表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
345/378

デミワイバーン・ドクトゥス その3

「ピュテェ?」


 気づかれた。しかし、この距離なら逃げることは叶わないだろう。


 空中落下を続けること暫く、デミワイバーン・ドクトゥスの奮闘の甲斐あり、ヤツの周囲は霧が消えて目視でその姿を見ることが出来た。

 デカい。全長は軽く10メートルはありそうだ。鋼鉄のような光沢をもつ皮膚、長い嘴、鋭い鉤爪、鞭のように撓る尻尾。

 空中でこれらが振るわれれば猛威だが直ぐに地上に落としてやるから安心して狩られてくれ。


「ッチ。本当にバフが切れたか」


 ヤツとぶつかるまで残り僅か、常に開いていたステータス画面の情報から掛けていたバフの類が無効化されたことが知らされた。それに魔力が碌に練れない。それでも樹王は鋼並みの強度を持ち、その造形から多少は斬るという行為も可能としている。


「ピュシャァア!!」


 ヤツがこちらに振り向き、その眼光で私を射抜く。その瞳からは煩わしさを感じ取ることが出来た。しかし、私のことをしっかり敵と認識している。だからだろう。唐突に万象夢幻の黒失が発動した。

 魔力を伴う攻撃を黒の十字架10個を対価にすることで無効化するオリジナルスキルであるためデミワイバーン・ドクトゥスとの戦闘では発動する可能性が低いと思っていたのだが予想が外れた。

 まあ、発動しても黒の十字架は対象に掛かっているデバフの効果を上昇させるだけなので気にすることではない。それよりも重要なのは黒失が発動した瞬間いつも通り魔力を扱えるようになったことだ。それでも徐々に扱いづらくなっているから時間的余裕は無さそうだが。


 樹王に魔力を込めて刀身を僅かに伸ばす。既に間合いにはヤツが入っている。ヤツと交差するよりも速く樹王を振るった。手に伝わるのは岩に立ち向かった時のような痺れる痛み。それでも込める力を緩めることはしない。


「おっらぁあああ!!」


 気合と共に樹王はヤツの片翼を半ばから切り落とした。同時に物理法則に従い私は反作用により体勢を崩しながら反転、ヤツの胴体付近から顔の近くまで飛ばされる。


「ピュ、ピュテェェエエァアア!」


 デミワイバーン・ドクトゥスの口から痛みに耐えられず絶叫が零れる。咆哮だけでダメージを喰らいそうだ、そんなことを考えつつ追撃を加えようと樹王を送還して腰の傍に手を当てる。

 同時にヤツの反撃が来る。胴体によって死角になった場所から縫うように迫るのは尻尾。その先端はレイピアのように鋭く、武装した冒険者を貫く程の威力を秘めている。しかし、その攻撃は私には効かない。回数制限があるとはいえあらゆる攻撃を無効化する万象夢幻があるからだ。


 胴目掛けて伸ばされた尻尾は私に触れると同時に攻撃を無効化される。この結果は分かり切っていたので私は次の行動に移っていた。

 メタモルフォーゼによる召喚によって右手に収まった導魔を振り抜く。落下を続ける私と片翼を落とされても未だその場に留まるデミワイバーン・ドクトゥスでは次第に彼我の距離が離れていく。

 それでも導魔は私の魔力を貰い受けその刀身を伸ばし、ヤツの身体に届く。果たしてその結果は...不発。運悪くヤツの魔術を無効化する能力が復活してしまい導魔から伸びる魔刃がかき消されてしまったのだった。


 ここから攻撃を続けられる手札を持ち合わせていない私は重力に身を任せることになる。幸いなことにヤツは私からの反撃を警戒してか攻撃を仕掛けてくる気配を見せない。一旦は仕切り直しになるが先の攻防は私側に軍配が上がったな。


「シールド」


 時を見計らい足場を生み出す。シールドへの着地と同時に落下ダメージを喰らいHPが減るが減少量は問題ないと判断して下で待機している天命の下に降り立つ。


「後一発当てられれば落とせるって感じか?」

「翼が半分無いのに飛べるのは驚きだがそうだな。残り2分ちょいか」

「まだそんなんなのかよ。火と水系統でのサポートは出来ねぇぞ」

「となると適当にヘイトを買いながら龍角待ちが無難か」

「そうなるなってありゃあ、春ハルの仕業か」


 龍角が来るまでは天命とヘイトを集めることにしたのと同時に戦場に展開されていた20を超える魔術陣から土の柱が立ち上がった。近くに出現したそれに触れると岩のように頑丈で強度は申し分ないことが窺えた。


「彼女に頼んで足場を用意してもらった。お前がやってたことを参考にさせてもらったぞ」

「この柱を上手く使えば上にいるアイツにも楽に近づけるわな」

「ただ、ヤツが柱に近づけば消されるだろうから注意しとけ」

「風は使えるから問題ねぇよ。お前こそ死なねぇようにしろよ? あ、バフの上昇効果も切れてっからそれも頼むわ」

「任せとけ。遅れて向かう」

「了解。先行っとくわ」


 第二ラウンド突入だ。天命は先に向かったが私は白黒を発動させてから向かうことにする。水蒸気爆発の余波で一回、デミワイバーン・ドクトゥスの魔術無効化を弾いて一回、それと尻尾の攻撃で一回。残っているのは黒の十字架10個と白の十字架1個だけだ。

 時間的に春ハルさんたちに掛けたバフは解除されているが時間が惜しい。彼女らのバフはかけ直し無しで行こう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ