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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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戦場の蜘蛛

 隙を突かれ矢がモニカさんに向かって飛ぶ。飛来する矢はどうにかシールドで防ぐことに成功するがアーツによる攻撃は予想以上に強力でシールドが砕けてしまった。


「シールド」


 タンクから一度距離を取ってシールドをモニカさんの下に展開し、再度攻勢に出る。これはタンクがその場から動くことが出来ないおかげで出来る芸当だがこのままでは埒が明かない。それどころか時間の経過は私を不利にする。


 タンクが体を隠せるほどの巨大な盾で身を隠し守りの姿勢を見せるが私は愚直に震撃を放つ。すると僅かな時間を置いて衝撃がヤツの身体を駆け抜ける。しかし、蹈鞴を踏むことすらない。

 私も白黒により強化を得ているはずだがそれと同様にヤツもオリジナルスキルによって防御力強化を得ているのではないだろうか。それに看破が碌に機能してくれないおかげでヤツの正確なHPを知ることが出来ないのが辛いな。


 さらに距離を詰めて盾を掻い潜り掌底を撃ち込む。ゼロ距離からの攻撃は流石に効いたようでヤツは一歩だけ後退した。だが、たった一歩ではヤツのオリジナルスキルを解除できないらしい。

 ならばと攻撃の手を休めることなく連撃を叩き込む。右手による掌底から続き左手の掌底、回転蹴り、さらには踵落としへと派生を続ける。それでもタンクは全て耐え、大して動くことは無かった。


 そこに一条の矢が迫る。隙を見計らって放たれた矢だが私が警戒しないはずもなく容易に避けることが出来た。チラリと横目で弓使いを見るとかなり離れた位置で私とモニカさんを狙っている。

 これでは遠距離攻撃手段を持たない私は処理することが出来ない。それも奴らの作戦なのだろう。あの弓使いがいる位置まで私が移動すればタンクのオリジナルスキルが発動してしまい、しかしタンクを集中的に狙おうにも弓使いからの邪魔が入る。

 加えて言えば早くタンクを倒さなければ増援が来て数の暴力の前に為す術もなく狩られてしまう。やはり白黒を使ってゴリ押すのが無難か。


「【刻々と刻まれる時 朱き陽は沈みて蒼き陰が姿を見せる 漆黒が世界を飲み込もうと星の輝きが世界を照らす 不浄を嘆き純白に笑う 強きを砕き弱きに祝福し対極は終ぞ絡み合う〈連続詠唱 八種白黒〉】」


 連続詠唱を始めると同時に弓使いが猛烈な勢いで攻撃を開始した。高速で飛来する矢に増殖する矢、どれか一つでも喰らえば白黒が解除されることになってしまうが片手に持った槍で次々と捌いていく。

 そして詠唱の完了と同時に8つの魔術が行使される。光属性魔術はバフ、闇属性魔術はデバフを発動した。ついでに白黒により白と黒の十字架も召喚される。これでヤツとのパラメータ差は逆転した。


「チッ。強化系の能力か」


 縮地で近づき攻撃を加えれば先ほどよりも苦い顔を見せた。それでも効果的な一撃にはなっていないのだから相手の防衛力は相当なものだ。ただこのまま白黒を伸ばせば確実に押し切れる。


 タンクのスキル構成は防御振りだと考えて良さそうだ。稀に剣術などのスキルを持った攻防一体型のビルドがあるがそうでないのなら白黒が解除される可能性は低い。唯一気にするべきは弓使いからの攻撃だが距離が離れているおかげで攻撃を見てから避けることが出来る。


「まだ強くなんのかよ!」


 PKとの攻防を続けていくうちにも白黒の強化は続き遂にタンクに押し勝ち始めた。相手も時間稼ぎに徹底するようでHP回復ポーションをこまめに使いながら耐久戦を仕掛けて来る。それでも白黒の上限には達していないのだからこのまま行けば勝てる。そう、このまま行けば。


「タイムリミットだ! ここで死ね!」


 遠方から火球が飛んで来る。次いで矢に多種の魔術。避けることは出来るが完全に攻め時を失った。


「ったく、危なかったぜ。ナメてるつもりは無かったが流石トッププレイヤー。たった一分でここまで追い込まれるとは思わなかった」

「まだ終わっていないぞ」

「この状況から勝てるのか? 精々足掻け、クソ神官!」


 タンクには威勢よく答えたもののここから逆転するのは無理だ。だからと言って諦めたわけではない!


 攻之術理 降龍


 樹王に持ち替え最上段からの袈裟斬りを放つ。タンクもまともに攻撃を喰らえば不味いと分かっているため盾を掲げた。


 ヤツの盾と樹王がぶつかり火花を散らしながら拮抗状態となる。


「はぁあああ!」

「おらぁぁぁぁ!」


 拮抗状態を崩すためさらに力を加える。そして遂に均衡が崩れた。タンクが膝をつき、盾も半壊している。好機は今しかない。


「死んで後悔しな」


 私を見上げてタンクがそう言い放った。闇子と似たようなオリジナルスキルかと警戒するがそうではないと気配察知のスキルが警告を促す。この機会(チャンス)を待っていたのは何も私だけではない。


 輝く一条の矢が戦場を駆け抜け今にもクメロさんの馬を、モニカさんを射抜こうとしている。青の輝きではないためアーツではないとして考えられるのはオリジナルスキル。

 守りがシールドとリフレクトしかないため破られる可能性は極めて高い。最悪の場合モニカさんは死ぬ。どうするべきか。刹那の思考の末、タンクに突き出す樹王を止めることをしなかった。


 コイツをやらない限りこの場から逃げることは出来ず、何より今からではモニカさんの所まで間に合う訳がない。最善の選択だ。もしかするとモニカさんは死んでタンクのオリジナルスキルから解放された私だけが生き残るかもしれない。それでも最良の選択だ。


 弓使いの矢がモニカさんを穿とうとしてバラバラになった。戦場に響く絶叫。目の前のタンクが光となって消えていく。私にも僅かながらダメージが入った。


 何時の間にか空間に蜘蛛の巣のような無数の痕が張り巡らされていた。


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