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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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試し斬り その2

 木刀が振り下ろされ、案山子にぶつかる。それは鈍い音が鳴らして鎧に大きな凹みを作った。


「魔力による硬度上昇だね。込めるMPによるけど鋼に勝るほど上がるよ」

「金属を叩いて折れない時点で優秀であることに間違いはないな」


 樹王は元が木刀であるため魔力を刃のように展開させなければ斬撃属性は乗らない。

 その代わり、MPを込めることで硬度が高まり、見ての通り鉄の塊を叩いても折れることなく、逆に鉄を凹ませることすらできる。


 それにしても不思議だ。私が持っている樹王は木刀であるため素材は勿論木材だが案山子を叩いた感触はリアルで木刀を使っている時と変わらない。

 何も可笑しなことではないかもしれないがアルは魔含の硬木と魔金銀合金が融合したと言っていた。

 一体金属としての特性は何処へ消えてしまったのか。手に伝わる重さからしかその存在を確認することが出来ない。


「待たせた。コイツの調整をしてたら遅くなってしまったわい」


 再度、樹王の握り心地を確かめていると部屋にドガンさんが入って来た。

 遅いと思ったら何かを探していたようだ。そして、その何かは剣であったらしい。持ち手を合わせればアル程はありそうな巨大な大剣だ。

 こんなに使いにくそうな大剣を誰が使うのだろうか。一度振ってしまえば硬直は相当なものになるのは明白でひょっとするとアーツによる硬直よりも酷いかもしれない。


「こいつはレオから頼まれた品だが試し斬りついでに樹王の特性を見ておけ」


 レオだったよ。もう一度言っておこうか。レオだったよ。

 あいつはリアルでは常識人なのだがゲーム内だと頭のネジが大分緩くなる。むしろ外れているのではないだろうか。

 何故こんな武器を依頼したのか甚だ疑問だが楽しみ方は人それぞれ。口出しすることではない。だがレオにこれが扱い切れるのか? まあ、この剣に遊ばれているようなら指を指して笑ってやろうじゃないか。


「一旦魔力を解除して構えてみろ」

「これで良いですか?」

「問題ない。そんじゃぁ、行くぞ」


 ドガンさんの指示に従い、樹王に込めていた魔力を霧消させ中段で構える。

 硬魔と同様で樹王は魔力を込めていないと耐久性は木刀より硬い程度らしい。そのため、ドガンさんが持っている大剣を受ければ抵抗なく両断されてしまう。

 武器を無為に破壊するのは憚られるがコイツの特性を理解するためだ、仕方ない。


 樹王に対して垂直になるように大剣を構えたドガンさんは少し重たそうに上段の位置まで持ち上げた。

 それから何の合図も無しに剣が振り下ろされる。

 見た限りドガンさんは力を入れておらず、重力の力だけで大剣は振られるが質量とはそれだけで大きな武器となる。

 私の両手に強い荷重が加わり、耐えようと力を入れた瞬間、樹王が断ち切られた。

 後に残るのは大剣が石畳を砕く音と樹王の一部が床に転がる音だけだった。


「切れ味は問題なし。耐久値の減りも許容範囲内。コイツは合格だ」

「あちゃ~、流石に樹王でもMPを消費しないと耐えきれないか~」

「実践では魔力を解いたら使いもんにならないだろうな」


 ドガンさんが大剣への評価を下している間に私たちも樹王の評価を下す。


「MPを込めると...これは凄いな」

「半ばから切り落とされても再生するってなかなか反則級の特殊効果だよね」


 切られた樹王にMPを込めることで瞬く間に刀身が伸び、元の刀身まで戻った。


「特殊効果としては魔力伝導性と硬度上昇の方が使い易いがな」

「ん~、確かにそうかも。でも、耐久値ごと回復するのはお得じゃない?」

「それもそうだな。魔力を纏わせておけばそうそう折れることは無いがあって困るものではない」


 魔力を込めて使う分には問題ないが魔力無しではただの枝であることには変わりはない。ただ、樹王なら例え刀身を折られようと継続戦能力が高いのでそこは高く評価でき、総評としては優秀な武器と言える。


「そう言えば切られた破片は再利用できないのか?」

「私たちもその可能性には気づいていたんだけど、どうやら切り離されるとただの木に変わるみたいだよ。世の中ってそう上手くは行かないよね。でも魔力で刀身が元に戻るわけだから半永久的に木材を採取することは出来るよ」

「暖炉用の薪を作るのに時間を割かれるのは御免だな。それならトレントンを提供しよう」


 樹王が切断されてもその破片が同じ組成を示すなら予備にもう一本ほど作って貰いたかったが無理なら仕方がない。何の変哲もない木で作られた木刀などそれこそただの木刀なので持っていてもしょうがないだろう。


「ゼロ、聖たちはもう終わったわよ」

「私も終わっているので今行きます」


 それから数十分ほどアルやドガンさんと雑談に興じているとミサキさんが部屋に入って来た。どうやら、聖たちも装備の試しは済んだようだ。私の方も防具の性能は実感したのでやり残したことは無い。


 この装備はスタンピード中で活躍することになると昨日は思っていたが早くも明日には活躍の場がある。魔の森。きっと魔物だけでなく、あの集団もいるはずだ。


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