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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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悪魔との攻防 その5

「効くなぁ。この私がここまで手を煩わされるの久しぶりだァ!!」


 それは一瞬の出来事だった。悪魔の身体から黒いオーラが沸き上がり、身体に刺さっていた矢が抜け落ちる。肉体は瞬く間の内に再生し、大剣を振り下ろしたレオを縦一文字に斬り飛ばし、背後から近寄って来ていた一刀すらも見抜いて手に持った剣を投擲して見せた。


「大丈夫か!?」

「人の心配をするとは驕るなよ? 人間」

「クソ! 間に合わねぇ!!」


 悪魔の攻撃は止まらない。次に標的にされたのは不知火だ。毎度、仕掛けた攻撃を防がれるのが気に食わなかったのか、その一撃はレオを切り飛ばした時よりも幾分か強力そうに見える。


「聖、引き離せ!」

「任せて!」


 この際、不知火がダメージを負うのは許容するしかない。ヤツの攻撃を連続で受けなければ私が回復させることが出来るからだ。だから聖に悪魔を引かせるように頼んだ。同時に私もハイヒールを不知火に飛ばしながらダメージを帳消しにする。


「さっきよりも弱くなったぞ? 貴様、大分魔力が薄くなっているではないか」


 悪魔が振るう剣が聖のオリジナルスキルを纏った矢を両断する。先ほどまで効いていた攻撃が効かない。悪魔の言う通り、聖のMPは大分少なくなっている。MP回復ポーションは常備しているが時間稼ぎが出来ない現状で使えばただの的にしかならない。どうするべきか。そう思考を回らせていると先にヤツが動いた。


「この私が直々に魔力の使い方を教授してやろう。貴様らは地べたに這いつくばるといい」


 言葉にならない重圧が私たちを襲う。強者にのみ許されたプレッシャー。それが心臓を鷲掴みにする。


「どぉりゃぁあああ!!」


 ただし脳筋には効かないようだ。レオは一人だけ悪魔に向かっていく。ヤツの顔には僅かに驚きが見えたがそれも一瞬だ。


「クソ! 逃げてんじゃねぇよ!!」


 レオが放った一撃が悪魔に当たることは無かった。何故ならヤツは己の翼をはためかせて上空へ昇って行ったからだ。


「逃げる? この私が貴様ら雑魚を相手にして逃げる訳がないだろぉ!!」


 悪魔が腕を上げる。その動作と連動するようにして上空には巨大な魔術陣が展開された。見たことがない色の魔術陣だ。火属性である赤のように見えるが土属性である茶色の様にも見える。二色混合、それが意味するのは複合属性魔術だろう。


「地べたに這いつくばるといい!」


 ヤツの魔術が発動した瞬間、走っていたレオは地面に縫い付けられた。いや、レオだけではない。ヤツの近くにいた私たちや他のプレイヤー、さらに魔物までもが身動きを封じられたのだ。


「這いつくばれと私は言ったぞ?」


 その言葉と共に私たちに圧し掛かる重圧は重みを増していく。そして一人、また一人と潰されたカエルのように誰しもが地面に押しつぶされた。


「良い眺めではないか! 貴様らに相応しい!!」


 身動きが、指一本すらも動かすことが許されない。

 たった一つの魔術で戦況が覆った。この束縛から解放されようと力を込めるが力を込めた分だけ重圧は強くなる。それでもどうにかしなければ。

 逸る気持ちが焦りに変わっていく。そんな心境を知ってか悪魔は次の魔術を用意していた。黄色に染まる魔術陣は雷属性の象徴。速さと威力に長けた万能な魔術のイメージが強いがあの悪魔が使えばここら一帯は容易く焦土になってしまう。


「ぐわぁあ!!」


 後方から悲鳴が聞こえた。様子を窺うことが出来ないがきっと死に戻ったのだろう。今もなお強まるこの重圧によって圧死したに違いない。また一つ悲鳴が上がる。また一つと。


「この程度で死ぬか! 人間は脆弱だ!!」


 悪魔が笑う。このままでは私たちも死に戻りだ。

 切り札だった万象夢幻はこの魔術には意味が無いことが唯一の収穫か。そんなことを思いつつも最後に足掻いてやろうと力を込める。それでも意味を為さない。力を込めれば込める程、私に掛かる重圧は強くなっていく。


「クソがぁああ!!」


 レオが吠える。そして割れた。何がか。それは白の十字架だ。白の十字架が十個同時に割れ、砂塵となって消えたのだ。それが意味することは万象夢幻の発動。私に掛かっていた重圧が嘘のように消えた。

 それでも白黒の強化も同時に消失しているので身体は少し重く感じる。さらに僅かにだが重圧が襲って来た。このまま何も行動を起こさなければまたさっきと同じ状況になるだろう。ならば攻めるのみ。


 歩之術理 縮地


 地面を蹴り、悪魔との距離を縮める。同時に待機させていた魔術を行使しながら消費してしまった白の十字架を増やす。


「貴様か!」


 悪魔が嗤う。ステータス強化の要因が私だと分かったからだろう。その笑みは酷く狂気に満ちている。


「ならばどうする?」


 空中にシールドとリフレクトを展開し、空を駆け、ヤツ目掛けて拳を振るう。未だ白黒は全快に至っていない。この僅かな時間では白の十字架を14個までしか伸ばせなかった。


「狂ったか人間! たかが羽虫一匹にこの私が負けるはずがないだろ!!」


 空中にいるのに身体の軸がぶれることなくヤツは剣を振り抜いた。私は既に跳び出している。脚の踏み場のないこの場所では避けることなど出来るはずがない。あの一撃を喰らったのならば私は死ぬのだろう。喰らったのならな。


 攻之術理 震撃


 ヤツの攻撃と私の攻撃が当たるのはほぼ同時だった。


「ぐぅァア」


 力が抜けたように地に落ちる。世界に光明が差す。

 このたった僅かな時間のそれでもこの戦いの分岐点となる勝者は私だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 全ての作品と更新に感謝を込めて、この話数分を既読しました、ご縁がありましたらまた会いましょう。(意訳◇更新ありがとな、また読みに来たぜ、じゃあな!)
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