成果
久しぶりに投稿
「勝ったぞ!!」
「よしゃああ!」
「勝利の余韻に浸ってんじゃねぇ」
「敵はまだいるぞ。油断すんな」
デミワイバーン・ドクトゥスを倒すことには成功したが周囲の魔物が消えたわけではない。ヤツが消えた穴を塞ぐように魔物が攻めてきているのだ。しかし、これらの魔物は私が出なくても他の面々で対処できる。
「天命、一旦戻るぞ」
「賛成だ。今回は消耗が激しいぜ」
私と天命が帰ろうとした時、上空から人が降りて来た。砂埃が舞ったので私たちは手で払う。
「我の出番ではなかったのか?」
砂埃が晴れるとそこにいたのは龍角だった。戦闘の準備は万全のようでオリジナルスキルも使われている。真っ赤な鱗で身を包み、二本の角が生え、爬虫類のような尻尾を持つ龍を身に宿す、龍人とも呼べる姿をしていた。
「私たちで処理できそうだったんで処理させてもらった」
「そうだったか。なら我はこの者らの加勢に向かうとしよう。では」
「おう、気をつけろよ。後、一人で変異種に挑むのはやめときな」
「忠告感謝する」
龍角が魔物の群れに突撃していくのを見送った後、私たちは城壁へと戻った。道中、魔物に攻撃されることもあったが城壁に近づくにつれ魔物の強さは低下するので問題は無かった。
「二人ともお疲れ様です!」
「戻ったぞ」
「あれを倒してしまうとは流石ですね」
「ほんまやで。せやけど龍角はん待てばリーダーも切り札切らんくて良かったんちゃいます?」
「あんなもん見せつけられたら倒したくなっちまうだろーが」
「天命に同意だ。良い戦いだった」
「二人とも戦闘狂」
戻った私たちを向かい入れた雲雀たちとガヤガヤ話しながら城壁から降りる。今回はこれでお終いだ。私は一度ログアウトして休憩を取る。その後は時間に余裕がありそうならまたログインするだろう。
今回は殆どが後方支援に止まっていたので次は近接戦で挑むのもありだ。明日起こるだろう事態を考えると早くから剣を握っておいて間違いはない。イベント本番になればどうせ私も前に出るはずだからな。
〈戦闘が終了しました〉
〈刺突強化ⅡのLVが最大になりました〉
〈魔力隠蔽のLVが最大になりました。魔力隠蔽の進化が可能です〉
〈遠目のLVが最大になりました。遠目の進化が可能です〉
久しぶりのインフォな気がする。内容は各種スキルレベルが上昇したようだ。刺突強化Ⅱについてはこれで打ち止めだが魔力隠蔽と遠目には上位スキルが存在するのでそれぞれ5JPだけ支払って進化させておく。
「素材の量が凄いです! 新しい装備作ってもらお~かな」
「ええ素材あったらうちが買取るで」
「あんだけ狩ったにしては少なくねぇか」
「実質このイベント中はレギオン状態のようなものですからね」
「ゴブリンとかの素材はいらない」
「はは、そりゃあうちも買取せぇへんで」
「ヤツの素材は...あった。渋いな」
ステータスを確認した後、他の者と同じようにインベントリを覗くと大量の素材を入手していた。しかし思ったより素材の量が少ない。変異種の魔物と戦ったのにそれらが落とすアイテムが殆どない時点でイダンの予想通りイベント仕様と見るのが無難だろう。
「うちは鉤爪やね」
「私も同じ!」
「俺は魔石だな」
「私は飛膜ですね。ローブの素材に使えると良いのですが」
「私は嘴だった」
「私は肉でしたよ。これでは装備の強化も出来ない」
本音を言えば私もイダンと同じ飛膜が欲しかった。ヤツの被膜は樹王を以てしても切り裂くのに強い抵抗を受けたから相応に頑丈なはずだ。もしくは鉤爪もありだ。プレイヤーを容易く切り裂く程に鋭利な爪なら使い道は幾らでもある。
ちなみに交換を提案したところ無事に断られてしまった。今のところ食材系のアイテムの価値は低いので仕方ない。竜の肉なので美味しいことを祈っておくとしよう。
それから暫くインベントリを覗いていた私たちだが天命たちが夕飯を食べるためログアウトすることになり、解散の流れになった。天命、雲雀、蓮の三人がログアウトし、イダンは自分のクランに戻り、春ハルさんも宿に戻って行った。
私もこれ以上この場にいる必要が無いので宿に戻る。だが、その前に。適当な屋台を見繕い、串焼きを購入して近くのベンチに腰を掛ける。
謎肉の串焼きを食べながらルドルフさんの串焼きには一歩劣ると言った感想を抱く。そう言えば私が向こうにいた時は彼も始まりの街にいたが大事ないだろうか。師匠と繋がりがあるようだし、案外無事なような気がする。
「それはそうと...あった」
インベントリから一つのアイテムを取り出す。天命たちは何も言っていなかったが私の下にはあるアイテムがドロップした。お喋り大好きな雲雀がこの話題を持ち出さなかったと言うことは少なくとも雲雀は入手していない。
可能性があるとすれば天命となるがこれと同じアイテムが複数ドロップするのは今までの経験上無さそうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〈魔除けの腕輪〉 伝説級 ☆10
自身から半径1メートルに魔力による領域を常時展開し、範囲内の魔力を伴う事象を低減させる。この効果は自身に近い程強力になる。装備スキル〈魔封じ〉
魔力に通ずるならば我が手中である。何故なら我は魔を統べる者であるからだ
〈魔封じ〉
効果発動から30秒以内に対象の身体に直接触れた時、対象は10秒間魔力を伴うあらゆる行動が無効化される。また、このスキルを発動させた時、自身も同様の効果が付与される。このスキルは途中でキャンセルすることは出来ず、一度使った場合、再使用までに100時間のクールタイムを必要とする
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「...化物級だな、これは」




