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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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ギルドからの連絡

「左に20、右は6、前方に13ですね。どうしますか、ユーリウス?」

「少し進路がズレるけど右に寄ろうか」

「戦闘ならアタシに任しときな」

「相手はオーガだ。カイルは後方の警戒を続けてくれ」


 魔の森は至って平常だ。

 この状態が平常と言えるか微妙だが何度もこの森に来ているユーリウスさんたちが変わらないと言うのだから異常は起きていないのだろう。


 森の外輪に建てられた砦から魔の森に入って既に2時間は経過している。

 森に入って直ぐは騎士団が魔物を常日頃から討伐していることもあってか殆ど魔物の姿を見ることが無かった。そのおかげもあり、中腹付近までは移動時間を短縮することが出来た。

 しかし、中腹に入って早々に魔物の出現頻度が増した。

 これは魔の森の中でも魔物によって住み分けがされているからだとユーリウスさんは言う。特に今いる場所では亜人系の魔物が多いが奴らは下位種ならば群れで行動するため戦闘を割けるように進めば調査に支障はきたさない。


 これが獣系の魔物であれば、群れを組むものもいれば、個で彷徨する魔物もいるようで隠れての調査が難しくなってしまう。ちなみにこの場所を私たちが調査することになったのはウォルターさんの采配による。

 デヴィッドさんが集団に対して対抗力が高いこともそうだが一番は人型の方が、私が戦闘しやすいだろうとの配慮だ。

 正しくその通りでオーガなどは大きさこそ人を上回るが体格で言えば獣や虫に比べて圧倒的に人に寄っているので戦いやすい。


「接敵しますよ。10、9、8ーー」

「ジョンは周囲の確認。接敵があれば報告してくれ。ジェシカ、行くよ!」

「了解だよ。アタシに合わせな」


 速足で森の中を駆け、ユーリウスさんとジェシカさんがオーガの前に躍り出る。

 オーガは個体によるが平均的に見ても背丈が3メートルを超える巨大な体躯を持っている。鍛えられた身体は筋肉の鎧を形作り、生半可な武器では傷を付けるのも一苦労に違いない。

 しかし、二人の前では肉体の鎧など無意味だった。もしかすると金属の鎧を纏っていても結果は同じだったのかもしれない。


 ユーリウスさんの剣捌きは美しく、軌跡を描く魔力の糸は幻想的にオーガに絡みつき、細切れにする。

 逆にジェシカさんの剣捌きは荒々しい。だが、その一撃一撃が必殺の威力を秘めており、オーガは一太刀の下に沈んでいく。


 これが現役Aランクの冒険者なのか。

 全く私に役目が回ってこない。そればかりか本職である神官としても出番がない。

 日々戦いに身を投じる者たちはプレイヤーとは違い、戦う姿も無駄がない。特にユーリウスさんは完全武装と言うこともあり、昇格試験で相対した時よりも攻撃が激しい。


 6体いたオーガは僅か30秒にも満たない速さで全てが光の粒子となって消える。


「相手にならないね。もっと奥に進むかい?」

「それが良いかもしれないね。今のところ異変は見れないし、少し深部に探りを入れてみようか。デヴィッド、様子はどうだい?」

「感知できる範囲内に問題は無いですね。10体以上の群れを組んでいるところが多いが許容範囲内でしょう」

「後方も問題ないですぜ。退路の確保は万全でっさ!」

「魔道具の方にも反応はないぞ。魔素濃度は正常だ」


 流石は上位クラン。私が口を挟む間もなくあっという間に次の行動が決まっていく。

 私が彼らの作戦に首を突っ込むことは無いが道中を共にした中なので出来れば何ごともなく依頼を達成して欲しいものだ。


 話を聞いている限り、深部に近づくようなので戦闘になれば次からは私も加わるとしよう。

 このまま深部に進んでも出現する魔物は亜人系であるようだがそのランクは上がることはあっても下がることはあり得ないので戦力は多くて困ることは無い。


「調査を再開するよ。陣形は変えず、魔物の調査を最優先」


 再び、魔の森を進みだす。

 森が深いこの場所では最初のように陽の光が殆ど入らない。なのでデヴィッドさんたちが持つ光を灯す道具だけが進むべき道を指し示すが樹々が乱雑に生えているため死角が多く出来てしまっている。

 今は彼らの指示の下動いているので魔物と出くわすことは無いがソロで深部に潜る時には魔物の奇襲を常に警戒しておかなければいけないな。




「止まってください。これは、どう言うことだ?」


 調査も幾分か進み、もう少しで深部に到達しようとした時、デヴィッドさんがその場に立ち尽くした。


「何か異変でもあったかい?」


 不審に思ったユーリウスさんが話しかけるがデヴィッドさんは立ったまま動き出すことはない。

 何か見つけたのだろうか。

 詳しくは知らないがデヴィッドさんは情報収集に特化したユニークスキルを持っていると彼から聞いている。だが、何かを見つけたにしては様子が可笑しい。スタンピードの予兆を見つけたのなら直ぐに情報を共有するはずであるし、それ以外の何かなのだろうか。


「ギルドからだね」

「そのようですね。今、連絡が来るってことは緊急事態でしょう」


 デヴィッドさんが思考の海から帰って来るより先にギルドより貸し与えられた通信用の魔道具が起動した。

 通信魔道具を使った連絡は魔の森に入っても定期的に行ってきた。しかし、それは私たちからギルドに繋げるのであって、ギルドから連絡が来ることは無い。

 だが、今それがあった。つまり、考えられる理由は一つだけだ。


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