表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
373/378

悪魔は嗤う

「数は力か...」

「こう見ると壮観だな」


 視界を埋める程の飽和攻撃が悪魔を捉え、周囲の靄ごと猛威を振るった。龍角や春ハルさんの一撃さえも耐えきった靄だが無数の攻撃に手も足も出せずにその存在を消していく。1や10のダメージでも積み重なれば万となる。100体はいた靄は殆ど消え失せて残るは悪魔だけとなった。


「想定より強力ですね。皆さん準備を!」


 悪魔のHPは削れていた。靄を吸収したことによって6割まで回復していたHPを今は5割まで戻している。実質、ヤツのHPが一割回復した結果になるが残りHPが6割と5割では大分気の持ちようが違う。

 しかし注目すべきはヤツを覆う漆黒の靄だ。あの靄が飽和攻撃を防いだ元凶とみて間違いなさそうだがまるで大切な存在を守るかのようにヤツを囲っている。


「ここに来て新手はやめてくれよ」

「正真正銘の最終形態ってとこか?」


 靄が引き、悪魔が姿を見せる。ヤツの姿に変わった様子はない。裂けた口、掌に口を持つ6本の腕、光を呑む二対の羽に蛇のように撓り牙を向く二又の尻尾、大地を踏みしめて不動を体現する4本の足。第三形態のソレだ。


「見よ、見るがいい! この溢れんばかりの力。そして主の化身を!!」


 違うのはヤツの背後に立つ影だ。漆黒の靄で出来ているのか不定形で姿が常に変動する人型の影。悪魔よりも大きく、何よりヤツよりも強力な力を感じる。


「困りましたね。あのバケモノは天使の敵のようですよ」

「みりゃ分かるわ、そんなもん」


 影が出現してからアーサーが持つ神器が光を出しながら震えている。悪魔の言葉から鑑みるにあの影は七大罪の暴食のナニカなのだろう。こんなことならば少しでも悪魔について調べておけばよかった。私が知っているのはちょっとした昔話程度だ。


「罪の一端を借り受けるだけでもこの力だ! この世界に馴染んで仕方がないわ!!」


 上機嫌な悪魔が右手を振るう。すると周囲に10の魔術陣が出現し、一斉に雷を落とした。その内の2つが私たちの下に落ちる。一つはアーツで守りを固めた不知火が受け切り、もう一つは万象夢幻が発動して無効化する。しかし攻撃を受け止めた不知火のHPが3割も削れている。


「まじかよ。強くなりすぎじゃね?」

「ゼロ! ヒールを頼む!」

「もう一度来ます!」


 不知火を回復させながら期待を込めてシールドとリフレクトを展開する。だが再び落ちてきた雷を前に呆気なく砕け散り、二度目の万象夢幻が発動する。


 急激に力を付けた悪魔はまるで力を試すかのように魔術を行使し始める。

 その一つ一つが非常に強力でこの最前線に立っているのはヤツと私たちだけとなってしまった。少し前まではまだプレイヤーと魔物が残っていたが今ではその影すらも確認できないありさまだ。


「回復が間に合わん。ポーションを不知火に投げろ」


 ヒールやハイヒール、エリアヒールなど回復系のアーツを何度も使用しているが全ての攻撃を耐える不知火のダメージ量は回復量を上回っている。このまま続けば不知火が落ちてしまう。リザレクトで蘇生できるかもしれないがその程度の隙があればヤツの攻撃が私たちを呑み込むだろう。そうなってしまえばお終いだ。


「春ハルさんは反撃用に魔術の準備を。出来そうなら壁を生み出して攻撃を防いでください」

「分かった。最低でも1分はいる」


 時間を掛ければ掛けるほど強力になるオリジナルスキルを持つ春ハルさんを守るべく私たちが最善を尽くす。今はそれが妥当だとアーサーが判断を下した。


「我もあの攻撃を受けよう。回復は頼んだぞ」

「了解だ」


 龍角の黄金の鱗は悪魔の魔術にも耐えうる。不知火と一緒に防御に専念するならこの攻撃も耐えきれるかもしれない。


「なら俺は援護に回る」


 天命も残りの魔剣術を使って僅かに雷の軌道を逸らすことに集中し始める。かく言う私も不知火と龍角のHP管理に集中している。


「精々足掻いて見せろ!」


 悪魔の攻撃が一段と激しくなる。雷は変わらずに火災旋風や氷の礫が打ち出され、面を埋め尽くさんばかりの攻撃が迫る。それに対抗し、私たちの背後からも面を満たす魔術の攻撃が行われた。

 雷には土の壁が立ちはだかり、火災旋風には水を纏った嵐が迎え撃ち、氷の礫は炎の柱が立ち昇り気化させる。さらに後方からの支援はヤツの手数を上回り、ヤツ本体に攻撃を通した。


「背後のアレが護衛のようですね」

「影を剥がさないとヤツには攻撃が当たらないかもしれん」

「それなら私があの影を狙います。春ハルさんは悪魔をお願いします」

「方法があるのか?」

「エクスカリバーがもう一度撃てます。ただ先ほどよりは威力が出ないので悪魔に対しては有効打にならないと思います。なので私が影を狙います」


 アーサーの提案に全員が頷く。


「行きます。エクスカリバー!!」


 アーサーが持つ剣が振り下ろされて極光が影を呑む。光が強く内部ではどうなっているか分からないが悪魔の傍に影がいないことは見えた。


「今です!」

「まかせて!」


 地面に青色の魔術陣が描かれて悪魔が立つ大地を凍らせる。空気の温度を瞬く間に下げ、凍った大地はヤツの足を蝕んで身動きを取れなくした。

 そこに放たれるのがインパクトだ。今判明している魔術の中でおそらく一番強力な破壊力を誇る一撃ならあの悪魔にもダメージを与えることが出来る。ヤツに近づく術がない現状ではこの攻撃方法が最善だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ