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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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魔法

「効かんなぁ」


 空間を砕く一撃が悪魔を襲う。空間に綻びが生じてその座標にある対象を破壊する魔術はしかしヤツを前にして無理やり綻びが修復された。そしてヤツを拘束していた氷の大地すらも解けて大地本来の色を見せる。


「何が起こった?」

「あの攻撃が効かねぇってんなら大分ヤバいぞ!?」

「...本当にバケモンだ」


 静寂が訪れ、暗雲が立ち込める。勝てるかもしれない。そんな僅かな期待を裏切るように後方からの魔術もヤツに近づく前に霧散し始めた。


「暴食は喰らい、解き明かし、我がものとする大罪だ。知らんのか?」


 驚いたといった表情で悪魔が語る。もしそれが本当ならば勝てることなど出来ない。


「パラライズ」


 魔術陣から紫電が悪魔に飛ぶ。その紫電を悪魔は横に侍らせた影に受けさせる。細かい紫電が影の身体を這うがじきに効力を失って光を消した。パラライズ本来の抵抗エフェクトではない。


「初回のアーツなら効くはずだ。天命、一閃はあとどれだけ使える?」

「ダメージを期待できるのは3つだけだ。だが俺だけじゃ削り切れない」

「春ハルさんも魔術の準備をしてください。インパクトとフローズンエリアはダメです」

「やってみる」

「俺と龍角は死ぬ気でお前たちを守るぜ」

「どんな攻撃でも我の龍鱗で防いでみせよう」


 確かにヤツは攻撃を無効化できるのかもしれない。だがパラライズの時の行動から初めて使う技なら効く可能性が高いことが分かった。これはヤツに勝つ切り口となる。


「何をぺちゃくちゃと喋っている。もう貴様らとの茶番は終わりだ」


 悪魔が右腕を伸ばす。その手は私たちに向かっているが正しくは私たちの背後、王都を狙っているのだろう。赤の魔術陣が展開し、一回転するとともにその規模を拡大させる。最終的に直径10メートルはある魔術陣が構築された。あの魔術陣からは一体どれほど凶悪な攻撃が繰り出されるのか。


地を照らす天なる太陽(アマテラス)


 悪魔が言葉を紡ぐ。巨大な魔術陣から小型の太陽が生まれた。それは目視するのが難しい程の光を放ち、大地を融解させ、空気をプラズマ化させながら徐々に進行を始める。初めはゆっくり、それでも認識できる程には速度が増していく。


「ヤバいぞ!?」

「天命!」

「クソが! しかたねぇ〈奥義・水一閃〉」


 小規模な太陽に向かってそれすらも吞み込む大きさを持つ水の塊が天命から放たれる。そして少しの時間を置いて衝突する。視界を塞ぐ大量の水蒸気を生み出しながら太陽を消そうと海が藻掻く。だが余りにも高い熱量を奪うにはまだ足りない。


「私も手伝う」


 そこに春ハルさんが魔術を行使して湖を生み出し、後方の魔術士たちからも水球が到達する。一瞬で水は気化し、視界は悪く殆ど先が見えない。さらに蒸された水は周囲の気温を上げる。


「いい加減鬱陶しい」


 そして太陽は小さな火種となってかき消された。残った水が悪魔の下に向かうが衝撃波と共に吹き飛び、悪魔が翼を動かして宙に飛び上がる。


「貴様らはそこで見ているがいい」

「身体が!?」

「重...い!」


 悪魔の傍らにいた影が魔術を行使した。気づけば地面には極大な魔術が描かれており、私たちに対して跪くことを強制する。重力に関する効果を発揮する魔術は2度ほど受けてきたが今ほど強力な重圧は初めてだ。

 完全に身動きが封じられ、白黒やアーサーのバフを軽く超越する拘束能力を披露する。オリジナルスキルで防御力や耐性が上がっているはずの龍角すら拘束されているので私では脱出することが出来ないだろう。


「貴様らに見せてやろう。この世界の命令権とやらを」


 悪魔が手を広げる。

 動かなければ。ヤツの行動を止めなければ。それだけが脳内を駆け巡るが残念なことに万象夢幻は発動しない。


「ウォおオぉお!」

「動けぇヤァあああ!!」


 龍角と天命も力を振り絞り立ち上がろうとする。龍角だけは立ち上がることが出来たが余りにも遅い。もし早く動けていても一人ではあの影にあしらわれて終わりだ。


「私相手にここまで耐えたことを誇るといい!」


 悪魔の傍にいた影がヤツに吸い込まれる。それによってヤツが放つ圧力は増大し、私たちの眼前に一つの魔術陣が構築される。赤よりも朱い魔術陣はさらに2つの魔術陣と重なり合い、3つ、4つ、5つと組み合わさって行く。それらは最終的に綺麗な球を生み出した。

 朱い球体。それら一つ一つが魔術陣...ではない。魔術陣で立体構造は出来ないのだ。それを可能とするのは魔法陣だけ。つまりあの悪魔は王都に対して魔法を撃とうとしている。


「これが主の力よ!」


 朱い魔法陣が脈動し、一つの炎へと姿を変える。黒くて朱い拳ほどの大きさを持つ炎は頼りない揺らぎを残すがそれも一瞬、王都に向かって打ち出されると同時にその大きさを膨れ上がらせる。


「ダメェぇえええ!!」


 春ハルさんが黒い炎に向かって手を伸ばした。ヤツが魔法を発動すると同時に私たちに掛かった重力は消え失せたがヤツを攻撃することが出来ず、ただ唖然と過ぎ去る炎を見つめるだけしかできなかった。


「低級悪魔が魔法とは無理をするよのぉ」

「一応見に来て正解でしたね」

「最上位に近い気配を感じたからのぉ。もうおらんようじゃが」

「そんなことよりクソバ...ゴホン。老師、アレを」


 初のワールドクエストは失敗か。そう良くない考えが脳裏を横切った時、戦場に似つかわしくない声と聞き覚えのある声が聞こえた。


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