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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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嫉妬の使徒

 守之術理 風乗


 風に乗る。それを体現したのがこの術理となる。身体の力を抜き、落ち葉が風に舞うように赫刀の軌道からズレる。簡単に言えば背面飛びだ。

 背中の下で空気が裂かれた。全力疾走からの静に準ずる挙動を成しえるのは白黒のおかげと言えた。


「上!?」


 地面への着地と同時に右斜めに跳躍。そこにはアドオンによって調整を加えたシールドがある。大地の塔で培った技術は三次元的な動きを可能とする。

 シールドを踏みつけさらに跳躍。今度はさらに上に配置したリフレクトに飛び乗る。そして踏み出す。


 攻之術理 降龍


 同時にリフレクトは衝撃に耐えかね破壊され、上段からいや、宙から全力の一撃が久遠を襲った...はずだった。


 確かに全力の一撃は久遠を捉えていた。それは確かだ。だが手ごたえが余りにも硬い。まるで大きな岩を切ったような感覚を受ける。


「時間切れか」


 危機を察して素早く後ろに跳躍。追撃を警戒してさらに後ろに退く。嫌な汗が額から垂れる。早期決着。それが第一目標だったのだがもう不可能になってしまったらしい。


「嫉妬。ソイツが悪魔と契約することで手に入れた称号だ」


 時間稼ぎだろうか。久遠は赫刀を構えたまま攻撃することなく私を睥睨する。攻めるか、考えた末にヤツの話に乗ることにした。


「七つの大罪か? ワールドアナウンスで聞いた覚えがある」

「ああ、それだ。裏世界の住人にして原初の悪魔から罪の概念を与えられた一体。それが嫉妬の■■■■■■だ。俺はこいつと契約してこの力を得た」

「その契約とやらは相当条件が良いようだ」

「...やはり。知らないか」

「なに?」


 心底、残念だと言いたげに久遠は溜息を吐く。


「お前だと思っていたのだが見当ハズレだと言うことだ」

「......忍耐...美徳か?」

「その反応。お前ではないのだな。とすればアーサー、天命あたりか? まあいい。どちらにせよ後で寄る予定だからな」

「逃げる気か?」

「は! はぁはっはっっは!! 笑わせてくれる! お前を殺してからに決まっているだろ!神器がないお前にこれだけ手間取っているのは俺のプライドが許さないからなぁ!!」


 赫刀から発せられる気がたちまち大きくなる。それは魔力かはたまた別の何か、どちらにせよ久遠の殺意と同調して大きくなっているように感じられた。


「だがその前に。ゼロ、お前に一つ提案がある。大罪の席、興味はないか?」

「お前が持つソレのような得物が手に入るなら魅力的な提案だ。だがやめておこう。ソレではないが私も少々強力な武器が手に入りそうだからな」

「お前ならそう言うと思っていたさ」

「最後に聞きたいことがある」


 久遠が戦闘態勢に入る。だが戦闘が再開する前に私が問いをかけた。


「このスタンピードとやらを起こしたのはアレ、つまり嫉妬の悪魔であってるか?」


 私の視線の先では遂にレオが悪魔を二つに切り裂いたところだった。毎度の如く行われる超再生が起こらない。第一形態は突破したと思って良いだろう。


「いいのか、時間はお前を味方しないぞ? 嫉妬は他人のパラメータさえ妬むからな」

「ああ問題ない。あいつを殺ればスタンピードが止まるかが今は重要だ」


 このイベントも佳境に迫ってきている。だがこちらの兵力も摩耗していることに違いはない。戦場の声を聞けば防衛側にも無理が来ていることが易々と伝わってくるのだ。


「半分正解と言ったところだな。確かにアレをやればこれ以上スタンピードが拡大することはない」

「ほう、ならもう半分はなんだ?」

「アレは■■■■■■じゃない。この身で直接感じたから言えるがあの程度が嫉妬を背負えるわけがない。アレはよくて男爵だな。いや、スタンピードを起こしたことを加味すれば爵位無しの方が可能性がある」

「なんだ? つまりあの悪魔は大して強くないと」

「今の俺たちからすれば強敵だ。だが上には上がいるぞ? ■■■■■■ならあれ程度、一瞥もしないはずだ」


 可能性としては考えていたがアレが雑魚に分類されるのか。ああ、アプデが楽しみで仕方ない。私もあれと同じ、いや、さらに上を目指せると言うわけか。


「良いことを聞けた」

「そうか。なら...」


 私と久遠が飛び出すのと同時に大地を駆ける咆哮が聞こえた。

 悪魔との戦いも第二ラウンドを開始したのだ。


「さぁ今度はどう来る? 今の俺はお前と対等だぞ?」


 速い。先ほどとは比べ物にならない程速い。これがあの神器が持つ力か。相手のパラメータに嫉妬し我がものとする。多分だが今の久遠のVITとAGIは私と同等かそれ以上になっているはずだ。もしかすと他のパラメータもかもしれない。だが、ここで久遠を仕留めることには変わりない。


「魔力は便利だと思わないか。これがあるからこそ魔術やアーツが使える。なにより、その刀を出せるのだろ?」


 互いの間合いが交わる少し前にメタモルフォーゼを使用する。得物や防具は変わらない。唯一変わったのは腕に飾られたブレスレットだけだ。この変化に久遠も直ぐ気が付いた。


「魔力操作を乱す気か! だが効かんさ!」


 未だヤツが持つ赫刀にブレの一切が無い。召喚してしまえばそれまでで追加の魔力を消費しない作りなのか。そんなはずはない。魔の森で対峙した際も僅かな魔力が赫刀に流れているのを魔力視で見えた。何より同じ神器を持つアーサー自ら証明している。魔力が尽きれば使えなくなると。


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