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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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魔人、久遠

 レオがオリジナルスキルを使用してから約30秒が経過した。たった30秒かと思うかもしれない。あの悪魔との戦闘を経験していれば高々1分にも満たない時間で何が出来るものかと思うだろう。


「第一形態は余裕かな」


 聖が後頭部で手を組みながら呟いた。戦場において己の武器すら持たないのは異常だ。いつ何が起こるか分からないのだから戦闘準備をしておくことに間違いはない。だが今だけは聖の気持ちも理解できる。それほどまでにレオと悪魔の攻防はレオ優勢に運んでいるのだ。


「この私ガァア!!」

「悪魔なんて怖くねぇぜ!! 本気見せてみろよ!!」


 悪魔の剣とレオの大剣がぶつかり合い、砕ける。何度も鬩ぎ合いを興じた悪魔の剣は見事にその役目を終えた。悪魔は瞬時に黒い靄を変化させて盾を生み出そうとするがそれよりもレオの斬撃の方が幾ばくか速かった。

 悪魔の身体に大剣がぶつかり、衝撃波が発生する。レオの身体能力は刻々と増加しており、今では悪魔のソレさえも上回る。地面に罅割れを起こしながらヤツの鎧に食い込み、砕き、加速した剣速をもって悪魔の腕を切り落とす。技などない力によって強引に引き起こされた現象を見て確信する。


 オリジナルスキル使用から40秒が経過した。


「また速く!?」

「俺は止まらねぇ!!!」


 青の軌跡を残して大剣が振られる。悪魔は再生させた右手に剣を携えて受け止めようとするが身体能力の差によってレオが押し勝つ。剣を砕き、それでも勢いを失くすことなく最後にヤツの腕を叩き切る。

 だがヤツの再生能力も常軌を逸している。時間が巻き戻されるように右腕が再生してしまうのだ。これでは手数の有利は取れない。


「どんだけ再生してもダメージは通ってるんだろ?」


 ニヤリと獰猛な笑みを浮かべながらレオが攻め立てる。青の軌跡が煌めくたびに悪魔の身体は欠損し、それでも再生される。だが着実にダメージは蓄積されていた。


「これで上位種にすら至っていないのだから恐ろしい! 貴様だけは殺しておかねばいかんなぁ!!」

「できるもんならな!!」

「レオ、それは罠だ!」


 悪魔が後退し、追いかけようとレオが飛びついた。聖が吠える。悪魔が嗤っているからだ。身体能力ならば今のレオは圧倒している。だが悪魔の強みはそれだけではない。強力な魔術も何より正体不明の黒い靄がある。


「直情的な戦士は降ろしやすい!」


 悪魔がレオに手を翳し、掌から例の靄が現れる。靄は一瞬にして膨大になり、簡単にレオを飲み込んだ。ロードたちの心配する声が上がる。だがそれも一瞬だ。


「意味わかんねぇことすんな!! ビビっただろ!!」

「なッ!? どういうこ、ガァアア!!!」


 私たちの心配をよそに靄を突き破ってレオが現れる。隙を晒した悪魔は大上段からの一撃を喰らう。どうにか急所だけは避けたようだがその代償として右肩から先が無くなっていた。それでも悪魔にとっては右腕程度の認識なのだろう。レオの追撃が来る前に後方へ離脱して見せた。


「何が起こった? 瘴気を浴びて平然といられるわけがない。普通の人間ならば魔人への適応が...」


 悪魔はレオを警戒しながらブツブツと呟く。


「魔人化? そんなのキャンセルに決まってんだろ。俺は狼の獣人になりてぇんだよ!!」


 虚空を突くレオは操作を終えるとまた駆けだした。悪魔も同じだ。未だ困惑はしているようだが隙を晒す程ではない。


「重要そうなキーワードだね」

「ああ、だがあの調子では情報を聞き出すことは出来ないと思うが」


 聖と二人で頭を捻る。瘴気に魔人。知りたいことは多くある。だがレオと悪魔の戦闘に入ることは出来ない。何しろステータスと言う目に見えたスペックで圧倒的に劣っているからだ。ここで私たちが手を出したところで足手纏いにしかならないだろう。


「ゼロ!! あぶねぇええええ!!」


 物思いにふけていると不知火が飛び出した。刹那に響く金属音。不知火は吹き飛び、そして目に見えた光景は紅く輝く刀。久遠だった。この戦いの最中いつかは来ると思っていた。しかし、それが今だとは。


「魔人について教えてやろうか?」


 魔人について知れると言うのならば是非聞きたい。だがヤツは私が目当てでここに来ているのだ。油断すればあの刀で斬り殺されかねない。


「あの森でのことを覚えているか?」

「当たり前だ。そう言えば腕が元通りになっているな。わざわざ死に戻ったか?」

「お前もそう思うか? だが違う」


 そう言って久遠は自身の左腕を切り落とす。


「何がしたい? 私に対してハンデのつもりか?」

「いや、お前にハンデをくれてやる程自分の力に自惚れていないさ。まぁ、見ておけ。魔人の身体と言うのは案外便利な物でな、切断された程度なら容易に結合する」


 久遠は地面に落ちた左腕の切断面同士を合わせた。すると直ぐに腕は元通りになった。普通の人間では魔術を使わない限りあり得ない。つまり魔人とやらが関係しているのだろう。


「それが魔人の力か」

「その一端と言う訳だな。悪魔に魂の契約を何たらと面倒な工程があるが得られる力は絶大だ」

「そこまでして私と殺り合いたいか」

「ああ、そうだ。俺の家は少し変わっていてな。力こそが全てだった。そんな家で育ったわけだからお前に一度も勝てていないことは少々癪だ」


 つまり戦闘狂なのだろう。戦うことが人生。私も似たようなものだから分かる。


「それと目標が出来てな。知っているか? この世界の神は殺せるらしいぞ」

「神殺しとは住民に聞かれれば罵倒では済まないだろう」

「魔人となった時点で既にあれらは敵だ」

「一理ある」

「そう言う訳だ。まずはお前を殺す」


 ゆったりと、それでも脅威は悪魔以上、朱い四尺刀が薙がれた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 全ての作品と更新に感謝を込めて、この話数分を既読しました、ご縁がありましたらまた会いましょう。(意訳◇更新ありがとな、また読みに来たぜ、じゃあな!)
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