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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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モニカ

 今日明日と世話になるラトリム村までの道のりは馬車で2時間ほどだ。ただし、魔物との戦闘が無ければの話である。

 単騎で駆け抜けるならいざ知れず、馬車は大きな的になる。特に王都近郊を生息エリアとする鳥系の魔物に狙われると厄介だ。そのため定期馬車にも護衛の魔術士や弓士がいる。だが私たちにはデヴィッドさんしか弓士はおらず、本職の魔術士もいないためフォールホークやキラーイーグルに対処できない。そのためやつらの縄張りを抜けるまでは徒歩で進むことになった。


 しかし、フォールホークたちもバカではないようで数の不利を悟ると私たちを避けていくため結局戦闘になったのは5回ほどだった。それもデヴィッドさんとジェシカさんが一瞬の内に蹴散らしてしまったので私の出番は皆無だ。

 まあ、私にはデヴィッドさんのように弓や攻撃魔術を使うことは出来ないし、ジェシカさんのように斬撃を飛ばすことも出来ないので参戦しても大して役に立つこと無かっただろう。


 その代わり、彼らの戦闘を見ることで技を盗むことが出来た。それがジェシカさんが放った飛ぶ斬撃だ。私がどうにか形にできないかと試行錯誤している攻之術理、三日月、その完成形を彼女は容易に使っている。

 私と違い、飛距離による威力の減衰も殆ど起こっておらず、目を見張る威力だ。たった一撃、それだけでキラーイーグルの片翼は斬り跳ばされ飛行能力を失って落下する。


 最初にこの技を見た時、アーツではないのかと思った。しかし、ジェシカさんの動きを見る限り、リキャストタイムなど存在しないようで飛ぶ斬撃を連続で放っていた。それに住民がアーツを使うのかも怪しい。

 なので直接聞いてみることにしたのだが詳しくは教えて貰うことはできなかった。その代わりと言っては何だが飛ぶ斬撃は剛一断流の奥義に通ずる技であると教えられた。


 何かわけがあり、教えることが出来ないのなら無理に聞くことないのでとにかく彼女の一挙一動を見逃さないように見張る。するとジェシカさんが斬撃を飛ばす度、彼女に纏わりついていた魔力と赤色のオーラが同時に減少していた。

 やはり、三日月を威力減少無しで飛ばすには属性魔力を込める必要があるわけだ。それが分かっただけでも大きな収穫となる。ただ私は純粋な属性魔力を扱えないので今直ぐに使える技ではないのだがな。


「そろそろ休憩を挟もうか。カイルは後方に合図をお願い」

「了解っす、マスター」

「私は回復力促進の魔術を掛けます」

「では、私もモニカさんに習ってバフを撒いておきますか」


 ラトリム村までの距離が半分を下回った辺りで一度休憩を挟むことになった。

 これは私たちの休息と言うより、馬車を引いている馬を休憩させることがメインだ。

 銀翼が保有する馬車馬である計4体の馬はバトルホースではないがそれに引けを取らない程体躯が良く、馬力も持久力もある。しかし、馬車を引くため単騎で駆けるのに比べ、何時間も高スピードを維持することが出来ない。


 モニカさんが詠唱を終えると魔術陣から光が零れ、それが馬に降り掛かる。すると、光は吸収されるように消え、汗ばんでいた身体から徐々に熱を冷ましていく。私も効果があるか不明だがリジェネーションやVIT、AGI上昇系のバフを掛ける。


「モニカさんは教会所属と言っていましたが何故銀翼に?」


 ユーリウスさんから休憩は15分だと伝えられ、暇になった時間をモニカさんに質問することで潰す。


「実は銀翼には仮所属と言う形なんです。本職は神官なので滅多にこう言った遠征には出向かないんですが今回はスタンピードの調査だって聞いて。実は今向かっているラトリム村に数年前までは派遣神官として勤めていたんです。だから、少しでも力になれればいいなって」


 そうだったのか。何故神官のモニカさんがパーティに居るのか疑問だったのだがこれで解決した。

 この依頼ではユーリウスさんたちは戦闘は二の次で魔物の調査が第一優先事項だ。

 もし戦闘が起こっても良いようにユーリウスさんとジェシカさんがいるのだろうが戦力的に弱いモニカさんを連れていくのはハイリスクとなる。

 戦力から考えるにモニカさんはラトリム村で待機することになるだろう。


「私は訪問者なので今のところ五大都市にしか寄っていませんがラトリム村ってどんなところなんですか?」

「長閑な場所ですよ。空気も澄んでいるし、村の皆さんも優しいです。他の村と比べて少し魔物の出現頻度は高いですけど近くに騎士団の砦があるので強力な魔物には出会うこともありません」

「そうなんですね。それで村ではどのようなことをしていたんですか?」

「主な仕事は体調不良者が出ればその方の診断をして状態によっては魔術で治療します。他には教会のお掃除をしたり、神父様と一緒に八神様に祈りを捧げたりです。それと神官の仕事と言う訳ではないですが子供たちの遊び相手とかも」


 神官と言ってもやることは案外普通だ。想像通りの神官で少し安心する。全員が師匠のような思考を持っているわけではないようだ。あれば師匠はきっと戦闘部隊に所属しているに違いない。


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