知りえる限りでは鉄、いや金が一番価値が高いと把握していますね。しかし、その言い方だと他の金属があると言うことですね?」


 これは私が調べた情報と合致している。

 流石の教授でもミスリルについてはまだ知らなかったようだ。基本どんなことでも知っているので知らないことがあって安心した。


「ええ、もちろんあります。それがミスリルです」

「なるほど、ミスリルですか。しかし、表の店では売っていませんでしたね。それは裏の情報ですか?」


 裏の情報。つまり一刀経由の情報だと思っているのか。

 確かに教授たち検証班が調べて見つからないのなら裏の情報と考えても仕方がないか。

 それに鉱山でミスリルが採掘できるのは中層以降であり、鉱夫組合に認められた人しか中層以下には入れない。つまり、普通のプレイヤーは上層にしか入ることができず、上層で採掘できる金属は最大でも金までしか採掘できない。

 なので、ミスリルの情報が出回っていないのはしょうがないことなのだ。教授たちならそのうちミスリルがこの街で産出されていることは知ることができるだろがな。

 ちなみに私は兄弟の護衛と言うことで中層に行けたが本来なら上層で狩りをする予定だった。

 兄弟と出会えたのはまさに天命だったのかもしれない。おかげで中層に入る許可を貰えたしな。


「裏の情報ではありませんよ。正真正銘、表の情報です」

「表の情報でしたか。私としたことが早とちりをしてしまいまいた。これは恥ずかしい。で、その情報を提示すると言うことはミスリルの入手方法があると言うことですか?」

「そういうことです。本来ならこの街ではミスリルは売られていない。ここで採掘されるミスリルは全て王都に納品されるようですからね。そのミスリルを現段階で入手する方法知りたくないですか?」


 いずれこの情報も知られてしまう。そのためにも早く情報を売ることが大事だ。さて、この情報を教授は買ってくれるだろうか?


「是非、買い取りたいですね。しかし、別に今買わなくてもその情報は出回りますよね」

「もちろん、出回りますね。ただしその時には情報の価値は落ちていますよ。それに効率よくミスリルを集める方法を知らなければ収集は大変ですからね。教授たちならこの情報を上手く捌けるでしょ? 今後の活動資金も今はあるだけ欲しいはず」


 潜りモグラは鉱山にいれば勝手に襲い掛かってくることは滅多にない。

 その習性からしてこちらからアプローチをかけなければ出現しないことが多いのだ。この情報も今日の護衛中に兄弟に教えて貰った。

 兄弟たちと会ってなければ潜りモグラの魔石を集めるのに1週間はかかっていた自信がある。


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