資格を持つ者
「近場にいるPKがどこのクランの者かは一度置いておくとしてPKの力量について話しを戻す。先ほども言ったが共通認識としているPKを除きそれ以外のPKたちは少なくとも数人はオリジナルスキルを二つ以上、つまりLV50を超えている。その者たちをリーダー格としてそれに付き従うやつらのレベル帯までは分からんが私が対峙した連中は殆どがそれなりに動ける連中だった」
「そうなるとPKへの警戒を強めた方がいいですかね?」
「手持ちの情報だけでは何とも言えませんね。様子見といきたいところですが時間的猶予も無い事ですし...対人が得意な方に警戒を任せるのが無難でしょう」
「無論、我も参加しよう」
アーサーの見解に教授が反応すると続けざまにとんとん拍子で話が進み始めたので咳ばらいをして注目を戻す。まだ重要な話が終わっていないのだ。勝手に話が進んでもらっては困る。
「今のは単に集団戦力のPKどもの話だ。個人戦力となる闇子や久遠の情報を知らなければ痛手を負うぞ。それに久遠に関して意見を求めたいこともある」
「申し訳ありません、ゼロさん。つい話が乗ってしまいました。この場を開いた者として謝罪します」
「謝られる程のことではありませんが。さて、私は魔の森の深部でPKたちの拠点を探す途中闇子と久遠に遭遇した。その時は他にもPKたちが大勢おり、オーガの変異種と戦闘をしていたため不意を突く形で乱入したのだが取り巻きを倒すころには久遠たちも魔物を倒しており、最終的には2対1の形で戦闘になった」
ここで一拍間を置き、話を続ける。
「その時得た情報を共有しておきたい。まずは闇子から。闇子はβの時と同じく神官系で闇魔術を主とするデバファーの立ち回りをしていた。レベルは最低で50はあるとして私の見立てでは75前後だと思われる。ステータス傾向はINTとMNDに重きを置いているだろう」
「典型的な神官ってことだな。それに二次職だとしたら邪神官か。どうせ後方からちまちまデバフを飛ばしてくるだけだろうし気にしなくても大丈夫そうか?」
「そうとも限らんぞ? 後方支援系は先に潰しておかんと痛手を喰らう」
「龍角の言う通りだが闇子の場合は慎重を期さなければいけない。何故なら闇子のオリジナルスキルはデバフを5つ対象に掛けることで効果を上昇させるものと自身が死んだときに殺した対象を道連れにするものだからだ」
それはまた面倒だ、とここに集まった者たちが溜息を吐き出した。
「そうなると容易に攻撃を仕掛けることもできませんね。最善手は闇討ちでしょうか? しかし、それでも魔物の群れの中を通ってPK本陣に乗り込める腕前の者を差し向けるのは余りにももったいない」
「と言うことだ。闇子については少し作戦を練る必要がある。しかし、問題はそこではない。一番の問題は久遠だ」
「久遠が強いのは分かっているがそこまで危惧する程か?」
「我も久遠とは何度か対峙したことがあるがこれだけの上位プレイヤーがいるなら心配することは無いと思うが」
「βのままならそうだな。しかし、今の久遠はかなり強いぞ。その理由の一つとしてヤツのオリジナルスキルが挙げられる。ヤツのスキルは刀を生み出すものと追撃を行うものだ。刀を生み出すオリジナルスキルはさらに追加効果があるのは確定だろう。私相手にはその効果が使われることが無かったが条件は久遠とのレベル差だと思われる」
ここにいる者たちは久遠のオリジナルスキルを聞いてそこまで逼迫した様子を見せることは無かった。どちらかと言えば闇子のオリジナルスキルの方が面倒だと言った感じだろうか。しかし、単純だからこそオリジナルスキルは恐ろしいものだ。
「そして、オリジナルスキル以上に危険視しなければいけないことがある。これは教授にも既に伝えているがどうやらPKたちは悪魔と手を組んでいるようだ」
「悪魔と言うと七大罪か?」
「そこまでは分からんがその可能性は高い。と言うのも久遠が悪魔と契約したのか強力な武器を持っていた」
「それは...」
「なんで武器を持っていただけで悪魔と関連があるって言えるんだ?」
アーサーは何か思い当たる節があるのか考え込み、天明は単純な疑問を口にした。
「その剣を出した時、久遠が闇子にこう言った。『オリジナルスキルの契約でもより上位者の契約なら無効化できるようだぞ』と。ここで出る上位の契約者は悪魔である可能性が高いだろ?」
「まあ、そういうことなら悪魔の可能性はあるかもしれんな。だがなんで久遠個人と悪魔が契約するんだ? そこが腑に落ちん」
「それについては一つの仮説があります」
満を持して教授が立ち上がる。ラトリム村で悪魔について報告してから独自に情報を集めたようだ。
「最も可能性が高いのは悪魔が2体以上いることです。一体はスタンピードを起こした悪魔。もう一体は久遠さんと契約した悪魔です」
「そうだとしたら相当ヤバそうだがスタンピードを起こしたヤツと久遠と契約したヤツが同一悪魔?の可能性だってあるだろ?」
「私は教授の仮説を指示します。多分ですがスタンピードを起こしたのは悪魔でも下位の存在で久遠さんと契約したのは上位の悪魔でしょう?」
「何故それが言えるのか理由が欲しいな」
「聞いた話ですが低位の悪魔はより上位の悪魔になるために膨大な量の経験値を欲するようです。対して上位の悪魔は目立つ行動を避けるみたいですよ。それに久遠さんが使った武器は神器でしょう」
『これと同じように』そう言いながらアーサーは空間の裂け目から現出した柄を手に取った。
書き溜め10話分が無くなるまでは毎日投稿かな




