表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
303/378

深部へ

 ギルドからの報告は想定内のものであったと同時に予想の斜め上を行くものとなった。

 その内容とはつまり、スタンピードが発生したと言うものだ。しかし、王都で指名依頼を受けた冒険者が齎した報告ではなく、これは森林の街と始まりの街から届いた情報だ。


「僕たちはまだ調査を続けた方がいいかい?」

『ギルドとしての決断は即時撤退です。ギルド長は依頼を達成とみなし、王都に帰還するよう指示を出しました』

「分かった。じゃあ、僕たちも王都に戻るとしようか」

「それが良いと思います。二つの街でスタンピードが起きたのなら王都にもスタンピードが来る可能性が高いですからね。私はもっと奥まで調査しますので続きは任せてください」


 ギルドを交えて今後の行動を話し合い、私は調査を続けるために深部の調査を進めることになり、ユーリウスさんたちは王都に帰還することになった。その際、彼らはラトリム村でモニカさんを拾う流れとなる。


 村人たちの避難は今頃殆ど完了しており、村に残っているのは戦う覚悟を決めた者たちだけだ。

 スタンピードは村を積極的に狙わないと聞くが多少の戦闘はあるに違いない。

 そうなればモニカさんが素直にユーリウスさんの指示に従うのか。

 昨日話した程度の仲であるが彼女の性格からしてラトリム村を見捨てることなど出来なさそうだ。それは村での思い出を楽しそうに話していた彼女を見れば分かると言うもの。まあ、ユーリウスさんはそれについても百も承知のことだろう。


「ゼロさん、気をつけてください。この先には何かありそうです。私の知覚範囲に先ほど10程人の姿がありました。しかし、それは私に見つかったと分かると否やすぐさま逃げています。指名依頼を受けた冒険者である可能性も拭えませんがここで落ち合うことはまずありえません」


 沈黙を守っていたデヴィッドさんが唐突に口を開いた。それはギルドにも聞こえているようで説明を要求されるが彼は感じ取った気配について述べていく。

 少なくとも10人が魔の森にいる。しかも私たちを見て直ぐさま逃げた。もしかすると魔物かもしれないが人の可能性が高い。また、冒険者である確率は低い。デヴィッドさんから齎された情報はこれだけだ。しかし、なんとなくだがその正体に私は気づいた。


「それは、訪問者かもしれませんね」

「訪問者かい? 僕たち以外にも依頼を受けているってことかな」

『それはありえません。ギルドが魔の森に入れる依頼を出したのはゼロ様だけです』


 ギルドから正式に魔の森に入れる訪問者は私しかいないと断言される。ならば尚更プレイヤーである可能性が高い。


「訪問者と言ってもやつらは同族殺しを行う連中です。身を隠すためにこの森に居るのでしょう。それに今回の件に関与している可能性が高いです」

「それならゼロさんも帰還した方が良さそうだね」

「いや、私はこのまま調査を進めます。例え死んでも復活できるのに情報を得られる機会をむざむざ放棄する訳にはいきませんから」

「だったら僕も付いて行った方がいいかい?」

「それはやめた方がいいと思いますよ。奴らの中には訪問者以外も平気で殺すような者たちがいますから。ユーリウスさんたちはモニカさんを連れて王都に戻ってください」

『ギルドとしても銀翼に帰還命令を出します。ゼロ様に関しては依頼を続行、可能であれば訪問者の情報を入手するようにしてください』


 ギルドからの最終通達を受けてユーリウスさんたちとはここで分かれることになった。

 ここは魔の森の深部に近い中腹であることを考えれば彼らが王都につくのは早くても夕方になるだろう。

 始まりの街、森林の街でスタンピードが起き、イベントが本格的に始まったと言うことは次期に王都にも魔物が集まって来る。それまでにユーリウスさんたちが間に合えば良いのだが少し厳しいか。まあ、どちらにせよ彼らとは王都で落ち合うことになる。


「さて、赤の雨かヘルタースケルターか。どっちにしろ、碌な連中ではないのは確定か」


 デヴィッドさんから教えて貰った方角に向かって足を進める。

 今の今までPKには遭遇していない。勿論、掲示板でもPKされたプレイヤーは数えることが出来る程度に少なかった。

 βではあれだけ活発に起こったPKが製品版になって鳴りを潜めるのは不可解だ。それに一週間ほど前に一刀がPKから得た情報も、今考えればスタンピードのことだったのかもしれない。


「流石に考えすぎか。幾らPK共が手を組もうが簡単にスタンピードを起こすことは出来ないだろうし、このイベントとは無関係化かもな。オリジナルスキルを使えば可能かもしれないがイベントに干渉できるとも思えない。......まあいい、奴らに直接聞けば分かることだ」


 デヴィッドさんに見つかったPKは今頃、拠点に戻り、先のことを告げているだろう。そうすれば集団を率いてこちらに戻って来る可能性が高い。集団でかかれば数人の冒険者の口を封じるのは簡単なことだ。相手が住民ならさらに有利になる。

 だが、奴らの情報は既にギルドに届いており、ユーリウスさんたちも魔の森を下っているのでこの場所に戻って来ても私しかいない。向こうにどれだけのプレイヤーが居るかは不明だが大多数のPKが居ることを考えれば100を超えるかもしれない。


 まあ、何人来ようがユーリウスさんたちの下には向かわせない。

 久しぶりにプレイヤーと本気で戦うことが出来る。手札が全く分からない集団を相手にするのは愚かだが死んでも問題ないと分かっているからか腕が鳴る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ