表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
324/378

ラトリム村防衛戦 その2

 戦闘、戦闘と連戦続きだったが幾ら戦っても飽きるもんじゃない。ただし、今は観戦モードだ。あれから30分ほど経過しているが私の出番はない。と言ってもMPが許す限りはバフを撒いているので支援はしている。

 村にあるMP回復ポーションを貰ったのでこれがあれば多少は無理をしても問題ないだろう。それにどうやらこのMP回復ポーションはリアさんが作る物よりも性能が良いようで回復量が多い。


「今だ、放て。槍隊はもっと引き付けてから攻撃だ」


 リリーカースさんの声が響き、弓を持った村人たちが一斉に矢を放った。放物線を描くことで近づいてきている魔物に当たり、傷を与えることに成功している。運が悪い奴は脳天に矢が刺さり息絶えた。


 簡易的に立てられた柵の向こう側からゴブリンが攻めてくる。5体程度の群れだが一息つく頃にはまた新しい群れが来るので徐々に村人たちの疲労も溜まってきている。魔物たちはまだまだいるようでこの防衛が終わるのは先になるに違いない。

 それに今はゴブリンだがこれがオークやオーガと言った魔物になれば村人たちの腕では傷を付けることは出来ても倒しきることが出来るとは思えない。そうすれば銀翼や私の出番になる。


「これで終わることはありませんよね」

「ゴブリンは魔の森でも一番浅い場所にいる魔物だからね。王都にスタンピードが起ころうとしているなら中層以降の魔物が来ても可笑しくは無いかな。それでも普通はこう言った村を狙って来ることは無いんだけどね」


 ユーリウスさんに問えば予想通りの答えが返って来る。書面でしかスタンピードを知らない私では深いことは言えないが魔泉の決壊によって起こるスタンピードは大量の魔物を生み出すそうなのでこれで終わるとは考えない方が良いだろう。

 まして今回のスタンピードにはプレイヤーや悪魔が関与しているそうなので過去に起こったスタンピードとは訳が違うかもしれない。


「ジーダ! 誰かジーダを運んでくれ。ルースタはジーダの穴を埋めろ」

「は、はい、隊長!」

「ゴブリンが抜けたぞ!? 倒してくれ!!」

「クソ、慌てるな! 俺たちは目の前に集中だ。槍隊がやってくれる」


 そんなことを考えていると私のところに一人の男が運ばれてきた。状態を見れば腕に青あざが出来ている。槍を持ち前線で戦っていたためゴブリンの攻撃を受けたようだ。


「大丈夫ですか? 今からヒールを掛けます」

「すまねぇな、神官の兄ちゃん」


 今の装備は近接戦用から支援用に変更しているので法衣だ。手には二つの聖書と魔書も持っているので支援体制は万全と言える。


「ハイヒール。これで大丈夫ですか?」

「おお、痛くねぇ。助かったぜ、これでまた戦える」


 治療を施された男はまた前線へと戻って行った。私の光属性魔術の効力はどうやら住民に対しては低いようでヒールではただの打撲すら治癒することが出来ない。プレイヤーで考えるなら打撲程度のダメージはヒール一発で全快させることも可能なはずなのにだ。

 もしかするとプレイヤーと住民ではアーツの内部処理が違うのかもしれない。それはそうとしてゲームとは思えない臨場感があった。今はまだ打撲や擦り傷が主だがそれでも現実と遜色ない傷のつき方は戦場であることを深く印象付けられる。


 これが四肢の損失程のダメージを負えば果たして私は直すことが出来るのだろうか。そして死人が出た時、私のリザレクトで蘇生することは出来るのだろうか。プレイヤーに対しても確率で効果を発揮するリザレクトは住民に対して効力を発揮しなくても不思議ではない。


 そう思うと私にこの村の命が掛かっていると重く背にのしかかる。


「ゼロさん、表情が硬いよ。本当の戦場はもっと酷い。他人の命なんか気にしている暇は無いからね。まあ、戦争なんてここ数百年起きてないんだけどさ」

「分かっていたつもりなんですけどね。いざ当事者になると心が付いて行かないようで」

「僕たちは出来ることやるだけだよ。全部を守ろうとすると目の前の者すら守れなくなるからね」

「...そうですね」


 これ以上考えるのは無駄だ。私が出来ることをやる。それでも救えない命が出るかもしれない。


「ユーリウス殿、オーガの相手を頼みますぞ!」

「了解です。ジェシカは僕と一緒に前線へ、他の皆は後方支援」

「少ないですがこれを。ゴブリンたちが減ったら私も出ます」


 魔の森がある方向から人型の魔物が近づいてくるのが見える。遂にゴブリンだけでなくオーガも現れた。数は2体しかいないのでユーリウスさんたちに任せておけばいいだろう。しかし時間が経てばゴブリンの数が減り、オーガの数がさらに増すことになる。


 多様なバフを飛ばしてユーリウスさんたちを見送りながら負傷者の手当てを済ましていく。ゴブリンでも負傷者が絶えないのだ。これがオーガに相手が置き換わったら相当な被害が出るに違いない。


 その時が勝負時になる。村人では手も足も出ないと分かっているのなら私も前線に立って迅速にオーガを倒し切ることが最も被害を押さえる道筋だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ