悪魔との攻防 その4
こんなに待たせるつもりでは...。お久しぶりです
結論からAWOは中央王国編で完結とさせていただきます。詳しくは後書きにて
それでは今日から20日ほどお付き合いください!
結論から言おう。ヤツの鎧を無効化することは現状できない。魔除けの腕輪の装備スキルを使えばもしかしたら可能性があるかもしれないが...。しかし今その博打をする必要性を感じないのでダメだ。そもヤツのHPバーが3本もあることを考えれば初端から切り札を切るのは愚策ともいえる。
「そう言う訳で僕たちが考えた作戦は...脳筋攻めさ!」
「誰に向かって言ってるんだ?」
「画面の向こうの君さ」
「レイドボスとの戦闘とは再生数伸びそうですな」
投稿用に動画を回しながら聖が作戦を述べたがまぁ、つまりそういうことだ。幸い悪魔の鎧が硬いといってもノーダメージではなく多少は貫通する。レオたちが押さえている間にロードや聖が渾身の一撃を放てばその内勝てるだろうきっと。
そのせいと言っては何だが私が出張ることは出来ない。白黒が切れた瞬間終わりだから仕方ないのだがどうにかならないものか。
「なぜこの私についてこられる!? 英雄と言えど所詮貴様らは卵にすぎんはずだ!」
「何言ってるか分かんねぇよ! おっらぁあ!!」
「そうだ。その一撃! 魂の階位からして上位種に至っていない。なのに何故、貴様らの気迫は上位種のそれに匹敵する?」
「だから分けわかんねぇって!」
レオは素で分かっていないようだが悪魔がステータス強化に言及し始めた。この拮抗を保てているのも全て白黒の成せる業だ。それが使えなくなったとしたら果たして勝ち筋はあるのだろうか。
「何か絡繰りがあるのか?」
「考えてる暇があったら避けてみなよ」
迸る雷撃が尾を引いて空間を走る。今まで容易にヤツを捉えていた矢はしかし悪魔を穿つことは無かった。
「貴様程度が出せる威力ではないな? 何を使った?」
矢を片手で握り止めた悪魔はレオと一刀を吹き飛ばしながら聖を睨みつける。白黒の出力が落ちたわけではない。困ったことにヤツは今までの攻撃に適応して見せたのだ。
「しつこいぞ、ゴミ虫どもが!!」
立ち止まる悪魔に対し、レオと一刀が攻撃を仕掛けた。レオが前方の大上段から、一刀が背後から挟み込むようにして行った攻撃はヤツによって生み出された二本の剣で防がれた。
達人技だ。両者の攻撃を躱すのではなく受け止める。しかも威力を全て相殺し、自身は一歩たりとも動かない。それを為すのがどれ程難易度の高いことなのかは想像に容易い。
「光栄に思うが良い。貴様ら相手にギアを一段上げてやろう」
その言葉と共にヤツに纏わりつく靄はより一層濃さを増し、鎧を頑強な物へと作り変える。剣も同じだ。先ほどよりも刀身は長く、そして分厚い。所謂大剣と呼ばれる物へと相変わった。
「相手方も本気ってか!?」
「本気? 程度が知れるな」
ヤツの変化に注意深く受けの構えを取るレオを見て悪魔は薄ら笑いを浮かべる。侮蔑の瞳を見せる悪魔が一歩踏み出した。軽やかでいてそれでも強かな踏み込みはヤツの言葉通りギアが上がったのだろう。気づけばレオの目の前まで移動している。
「ほぉ、やるではないか」
「バカげてるぜ。なんだこれ」
しかし、ヤツの攻撃がレオに届く前に不知火が割って入り、攻撃を防いだ。いや、言い方が悪いな。正しくは身を以って庇ったが正しいだろう。
身の丈程もある大盾を掲げるようにして構えている不知火はヤツの攻撃を受けて苦しそうな表情をしている。上から押さえつけられているため地面に罅が入り、見れば盾も凹んでいるのだ。
「俺がやれることは殆どないか」
ゴリゴリと減少するHPを回復させるために私がヒール系の魔術を連打すると同時にヤツの背後に回った一刀が攻撃を仕掛ける。虚しくもカキンと一刀の短剣はヤツの鎧に拒まれてしまったがそれを予想していたのだろう。直ぐに後退して見せた。
今の攻撃はダメージを与えてないのだから無駄な行動に見えるかもしれない。だが僅かに出来た隙を見て不知火もヤツの攻撃を往なし、飛びのいた。
「今ですかな!」
ロードがアーツ名を唱える。悪魔は一瞬周囲に目を向けるが魔術陣が展開されていいないことを確認すると不知火に飛び掛かる。
「グゥガァア!?」
そして背後からヤツの後頭部目掛けて空間を破壊する一撃が襲い掛かった。絡繰りは簡単。ロードのオリジナルスキルによって魔術陣が見えなくなっていただけだ。それが悪魔には見えなかったのだ。だから不意打ちの一撃を喰らい、致命的な隙を晒してしまう。
「下向いてても敵はいねぇぜ!」
一気に距離を詰めたレオがアーツを使う。蒼く輝く閃光が確かに悪魔の頭を切りつけ、ヤツの角を砕く。
「レオ、スイッチ!」
聖の言葉を受け、レオが悪魔から距離を取ると同時に悪魔が炎上し、青い稲妻がヤツを貫く。極めつけは聖のPSによってなされる三矢同時攻撃が悪魔の身体に突き刺さった。その効果は今までの戦闘で証明されている。
悪魔は連続して到来した数々の攻撃をその身に受けて声にならない慟哭を上げながら膝を突いた。斯く言う私もヘルオーラを使って多少の支援はしたが聖たちに比べればダメージ量は微々たるものだろう。
「残り六割だ!」
あれだけの攻撃を受けてもまだ四割しか減らせていないのか。流石に硬すぎる。いや、ここまで善戦しているのが悪魔にとってイレギュラーなのかもしれない。
なにせ本来ヤツはレイドボスだ。それがたった六人に足止めを喰らっているのは運営も想定外なのではないだろうか。まぁ何を言われようとこの場を譲るつもりなど毛頭ないのだが。
初期の構想ではこの後も中央王国編と同じ分量で10章ほど展開が続いておりましたが全てを書き終えるまで私のモチベーションが続くきがしません。そのため中央王国編の終了を機に完結とさせていただきます。今後の物語を楽しみにしていた方には申し訳ありませんが完結まで応援していただけると幸いです




