表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
352/378

宣戦布告

「そうですか。南門でも魔物が」


 戦いから一時間が経過した。今は外の戦いも安定を見せてきたため城壁に設けられた会議室で情報の整理を行っている。


「このまま行けば無事にイベントも終了しそうだと思うが、どうなんだ?」


 生産系クラン、ライブラリのクランマスターであるエストさんは現状を鑑みて教授に問うた。

 この場にいるのは今日イベントに参加しているクランのマスターたちだ。


「確かに何事も無ければですがその可能性はあります。しかし、この拮抗状態は必ず崩れると思われます」


 20ものクランマスターたちが集うこの場で教授は断言した。現状を簡潔に言うならば魔物の軍勢とプレイヤー及び王国の兵士たちの戦力が拮抗している。

 しかし、殺されれば死ぬ魔物や王国兵とは異なりプレイヤーはある意味不死の存在だ。故にデスペナルティを喰らおうともゾンビの如く魔物に牙を剥き、いずれ形勢は私たち側に傾くだろう。だが教授が言いたいのはそう言うことではないらしい。


「この戦いが動き出すポイントは大きく3つあると私は考えています。第一に変異種の存在。第二にPKの存在。最後に悪魔の存在です。特に変異種の存在がこの状況を覆す可能性が高いと考えられます」

「だがよ、変異種どもを俺らは何十と倒してんだろ? そこまで脅威とは思えんな」

「確かに単体なら数の暴力でどうにかなるでしょう。しかし我々が確認しただけでも奥に控える変異種の数はこの場にいる全員の手の指を足しても足りないと思われます。それらが一斉に攻めてくるような事態になれば被害の拡大は免れません」


 教授の言い分に納得したのだろう。エストさんはそれ以上口を出すことは無かった。


「私はPKの動向が気になるわ。イベントももう直ぐ終わりそうなのに一切動きがないって不安なのだけども」


 次いでミサキさんが不安を口にする。確かにそうだ。魔の森で闇子と会った時、彼女は『杠がもう動いた』と口にしていた。つまりPK、特に赤の雨はこのイベントに関与しているはずだ。


「それについては調査を続行していますが目ぼしい情報はありません。彼らが何を企んでいるのかそれが分かれば苦労しないのですが今は表立った動きがないことだけ分かっています」

「そう言うことなら私は悪魔について知りたいですね。ゼロさんが言った通りスタンピードにその悪魔が関与しているのなら今後何か動きを起こしてもおかしくないと思いますから」


 悪魔について口にしたのはアーサーだ。私も悪魔については興味がある。単体でスタンピードを起こせるような者が存在するとして果たしてどれ程の強さを持つ存在なのか...。


「それについては全くと言って良いほど情報がありません。遥か昔に旧大陸が悪魔によって侵攻を受けたことは御伽噺の領域で分かっていますがおそらく今回の悪魔はそれとは別の個体でしょう」


 分かってはいたが教授でも悪魔について解明することは出来なかったようだ。まあ、私の勘が近いうちに殺り合うことになると告げているのだから詮索するだけ無駄だな。

 圧倒的な強敵と思われる存在と戦えることに胸の高まりを感じるがそれを口に出すのは不謹慎なので真面目な顔を貫く。


「第一と第三都市に動きがあったみたいですね」


 目線を虚空に向けた教授は私たちの方に顔を向け直すとそう告げた。教授の言葉を受け、この場にいる者の大半がフレンドメールや掲示板を弄りだす。私も例外ではなかった。

 王都以外には親しい友人がいないので掲示板を眺めるだけに留めたが掲示板から得られる情報では数十体の変異種を筆頭に魔物が第一、三都市を苛烈に攻めだしたようだ。


「俺たちも外で待機しておいた方が良くないか?」

「...そうですね。大まかに情報の共有も出来たことですし、城壁にて待機しましょう」


 他の都市が攻められ出したのなら王都とて例外ではない。会議室に引きこもって数瞬でも対応に遅れるより、戦闘に備えておいた方がよい。そう言う訳で会議は解散の流れとなった。


「ゼロさんとアーサーさんは少し残っていただけますか?」


 部屋を出ようとした時、教授に呼び止められてしまった。私とアーサーの二人を呼び止めるとは一体どのような用件なのだろうか。


「今回のイベントですが個人的に調べたいことが出来ました。なので北東の指揮、つまり北門における全指揮をアーサーさんにお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」

「指揮官がこの状況で変わるのは些か問題があると思いますが...そうですね。教授にはお世話になっていますし、問題はありませんよ」


 どうやら教授は指揮を離れるらしい。調べたいこととは何なのだろうか。そんなことを考えていると教授の視線が私に向いた。


「ゼロさん、戦闘中の横やりに気をつけてください。久遠さんが貴方と戦いと言っていました」

「何故教授がそのことを?」

「情報に表も裏もありませんからね。久遠さんとはフレンドです」


 そう言うことかと納得しつつ久遠について考える。早いうちに再戦するだろうとは思っていたがやはり今日か。イベント最終日にして面白くなってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ